Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

ハンカチは真四角であるべき

2016-06-03 21:11:01 | つぶやき

 手を拭いたり、汗をぬぐったり…日頃お世話になっているハンカチは、だいたい正方形が多い。「ハンカチは正方形にするべき」と唱えたのはマリー・アントワネット。1785年に、正式に法令として布告したのはルイ16世。

 ハンカチの歴史は古く、紀元前3000年の古代エジプト文明の時代に、既にあったらしい。高貴な人のお墓の埋葬品から麻の布に飾りの施されたものが見つかっている。

 ハンカチがヨーロッパに伝わると、卵形・長方形・三角形など様々な形の布に、貴族たちは刺繍を施したり、豪華な飾り(宝石類など)を付け、互いに華やかさを競い合った。この時代、ハンカチは実用品というより、財力の豊かさを示す小道具の1つとして用いられた。

↓ アントワネット自らモノグラム部分を刺繍したとされているハンカチ。彼女はなかなか手先が器用だったらしい。けれどこのハンカチ、どう見ても長方形。今はこのような茶色に変色してしまったけれど、作った当時は滑らかで、光沢が美しい白い絹のハンカチだったのかな?けれどアントワネットはなぜ、ハンカチを正方形にすることに拘ったのだろう?彼女の美意識で、ハンカチがもっとも美しく映えるのは正方形と結論づけたのだろうか?それを個人レベルにとどめておかず、夫のルイ16世に進言して、法令化してしまうところがスゴイ。オスカルもアントワネットから何かの折に、王妃自ら刺繍したハンカチを頂いたことがあったかもしれない。(メトロポリタン博物館所蔵)

↓ タンプルの塔に国王一家が幽閉されている時に、アントワネットが刺繍したとされる小銭入れ。このころ、ようやく一家は余計な儀式から解放され、真に暖かな家族らしい生活を送ることができた。舞踏会・賭け事・晩さん会などに入れ込む時間がなくなった分、アントワネットは家族の世話をしたり手芸に時間を注いだ。一針一針心をこめて、図案を完成させていく時、自分たちが豪華な宮殿を追われ、幽閉生活を余儀なくさせられていることを束の間忘れることができたはず。

 手工芸やインテリア・デザイン方面で、アントワネットは優れた才能を発揮する可能性を秘めていたように思う。ヴェルサイユ宮殿の、バターをたっぷり使ったケーキのような豪華装飾に胃がもたれた彼女は、あっさりとした装飾のプチ・トリアノンを好んだように、もしフランス革命がなければ、彼女のもとで洗練された新しい文化が花開いたかもしれない。ああ、見て見たかったなぁ。もしアントワネットがオスカルのためにドレスをデザインするとしたら、コルセットできつくウエストを締めつけるローヴ・ア・ラ・フランセーズは絶対に着せず、ギリシャ神話風のナチュラルで、そよ風にサワサワとなびくようなスタイルを選ぶのでは?

 読んでくださり、ありがとうございます。



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