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脚長差がある人はどれくらいいるのか? (医学文献のデータを一覧にしてみました)

2017-11-21 14:12:55 | 脚長差と側弯症
初回記載:2017年11月21日

側弯症とは関係なく、いわゆる脚長差を有する人が人口比としてどれくらいいるのか? ということを医学文献から抽出してみました。

最初に、「脚長差」が生じる原因について、Raczkowskiの「Functional scoliosis caused by leg length discrepancy」から引用したものが下表になります。拙訳を加えました。

引用:2010年Raczkowski 「Functional scoliosis caused by leg length discrepancy」Arch Med Sci. 2010 Jun 30;6(3):393-8


直接的に脚長差を生じる原因        四肢において非対称性に成長する原因
A.外傷:骨折、切断             A.成長の阻害 : 先天性、物理的損傷、麻痺
                       骨の炎症過程、腫瘍、虚血
B.成長障害                B.生育促進: 腫瘍、炎症過程、骨折(の治癒過程)、血流増進
                     C. 原因不明


Prevalence有病率については、Rebecca J. Brady 「Limb Length Inequality: Clinical Implications for Assessment and Intervention」J Orthop Sports Phys Ther • Volume 33 • Number 5 • May 2003 に一覧表がありましたので、その表をここに引用し、それらの論文がいつ発表されものかを下記に追記してみました。



 発症率  脚長差
・4~8 %  12.5mm  Clarke GR. Unequal leg length: an accurate method ofdetection and
           some clinical results. Rheumatol Phys Med. 1972;11(8)

・7 %    12.5mm  Nichols P. Short leg syndrome. Brit Med J. 1960;June:1863–1865.

・7.2%   10.0mm  Fisk JW, Baigent ML. Clinical and radiological assessment of leg length.
            N Z Med J. 1975;81(540):477–480.

・7.7%   10.0mm  Fisk JW, Baigent ML. Clinical and radiological assessment of leg length.
            N Z Med J. 1975;81(540):477–480.

・8.0%   10.0mm  Giles LG, Taylor JR. Low-back pain associated with leg length inequality.
            Spine. 1981;6(5):510–521. 

・18.3%   10.0mm  Giles LG, Taylor JR. Low-back pain associated with leg length inequality.
            Spine. 1981;6(5):510–521.

・21.9%   10.0mm  Giles LG, Taylor JR. Low-back pain associated with leg length inequality.
            Spine. 1981;6(5):510–521.

・40.0%   3.0mm  Subotnick S. Limb length discrepancies of the lower extremity (the short
            leg syndrome). J Orthop Sports PhysTher. 1981;3:11–16.

・50.0%  4.0~11.0mm  Pappas AM, Nehme AM. Leg length discrepancy associated with
            hypertrophy. Clin Orthop. 1979;144:198–211.


また同文献の中に、脚長差の大きさに対するインパクト(治療の要否とか)も記載(Table1)されていましたので、拙訳にてご紹介します。

脚長差
・3mm スポーツ選手の場合は、介入(治療)が必要かもしれない 1981年
・5mm 状態によっては、治療対象              1988年
・6mm 臨床上、重要と考える                1993年
・9mm 腰痛の要因になりえる                1981年
・10mm 女性の場合、椎間板ヘルニアの要因になりえる     1997年
・11mm これ以下の場合は、身体の代謝(どこかの部位で機能を補う)で補われる  1985年
・15mm これ以上の場合、機能性側弯(非構築性)にならないように治療の必要がある1983年
・20mm これ以下のものでレントゲン撮影ではなく、身体所見で判断したものは、測定ミスの可能性が高い1985年
・22mm これ以上の場合は、側弯症を伴っている可能性がある 1982年


(comment by august03)
・仮に測定誤差がないものと考えたとすれば、この表から浮かんでくるのは 10mm前後の脚長差は人口比で5~15%に
 見られるもの、という感じが個人的にはしてきます。
・これはちょうど 2010年ポーランドのRaczkowskiが「Functional scoliosis caused by leg length discrepancy」の中で述べている 3~15% という数値にも近く、またRaczkowskiの報告は2010年という近年のもの、つまりレントゲン測定技術における測定誤差の幅も小さくなっていることが想定できます。同氏は 369人という大人数の患者さんを治療した結果として、下記のデータを報告してくれているわけですが、ここから脚長差のある人の場合も、その大半は10mm前後という様子がみえてきます。


 脚長差(mm)   人数    %
    5     27     7.3
   10     329     89.1
   15      9     2.4
   20      4     1.2


・では次に、その10mm前後は治療対象になるのか? という面で見てきますと、上表のインパクトからは、先生がたの
意見が割れているわけですが、10mm 前後は 自覚症状もなく、日常生活上の動作などに影響は及ぼさない、という意見が文献からは読み取れました。 ただし、そのような意見も、もしかすると、上記の1980年代の文献を引用しただけであって、実際にその著者が患者を診たり、治療したデータからの意見ではない可能性は捨てきれません。
(医学文献は引用、そのまた引用という構造で記載されていますので)

・ただ、ここで側弯症との関係で考えたいのは、2010年という最近のこととして、10mm前後の脚長差を....主には
shoe liftですが.....治療している先生がいる。という事実です。もちろん、そこには国によって、医療に対する考え方とかシステムが異なっていることも関係してくるのですが、


  -学校検診(スクリーニング)で側弯症の疑いありとして、二次検診でレントゲン撮影をして、
  脚長差による機能性側弯(非構築)と診断された子ども達はどうしているのでしょう?

  -この前提は、単純な仮説と算数によるものですが、人口比5~15%に脚長差10mm程度は存在すると
  仮定しますとスクリーニングで側弯症の疑いあり、とされた子どものうち5~15%には、脚長差による
  側弯かもしれないということになります。 おそらくそういう子どもは外観上で肩の高さが違う
  ということで判断されたと思います。 いま、国内では、このような場合、治療対象としてるのか
  対象はしていないのか、残念ながら、その情報は持っておりません



(comment by august03)
ご両親におかれては、脚長差による機能性側弯と診断を受けたときは、それがどの程度のものなのかを先生からよく聞き、どういう方針で対応するのかを先生と話し合われたほうが良いと思います。

くれぐれもご注意いただきたいのは、このような情報を提示しますと、民間療法者が、施術・体操などで脚長差も
含めて機能性の軽度側弯も治療できます。というたぐいの宣伝を流し始めかねません。

整形外科の先生と話合われて、もしその説明だけでは心配という場合は、セカンドオピニオンをしてもらえる病院、
先生への紹介状をもらって対応されてはいかがでしょうか。

この場合は、真の側弯症(構築性側弯)とは異なりますので、十分な時間的な余裕はありますので、慌てずにお子さんの身体の状況を把握し、どういう対応をしていくかについての専門医からの意見をもらうことが第一と考えます。




写真は、Raczkowski「Functional scoliosis caused by leg length discrepancy」より引用


augsut03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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