Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命 (1)

2016-07-09 21:22:01 | つぶやき

 本日発売の新書「『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命」は、池田理代子先生がルイ14世時代のフランスからナポレオン失脚までを、漫画の場面をふんだんに挿入しながら読みやすく書いた近代フランス史の解説本。(新刊書なので、ご自身で手に取って先入観なく読みたい方は、この先は読まないほうがいいかもしれません。)

↓ 表紙の帯にルイ16世の言葉が書いてある。

「安全な場所から人を非難するのは たやすいことだ。」

これにはまだ続きがある。「今まで誰も、私と同じ立場に立たされた者は いなかった。」

↓ このルイ16世の言葉は、漫画の中にも登場する。今まであまりこの場面をきちんと見ていなかったが、今改めて読み返すと、非常に深い意味を持っているように感じる。

 冒頭で池田先生は、ルイ16世のこの言葉を「作品を通して私が最も大切にしているセリフ」と述べている。更に

「ルイ16世はこのセリフを、自分を非難する周りの人たちに向けて言っていたのでしょうが、別の読み取り方もできますよね。つまり、事の成り行きを知っている現代の私たちが、当時の人たちを批判するのは実にたやすいことだと、のちの時代の人間をたしなめる言葉にも聞こえないでしょうか。」

 この一節を読み「ハッ」とした。自分も知らず知らずのうちに、「アントワネットって…」「エリザベートは…」と決めてかかったような物言いをしている。推理小説の結末を知った上で、安心してそのプロセスをチクチク批判しているかのように。う~ん、これは注意しないといけない!

 池田先生の歴史観はまだ続く。

「私自身、あとの時代の人間が前の時代のあれこれを批判するのは、慎まなければいけないことで、それこそが歴史を見る時に一番大事な考え方なのではないかと思っています。」

 批判でなく客観的に捉えることができたなら…。今後はこのスタンスを忘れずに、歴史に触れたい。題名にあるようにフランス革命を読み解いている本なので、残念ながらオスカルやアンドレに関する記述は少ない。(架空のキャラクターだから仕方のないことだけど。)けれどこの本を読んでから、再び「ベルばら」に目を向けると、違った視点でルイ16世の人となりが見えてくるし、池田先生がどういう意図をもってジャンヌやベルナール(=カミーユ・デムーラン)たちを描いたかがわかって面白い。(先生、次は「『オル窓』で読み解くロシア革命」をお書きになってくれたらなあ。)

↓ こちらは裏表紙。

 読んでくださり、ありがとうございます。



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