
「ベルばら」では、ジャルジェ家の室内調度品がしばしば描かれている。例えばベッド。
↓ アントワネットが乗った馬が暴走し、オスカルが命がけで助けたのち、ジャルジェ邸の自室で休む場面。
↓ フランスの政情が不安定になり、オスカルの周囲も何かと落ち着かない頃、ばあやが倒れオスカルがベッドのそばで寄り添う。本来ならこんな豪華な天蓋付きベッドに、ばあやが休ませてもらえるなんてありえないだろうけれど、長年に渡る奉公ぶりが認められ、自然とこのような待遇になったのだろう。
天蓋付きベッドそして寝室。ヨーロッパではどのように生まれ、広がっていったのだろう?
1095年に第1次十字軍の派遣があり、それに参加した兵士たちがカーテンをヨーロッパに持ち帰ったことにより、ベッドの回りにもそれを取り付けるようになった。この事によりベッドには新たに独立した部屋のような機能を持つことになる。
14世紀まで、ヨーロッパの上流階級の家には独立した「寝室」がなかった。寝室が他の部屋と区別されておらず、「広間」が生活の場だったらしい。そのような広間に「寝室」としての区切りを付けたり、隙間風を防ぐ役割として天井からカーテンを吊るしたのが「天蓋付きベッド」の始まり。上流階級の建物は天井が高く、高い部分に積もったホコリがベッドに落ちて来ないように天蓋付きベッドが作られた。
15世紀になると、それまで部屋の隅や奥に置かれていたベッドを部屋の中央に出すようになった。同時に部屋とのバランスも考えるようになった。また部屋数が増え、独立したベッドルームが作られ始めた。しかし王族たちはベッドで休む際に防犯の意味を込めて、同じ部屋に護衛も一緒に休ませていたらしい。
↓ 15世紀、イギリスのベッド。車輪が付いており移動可能。
16世紀のフランスでは、王たちの政務がベッドの上で行われるようになった。王たちが使ったベッドは「正義のベッド」と呼ばれ、それに倣って貴族たちも人と会ったりする際にベッドを使うようになり、「謁見のベッド」と呼ばれた。寝室はプライベートルームではなく、公的な性格を持つ部屋だった。政情が安定するにつれてベッドにも装飾性を求めるようになり、ヘッドボードや柱を豪華に飾り立てるようになった。
18世紀に入るとマットレスが大きく進歩した。それまでのただ袋の中に藁や綿などを入れていたものから、現在の形状に近い形で鳥の羽や獣の毛を詰めたコンパクトなものに変化した。
↓ 1608年、イギリス、Berkeley Casle
↓ 18世紀半ば、フランス、ヴォー・ル・ヴィコント城。太陽王のルイ14世がこの城を訪問して、その豪華さに嫉妬し、ヴェルサイユ宮殿建設を決意したいわくつきのお城。
↓ オーストリアの、Schloss Eggenberg これだけのスペースがあれば、会議や商談も十分できそう。
↓ 1775年~85年に作られたベッド。イギリス Carlton House、ジョージ4世の寝室。カーテン生地はシルク、てっぺんの飾りはオーストリッチの羽根。
↓ それではヴェルサイユ宮殿はどうだったか?これは王妃の寝室。謁見に訪れる人たちのためのスペースが確保されており、100%私室とは言い難い。
↓ プチ・トリアノン。この部屋も寝室というより、「サロンにベッドを置いてみました」っていう感じ。
↓ アントワネットの居室。いったい彼女はいくつ、ベッドを所有していたのか?
↓ 王太子の部屋。寝るだけなら、こんなにスペースはいらない…と思うのは貧乏性の表れ?
↓ ナポレオンの最初の妻、ジョセフィーヌが愛したマルメゾンの館。お客さまをお迎えする部屋に、堂々とベッドを置いちゃった。
↓ 同じくマルメゾン。
↓ 天蓋の飾り…出動前夜の場面では、こんなふうに描かれている。あれっ!馬暴走事件の時とは違うベッド?
↓ ヴェルサイユ宮殿、王妃の寝室の天蓋飾り。アントワネットはこの天井を見て、何を思っただろう?
↓ マルメゾンの天蓋飾り。
天蓋付きベッドで一度は寝てみたいが、果たしてチャンスがあるかどうか?
読んでくださり、本当にありがとうございます。
子供のころ憧れていたように思います
たぶん・・・絵本か何かで見たんだと思います
ふと・・・思い出したことがあって
昔、夏になると「蚊帳」をつって寝ていましたよ
部屋の四隅には蚊帳をつるための金具があって・・・夕方になると蚊帳をつる
天蓋ではないけれど、「囲まれている」という雰囲気が好きでした
>子供のころ憧れていたように思います
私も憧れました。伽羅さまが仰るように、絵本の挿絵などで見たのが、ずっと脳裏に残っていたのでは?と思います。いかにも「姫の寝床」という感じがしますね。
>昔、夏になると「蚊帳」をつって寝ていましたよ
ありました、ありました。色は白でピラミッドのような形をしていた覚えがあります。今は網戸が普及し、防犯上、真夏でもしっかり窓を閉めて休むのでエアコンをつけるから、蚊帳は廃れてしまいました。寂しいですね。
>天蓋付きベッドに寝る感覚に近いものだったんですね
別空間にいる高揚感がありましたね。外界と遮断された自分だけの世界。でもヨーロッパでは、天井から落ちてくる埃よけの意味があったので、ややロマンチックな気分に欠けるかもしれません。