最終章ではナポレオンについても触れている。
↓ 原作にはオスカルが、まもなく20歳を迎えようとするナポレオンとすれ違う場面がある。本著で池田先生は、オスカルの死後もずっと連載を続け、ロベスピエールとサン・ジュストの話を経てナポレオンの登場まで描きたかったと仰っている。このシーンは当時、その伏線のつもりで描いていたかもしれない。もし池田先生が「ベルばら」の連載をナポレオンの登場まで続けていたら、珠玉の名作「おにいさまへ…」は生まれなかった可能性もある。どちらが良かったのか、今となっては何とも言えない。
ナポレオンの登場でフランスに徴兵制度が誕生する。それまでの軍人は、お金をもらって働く傭兵(ようへい)だった。だから外国人がお金目当てに他国の軍隊に入隊することもあった。1789年7月13日、オスカルたちがチュイルリー宮殿広場で戦った相手は、ドイツ人騎兵だった。徴兵制度をスムーズに定着させるため、彼は当時最高のデザイナーに軍服のデザインを任せた。そして徴兵される男性はもちろん、女性たち、子どもたちまでもが軍服姿にうっとりし「兵隊さんはかっこいい。」と思わせることに成功。ナポレオンは女性や子供を味方につければ、徴兵制度は問題なく施行できるとわかっていた。いろんな意味でナポレオンという人は非常に頭がいい。しかし徴兵制を義務付けたことで、農村では男性の働き手が不足し飢饉が起きる。そしてたび重なる対外戦争で人口が激減。人々はやがてナポレオンに不満を抱くようになる。そしてナポレオンが失脚し、フランスは王政復古の時代へと移っていく。
池田先生のフランス革命を捉える目は、「ベルばら」連載中も今もほとんど変わっていないと感じた。先生は現在劇画家として「ベルばら」の新作エピソードを描き続け、音楽家としてオペラの演出を手掛けたり、自らステージに立って歌っている。可能ならこれらに加え、今回のような文章によってご自身の作品を解き明かす書籍を今後も書いていただけると嬉しい。
これで「『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命」の項を終わりにします。 読んでくださり、本当にありがとうございました。
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