Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

子どもにもプライドが…

2016-03-29 12:12:13 | つぶやき

 新作エピソード2「ジェローデル編」では、オスカルが女であるがゆえに、アントワネット付きの近衛士官になれると思いこんだジェローデルが、剣の手合わせを申し込む場面がある。オスカルの目の前に剣を叩きつけるように、豪快に地面に落とすジェローデル。

 この時のジェローデルは怖いもの知らずというか、何とも大胆に1つ年上のオスカルに勝負を挑む。しかも相手に剣を手渡すのではなく、オスカルの足元かどこかへ叩き落とす。大人たちの決闘の流儀をまねたのだろう。

 「その剣をお取りください マドモワゼル」…「マドモワゼル」と呼ばれたのはこの時が初めてだったのだろうか、驚くオスカル。しかしすぐに冷静さを取り戻し、ジェローデルからの勝負を受けて立つことにする。ジェローデルはこの時、やや見下した気持ちで「マドモワゼル」と呼んだのだろうか?彼はこの時点では自分がオスカルに勝てると信じていただろう。

 アンドレがいいタイミングで、オスカルに彼女の剣を渡す。「オスカル、お前の剣だ!」ジェローデルの剣を使わせたくなかったのか、あるいは真剣勝負だから日頃使い慣れた剣がいいととっさに判断したのか「さすが、アンドレ!」と感じる。このわずかなシーンに、子どもながらアンドレとオスカルのプライドが込められている気がする。他の新作エピソードに描かれているアンドレも、ワンシーンに彼のオスカルへの深い愛が感じられるものが多い。

 勝負はオスカルの勝ち。ジェローデルの手から落ちた剣を、手渡しで返すアンドレ。目を合わせてはいるけれど、まったく言葉はなし。この時、二人の胸中にあったものは何だろう?アンドレは内心誇らしい気持ちもあっただろうか?けれど貴族であるジェローデルに腰をかがめて剣を拾わせず、自分が拾って手渡している姿に、相手のプライドを傷つけまいとするアンドレの紳士的な思いやりが感じられる。

 その場を去っていく二人。オスカルと並んで歩かず、彼女の2~3歩あとからついて行く姿に、子どもながら自分の分をわきまえているアンドレの賢さが伺える。このコマ、大好き。

 

 中世から近世ヨーロッパでは、銃や剣を単に武器として使用するばかりでなく、豪華な装飾を施し観賞して楽しんでいた。オスカルはどんな剣を持っていただろう?検索してみた。

 握り手部分が陶器でできているもの。(18世紀)

 1750-60年代のドイツのもの。金と鋼鉄製。

 こちらは1750年代のドイツ製。

 18世紀後半、東ヨーロッパ圏(ロシア?)のもの。花をモチーフにデザインしている。

 こちらはイギリス製。

 ジェローデルが所有していた形の剣はないかと検索してみた。握り手部分がカップを逆さまにしたようなこのタイプは、スペインでよく使用されていたらしい。

 こちらはスペインのチャールズ4世が所有していたとされる剣。

 ジェローデルは子どもの頃、イタリア人の先生から剣の手ほどきを受けていたので、こうしたラテン系の剣?を使っていたかもしれない。

 そしてこの時代、貴族の男性たちにとって剣術を学ぶことは、自分の身を守るための必修科目だった。この人形たち、剣術を教えるジャルジェ将軍そしてオスカルに脳内変換したくなる。

 読んでくださり、ありがとうございます。



6 コメント

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こんばんは (marine)
2016-03-29 23:31:00
りら様ご無沙汰しております。
花粉と風邪のダブルパンチでグッタリしてる間に3月も残すところ2日です。
やっと、杉のピークは過ぎつつあるように思います。

ずっと記事は拝読しておりました。
いつも興味深い記事で楽しませていただいております。

今日の記事も、最後の2人のカットは私も好きです。
でもこの時からアンドレが常に少し後ろに付くオスカルの後ろ姿をジェローデルは見続けていたのだなと、感慨深いカットでもありました。

いよいよ「あさが来た」が終わります。
この1ヶ月くらいは、あさの近しい人々との別れが多く、涙腺が緩みっぱなしです。
新次郎さんとの別れも近いですね。
でも昨日だったかな?新次郎さんの女傑だなんだと言われても、あさの可愛らしいところはわてだけが知っている、ようなセリフがありましたが、ここはまさにアンドレの「オスカルの女らしさがてめえらに…」のところを思い出しました。
半年間見続けてきたものが終わるのはやはり寂しいです。
ここで初めてお話しますが、私、ダウントンアビーというドラマにもはまってて、こちらは先だってNHKでシーズン4が最終回を迎え、こちらもがっかりしております。

年度末でりら様もお忙しいことと思いますが、寒暖差も激しいおり、ご自愛くださいませ。
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marineさま (りら)
2016-03-30 00:56:10
 コメントをありがとうございます。

>花粉と風邪のダブルパンチでグッタリしてる間に3月も残すところ2日です

 大変でしたね。病院には行かれましたか?実は私も今年初めて、春に花粉症の症状が出て、今もくしゃみ・鼻水で悩まされています。それでも楽しいことを考えて、気持ちを上向かせようと思っています。

>でもこの時からアンドレが常に少し後ろに付くオスカルの後ろ姿をジェローデルは見続けていたのだなと、感慨深いカットでもありました。

 子どもながらアンドレが、自分の立ち位置を既にわきまえていることがいじらしくもあり、哀しくもあります。そしてそんな二人の関係を、ジェローデルも長い間、そばで見続けていたのですよね。う~ん、深いです。

>新次郎さんの女傑だなんだと言われても、あさの可愛らしいところはわてだけが知っている、ようなセリフがありましたが、ここはまさにアンドレの「オスカルの女らしさがてめえらに…」のところを思い出しました

 marineさま、私もこの場面、marineさまとまったく同じことを感じました。「それって、アンドレの言葉だ!」と。あのあと確か新次郎さんは「(あさの本当の女らしさは、自分しか知らないという事実は)なかなか気分がいいものです。」みたいなことも言っていましたね。アンドレも秘かに、他の男性が決して得ることのできない、ささやかな優越感を感じていたのではと思ってしまいました。「あさが来た」は、大人のメルヘンだと思っています。現実はあのようにスムーズに事は運びません。けれど九転び十起きで、困難を乗り越えていくあさと、彼女を支える人々、素敵な男性に囲まれ夢を実現させていく。恋も仕事も子育ても…。

>ダウントンアビーというドラマにもはまってて、こちらは先だってNHKでシーズン4が最終回を迎え、こちらもがっかりしております

 イギリスの時代物のドラマですよね。衣装や小道具が素敵です。「見たいな。」と思いつつ、なかなか全編通して見ることができません。いずれまた新たなシーズンが始まるのでしょうか?

 4月からの朝ドラは、女性のための雑誌を創刊した人の物語。marineさまはご覧になりますか?
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こんばんは (marine)
2016-03-30 22:45:11
りら様も春の花粉に反応してしまったのですね。一度症状が出ると一生付き合うことになると言いますが、主人は花粉症歴20年近いのですが、8年程前から別の目的で毎日ヨーグルトを食べ続けてますが、若干症状が和らいできてると申してます。私もそれを聞いてせっせと毎日食べていますが、今のところ変わりません。

新次郎さんの、私だけが知っている、の所はそうですね、きっとアンドレも、アンドレにしか知らない、見せない部分が沢山あって、密かに優越感に浸っていたのではないでしょうか。控えめなので、周りに自慢することなど露も見せずに。

あさが来た、は私もあんなにスムーズに事は運ばないと私も思います。
本当は、もっともっと泥臭い部分があったと思いますが、りら様のように夜観る方も多いと思いますが、朝ドラは希望に満ちて、1日頑張ろうと明るい気持ちにしてくれるものが良いと思うので、あれで良いのかもしれませんよね。
次はとと姉ちゃん、ですね。
最初は観てみようと思ってます。面白ければそのまま、はまるかなぁ。

ダウントンアビー、20世紀初頭のイギリス貴族のお話です。
当時の文化、風俗、所作や調度品、衣装アクセサリーなど、何から何まで忠実に再現しているかなと思います。
ベルばらから百年のちですが、貴族ということで、興味深くて。
お話の内容は、これでもかと困難が降りかかりますが、登場人物も多く、誰に肩入れして観るかでも中々面白いです。
シーズン4が終わり、本国では去年シーズン6で完結したそうです。NHKでの放映待ちです。
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marineさま (りら)
2016-03-31 18:08:58
 コメントをありがとうございます。

>私もそれを聞いてせっせと毎日食べていますが、今のところ変わりません

 花粉症にヨーグルト…聞いたことがあります。効く人には効くのでしょうね。最近、くしゃみ・鼻づまり対策にワセリンが良いという記事を読みましたが、果たしてどうなのでしょう?

>控えめなので、周りに自慢することなど露も見せずに。

 アンドレは自分の心の中だけに収めておき、決して口外しない。そうとも知らぬオスカルは、幼馴染の信頼感もあり、アンドレには隠し事をせず、ありのままの自分をさらけ出す。それを大きな心で受けとめるアンドレ。

>朝ドラは希望に満ちて、1日頑張ろうと明るい気持ちにしてくれるものが良いと思うので、あれで良いのかもしれませんよね

 無名に近い新進女優さんが、爽やかな役を演じる…ただそれだけで十分朝ドラの使命を果たしていると思います。今回、あさを演じた波瑠さんは、フェロモンを発するタイプではなく、とても役に嵌まっていました。放送は今夜を含めあと3回。全員、丸く収まるような気がします。

>当時の文化、風俗、所作や調度品、衣装アクセサリーなど、何から何まで忠実に再現しているかなと思います。ベルばらから百年のちですが、貴族ということで、興味深くて

 うわぁ、とても惹かれます!欧米の歴史ドラマって、小道具や大道具、衣装等を見るのも楽しみですよね?NHKでは4月から「「四銃士」が全20回で放送されます。これも面白そう。こちらは熱い男のドラマって感じです。http://www9.nhk.or.jp/kaigai/musketeers/
 とりあえず3日の第1回目がどんな感じか、見てみます。

 marineさまに「あさが来た」を紹介して頂き、本当に感謝しております。すっかり私もハマりました。あさ&新次郎に、オスカルとアンドレがだぶります。現実世界は、テロ攻撃など解決の難しい問題が山積みです。だからせめて1日15分は、爽やかな想いに浸りたい。本当に幸せな秋から冬でした。テーマソングも好きです。
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りら様 (marine)
2016-04-02 23:08:53
こんばんは。
新しい記事が沢山アップされてる中、また同じ話題ですみません。

「あさが来た」終わってしまいました。
最後は菜の花畑の中、ファンタジーのような綺麗な終わり方でした。
私は涙が止まりませんでした。
りら様にも気に入っていただけて、本当に嬉しかったです。
波瑠さんは、綺麗な方ですが、最後は本物の白岡浅子さんのような風格も備わっていて、半年間、あさと共に成長していく姿がまぶしかったです。
女性だから、男性だから、と固定観念にとらわれず、柔らかい心をお互いに持ち続けた夫婦の姿は、本当にオスカルとアンドレにも通ずるようでした。

りら様の懐の大きさに甘えてしまい、ブログの趣旨と外れたコメントを度々してしまい、申し訳ありませんでした。他の読者の方にもすみませんでした。

ところで、銀座の東急プラザは楽しそうですね。
こちらのアンテナショップはずっとあるのでしょうか?もう行かれた方も何人かいらっしゃるようで、私も一度行ってみたいです。
欲しいのはティッシュなんですが、鼻セレブのようなら、べらぼうなお値段でもないですかね?

アントワネット展も、今から楽しみにしています。いずれも都内なので、横浜辺りだともう少し気軽に行けるのですが。

いつも楽しい記事、本当にありがとうございます。気忙しく世知辛い話題の多い今、りら様のブログを読むのは私の中でオアシスのような時間です。
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marineさま (りら)
2016-04-02 23:42:18
 コメントをありがとうございます。

 今、4月2日、午後11時17分。2分前に「あさが来た」最終回を見終えました。ラストシーン、杖を捨て、若き日に戻りながら、遠くに立つ新次郎のもとに走っていくあさ。菜の花畑でしっかりと互いの顔を見つめ、新次郎があさにねぎらいの言葉をかける場面に、ほろっと来ました。
 「ベルばら」で、アンドレがジェローデルにショコラをかけるシーンで「オスカル嬢は気づいておられるのだろうか  きみが彼女の分身だということに…」と言いますが、あさと新次郎もまさに、互いが互いの分身であったように思えます。原案者も脚本家も女性。最終回も女性ならではの締めくくり方に感じられました。「あさが来た」は朝ドラ史上、最高の視聴率を打ち出したようですが、あのドラマは老若男女を問わず、見る人を勇気づけるものがありました。玉木宏さんは、どちらかというと朝ドラよりも月9のような夜のドラマが似合う方。女性だったら「こんな人がそばにいてくれたらなあ。」と思わせる、素敵な男性を演じきってくれましたし、波瑠さんはもしかしたらこの先、あさを上回る役に巡り逢うことはないかもしれません。marineさま、素敵なドラマを紹介してくださり、本当にありがとうございました。marineさまのコメントがなかったら、私はこのドラマを見なかったです。本当にありがとうございました。どうかこれからも、「ベルばら」に限らず、ブログの趣旨とずれようと全く構いませんので、お薦めのTV番組等がありましたら、いつでもお気軽に教えてください。4月23日(土)に、「あさが来た」のスピンオフ番組を放送するようです。

>こちらのアンテナショップはずっとあるのでしょうか

 「GW期間中も、営業していますか?」と尋ねたら、「やっています。」とのことでした。

>欲しいのはティッシュなんですが、鼻セレブのようなら、べらぼうなお値段でもないですかね?

 確か1箱550円くらいだったと思います。とにかく上質な紙でした。

>アントワネット展も、今から楽しみにしています

 これまでも何回か、「アントワネット展」は開かれているので、今回はどんな切り口で迫ってくるか、期待しています。

 街中のカフェのように、いつでも気軽にふらっと立ち寄り、しばし日常の雑事を忘れて楽しんでいただけるブログであったらなあと思って書いております。どうかこれからもよろしくお願いいたします。
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