Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

ヴェルサイユ宮殿での暮らし (2)

2015-08-03 01:08:25 | つぶやき

 第2章のテーマは「食事」。貴族あるいは宮廷に仕える人々にとって、王族から食事の招待を受けることは、このうえなく名誉なことであり、たとえ末席であろうと、侮辱的な恩着せがましい態度で扱われようと、テーブルに付くことを厭わなかった。

 

 招かれるのは「王がそばにと認めた、身分ある者」が原則。18世紀のフランス式サービスは豪勢だった。メインの料理はすべて同時に、左右対称のモチーフを描くよう装飾的に食卓の上に並べられた。自分の使用人を同伴していない招待客は、手ずから食事を皿に取るのだった。お付きの者は、主人の後ろに立ち、飲み物を注ぐ役割を果たしていた。フランス式サービスでは、一枚の皿が片づけられたら即、次の皿が用意されていなくてはならず、食卓に何もなくなるということがない。

 オスカルがルイ16世やアントワネットから食事の招待を受けた時、アンドレを供として宮殿に参内していれば、彼がオスカルの給仕係を務めただろうか?病気でベッドから離れられないルイ・ジョセフが、自分の部屋で一緒に夕食をするように母に懇願する場面がある。アントワネットはその場にいたオスカルにも「あなたもいっしょにいかが?」と声をかけ、オスカルは「ありがたき 幸せにございます。」と礼をして誘いを受ける。これはとても私的な場面なので、アントワネット、ルイ・ジョセフ、オスカルの3人だけでおそらくセルフで給仕して食べていたように見える。

 ルイ16世もアントワネットも、大規模な午さん会や晩さん会より、家族や兄弟姉妹と食事を共にするのを好んだ。

 大規模なお食事会には必ず残り物が生じる。これらは官僚から下っ端の雇われ人へと順々に廻されていった。手をつけられなかった料理は、9人の給仕係侍従と5人の官僚に配分された。それでも量が豊富だったので、食膳部の官僚たちはあり余る残りを、さらに小売商(食膳商)に売ることができた。小売商たちは城外に露店を設ける許可を得ており、町民や兵士、使用人たちはこうして順繰りに廻されてくる王の食事のおこぼれに与かることができた。廻された食べ物は再加熱されたり、並び替えられたり、見た目を整えられ、さらに腐敗の始まったことを隠すべく、ソースがかかっているのが常だった。(体臭を消すために香水を使用し、腐敗臭を消すためにソースを使う!?)これは現代のテイクアウトの先駆けともいえる。下級官僚たちは宮殿内の食卓には席がないため、食事手当を受け取り、こうした食べ物を買っていた。

 アントワネットはあらゆる儀礼を嫌い、鶏手羽1本と、コップ一杯の水だけで満足するほど小食だった。だから衆目の中で食事することは大の苦手だった。アントワネットの居室には食堂が設けられており、ここでの食事はお付きの女官数名が同席を許された。だから一層、宮廷の人々はこうしたひそやかな食卓に招かれることを切望し、アントワネットに言葉巧みに取り入ろうとする。招かれないと、人々はアントワネットの悪口を言う。本当に食べ物の恨みは恐ろしい。

 読んでくださり、どうもありがとうございます。



4 コメント

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りら様 (marine)
2015-08-03 22:55:12
こんばんは。全国的に毎日暑いですがお元気ですか?
また楽しい本の紹介ありがとうございます。
パリは、昔は新鮮な食材が届きにくく、誤魔化す為に複雑なソースが発達(?)したと聞いたことがあります。
香水もまた体臭を誤魔化すためですもんね。貴婦人達の盛られた髪型も、めったに洗わないためシラミがわき、細長いピンでカリカリ掻いてると、ピンの先に卵が付いて来たと、げんなりするような話を、学生の時選択してた西洋服装史という授業で習ったことがあります。

ベルサイユ宮殿にどんな部屋をあてがわれるか、や、食事を王や王妃に招かれたりするか、など、貴族の中でも上下関係があり、宮廷は妬みの温床ともなっていたのですね。
美しいばかりではない、ドロドロした部分も、子供の頃だとちょっとがっかりしちゃうかもしれませんが、大人になってみると興味深く読めますね。
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marineさま (りら)
2015-08-04 03:30:59
コメントをありがとうございます。年々、日本の夏は暑くなっていく気がします。marineさまは夏バテしていませんか?

華麗なるロココ文化と言いたいところですが、この本はそこで実際に暮らした人たちの生活目線で書かれているので面白いです。私たちからすれば、滑稽でもありますよね。貴婦人たちのあの大きく広がるドレスのスカート部分は、庭園の隅でトイレをするためのカムフラージュでもありましたし…あんなに髪を盛り立てては、頸椎を痛めないだろうかと心配になります。そして今のような冷蔵庫がない時代、ソースをかけて誤魔化すことは当たり前。もっとも私なぞ、冷蔵庫に入れると安心してしまい、結局腐らせてしまいますが…そんな環境で、オスカルとアンドレはどう暮らしていたのだろうと想像するのが、また楽しいです。
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Unknown (marine)
2015-08-04 08:46:21
返信ありがとうございます。
本当に、年々気候の変化を感じています。
秋生まれからか、真夏は冬眠ならぬ夏眠(そんなの聞いたことないけど)してたい位苦手ですが、手作りのジンジャーと梅のシロップで頑張っております。そのお陰か食欲は落ちず…夏痩せしたい位ですけど。

そうなんですよね、優美で巨大なペチコートはお手洗いのため…。それでなくてもいろんな所を引きずり裾はさぞかし汚かったでしょうにね。
あれも、鯨の骨などで作っていたからかなり重量もあり、体には良くなかったと思います。

そうそう、私も冷蔵庫入れて安心、てあります。改めねばと思いつつ…。
りら様もご自愛下さいませ。
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marineさま (りら)
2015-08-04 13:40:01
コメントをありがとうございます。手作りジンジャー、いいですね。爽やかです。私は今年初めて、梅シロップを作ってみました。やってみれば簡単ですね。何とも言えないまろやかな風味。炭酸で割るとスッキリして美味しいのです。贅沢な飲み物です。

ロココって客観的に現代から見ると、滑稽なことを真面目にやっていたんだなあとも思います。人間喜劇ですね。

まだまだ暑い日が続きます。お互いに体に気をつけましょう。
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