初回記載:2018年1月31日
側弯カーブが今後どれだけ進行する確率があるのか、それはどの程度のものなのか、ということを冷静に「知識」として認識することは、特発性側弯症という病気と向き合う時に、とても大切な要素だと考えられます。 基本的には骨盤のレントゲン写真を用いた「Risser signリッサーサイン」が用いられているわけですが、これにプラスして、2008年のDr Sandersによる研究「Predicting scoliosis progression from skeletal maturity: a simplified classification during adolescence.」を併用することを推奨している先生方もおられます。なぜ併用することを推奨しているのか、という背景には、リッサーサインだけで骨成熟の完了を判断したときに、まだ成長する可能性が残っているのに「終わりました」と判定ミスをすることが、幾つかの文献で報告されているためです。 参照「High Risk of Mismatch Between Sanders and Risser Staging in Adolescent Idiopathic Scoliosis: Are We Guiding Treatment Using the Wrong Classification?」2018年
リッサーサインについてはこちらを参照ください 2007年4月「Risser sign について」
またカテゴリー「カーブが進行するリスク」も参照していただければと思います。
ここでは Sandersの指標を同文献から、ならびに下記図を Dan Hoernschemeyer医師(Unidersity of Missouri Healthystem)の報告から引用させていただきました。
この図で示されているのは、カーブ進行リスクの考え方としての「PHV Peak high velocityピークハイベロシティ」とリッサーサインの関係ですが、カーブ進行が急激に進むのが頂点PHVの左側(いわばリッサーゼロ、初潮前後)であり、その時の年齢から歳を経るごとにリッサーサインも上がっていくことになります。ただし、リッサーサインが上がったからといってリスクがゼロになったわけではありません。
そして、リツサーサインが、5 となったことをもって装具療法なりを終えると判断したときに、まだ成長の余地が残っていたとしたら、患者さんの苦労が報われないことになってしまいます。
そこで、ダブルチェックの意味としても sanders指標を取り入れている先生がいることが幾つかの文献から見ることができました。
参照:Prediction of Curve Progression in Idiopathic Scoliosis: Validation of the Sanders Skeletal Maturity Staging System.2008年
参照:A modified Risser grading system predicts the curve acceleration phase of female adolescent idiopathic scoliosis.2010年
Sanders指標ではステージ1~8まであり、ステージ1が最もリスクが高いものとなります。 仮にリッサーサインで5が確認でき、さらに Sandsersサンダース指標でステージ8が確認できたら、骨成熟が完了したのだとすることができる、という理屈になります。
このSandersサンダース指標では、ステージとコブ角との関係から、今後カーブが進行して手術となりうるリスクの確率も提示されています。(下表)
ステージ1 ステージ2 ステージ3 ステージ4 ステージ5 ステージ6
コブ角 20° 84% 92% 0%
30° 100% 100% 100% 0%
45° 100% 100% 100% 88% 1% 0%
この表は 45°までしか記載されていないわけですが、それは45°を超えたら「手術をする」というのが米国内では標準治療法となっていることが関係していると思われます。Dan Hoernschemeyer医師は 2015年「Natural History of Adolescent Idiopathic Scoliosis in Skeletally Mature Patients: A Critical Review.」の文献から次のように紹介しています。
骨成熟完了時点でコブ角が50°に達していた場合、その患者はその後 毎年1度カーブが進行した。
仮に 18歳で 50°、骨成熟完了は確認できた。という場合、確率としてこの患者さんは、38歳前後で約70°のコブ角ということになります。
このブログ内でも、幾つかのトピックスとして書かせていただいておりますが、どのタイミングで手術を決断するか、ということを考えることは、手術を避けるために実施する努力と同じくらい大切なことだと思います。
august03
側弯カーブが今後どれだけ進行する確率があるのか、それはどの程度のものなのか、ということを冷静に「知識」として認識することは、特発性側弯症という病気と向き合う時に、とても大切な要素だと考えられます。 基本的には骨盤のレントゲン写真を用いた「Risser signリッサーサイン」が用いられているわけですが、これにプラスして、2008年のDr Sandersによる研究「Predicting scoliosis progression from skeletal maturity: a simplified classification during adolescence.」を併用することを推奨している先生方もおられます。なぜ併用することを推奨しているのか、という背景には、リッサーサインだけで骨成熟の完了を判断したときに、まだ成長する可能性が残っているのに「終わりました」と判定ミスをすることが、幾つかの文献で報告されているためです。 参照「High Risk of Mismatch Between Sanders and Risser Staging in Adolescent Idiopathic Scoliosis: Are We Guiding Treatment Using the Wrong Classification?」2018年
リッサーサインについてはこちらを参照ください 2007年4月「Risser sign について」
またカテゴリー「カーブが進行するリスク」も参照していただければと思います。
ここでは Sandersの指標を同文献から、ならびに下記図を Dan Hoernschemeyer医師(Unidersity of Missouri Healthystem)の報告から引用させていただきました。
この図で示されているのは、カーブ進行リスクの考え方としての「PHV Peak high velocityピークハイベロシティ」とリッサーサインの関係ですが、カーブ進行が急激に進むのが頂点PHVの左側(いわばリッサーゼロ、初潮前後)であり、その時の年齢から歳を経るごとにリッサーサインも上がっていくことになります。ただし、リッサーサインが上がったからといってリスクがゼロになったわけではありません。
そして、リツサーサインが、5 となったことをもって装具療法なりを終えると判断したときに、まだ成長の余地が残っていたとしたら、患者さんの苦労が報われないことになってしまいます。
そこで、ダブルチェックの意味としても sanders指標を取り入れている先生がいることが幾つかの文献から見ることができました。
参照:Prediction of Curve Progression in Idiopathic Scoliosis: Validation of the Sanders Skeletal Maturity Staging System.2008年
参照:A modified Risser grading system predicts the curve acceleration phase of female adolescent idiopathic scoliosis.2010年
Sanders指標ではステージ1~8まであり、ステージ1が最もリスクが高いものとなります。 仮にリッサーサインで5が確認でき、さらに Sandsersサンダース指標でステージ8が確認できたら、骨成熟が完了したのだとすることができる、という理屈になります。
このSandersサンダース指標では、ステージとコブ角との関係から、今後カーブが進行して手術となりうるリスクの確率も提示されています。(下表)
ステージ1 ステージ2 ステージ3 ステージ4 ステージ5 ステージ6
コブ角 20° 84% 92% 0%
30° 100% 100% 100% 0%
45° 100% 100% 100% 88% 1% 0%
この表は 45°までしか記載されていないわけですが、それは45°を超えたら「手術をする」というのが米国内では標準治療法となっていることが関係していると思われます。Dan Hoernschemeyer医師は 2015年「Natural History of Adolescent Idiopathic Scoliosis in Skeletally Mature Patients: A Critical Review.」の文献から次のように紹介しています。
骨成熟完了時点でコブ角が50°に達していた場合、その患者はその後 毎年1度カーブが進行した。
仮に 18歳で 50°、骨成熟完了は確認できた。という場合、確率としてこの患者さんは、38歳前後で約70°のコブ角ということになります。
このブログ内でも、幾つかのトピックスとして書かせていただいておりますが、どのタイミングで手術を決断するか、ということを考えることは、手術を避けるために実施する努力と同じくらい大切なことだと思います。
august03