α7Sを購入して3週間近くが経ちました。天体(星野)撮影に何度か使用してみての雑感、課題等をつらつらと。
・S/N比について
これまで何例か撮影してみて、 少なくとも従来の民生デジカメ天体撮影における標準(常識?)はすでに覆してしまったのでないかと思います。K点越えです。厳密には検証出来ていませんが、同ISO、同露光時間あたりのS/N比は格段に向上しているのではないでしょうか。
・露光時間について
α7Sが、高ISO耐性・低ノイズな"超"速写カメラという事は分かりました。その気になれば一晩で数十対象(ある程度のクオリティを保った)の撮影も不可能ではないと思いますが、個人的にはこのセンサーで従来と同程度の露光時間をかけたら一体どんな品質の作例が出来るんだろう、という事に興味があります。
たとえば、それなりに淡い対象に向けて、ISO6,400・2分で2、3時間分スタックするとか。初回撮影以後はこれを試したくて遠征しているのですが天候に恵まれていません…。梅雨、明けてくれないかなぁ…。
・周辺減光について
FSQ-85EDおよび、ε-130Dで撮影しましたが、両方とも周辺(特に四隅)での光量の落ち込みが激しいと思いました。設定・対象によっては、ぱっと見、ケラレのようにすら見えます。他の機種は試した事がないのですが、フルサイズでは皆こうなのでしょうか?
ただし、フラットフレームを適正に撮影してフラット除算してやる事により、周辺の星、光量は復活します(FSQの場合。εはフラット撮影出来ていないので未検証ですが、メーカー的に"フルサイズ非対応"のFSQ-85EDが大丈夫なので、"フルサイズ対応"のε-130Dはおそらく問題ないでしょう)。つまり、ケラれてはなかったようです。フラット処理は必須ですね。
・微小な恒星の色付きについて
CameraRawで現像すると、微小な星に緑やピンクなどのカラフルな色が付きます。ただ、このα7Sもベイヤーワンショットカラーのカメラである以上、いずれにしても微小恒星の偽色から完全に逃れる事は出来ないと思います。
まだ発売されたばかりのカメラなので、今後各ソフトウェアとも現像ロジックのチューニングが行われるかもしれませんが、微小恒星の色付きがどうしても気になる方はもう少し様子をみた方がいいかもしれません。
・カメラのリモート操作について
現状、純正・サードパーティ含めて、バルブ撮影対応のタイマー付きリモコンがありません(多分)。
調べてみた限りでは、純正のPCリモートコントローラーソフト「Remote Camera Control」がインターバル撮影可能ですが、残念ながらバルブ撮影は出来ません。SONYさんには対応を切にお願いしたいです…。
そこで次善策として、プリセットの30秒露出とインターバル(35秒~40秒あたり)を組み合わせて、ISO:6,400~12,800で30秒露出x多枚数(200~300枚とか)のオートマティック撮影を試してみようと思っています。手持ちレリーズで2時間シャッターを切り続けるのは罰ゲーム過ぎますので 笑
※HUQさんより、サードパーティ製のタイマーリモコンが存在するとの情報を頂きました。ありがとうございます!詳しくはコメント欄をご参照ください。
・ピント合わせについて
これも現状では、Canonデジカメにおける、「EOS Utility」や「Backyard EOS」のような、リモートでライブビュー可能なソフトウェアがないので(SONYさん、切に…)、リアルタイムでピント確認するには、カメラの背面液晶や電子ビューファインダーを見るしかありません。
先日の坊主遠征では、バーティノフマスクを付けて、背面ライブビューを拡大(最大8.3倍)してのピント合わせでした。一等星を使ってなんとか合わせられましたが、より正確、簡単に合わせるにはやはりPCやタブレットへのライブビュー転送が欲しいです。SONYさん、、、(略)
・改造について
出来るかどうかは別にして、僕は今のところIRフィルタ改造も冷却改造もするつもりはありません。赤い星雲はこれだけ出れば僕的には充分ですし、以前検証したように、少なくとも気温25℃時のダークノイズならば個人的には問題ありません。それ以上の気温下では未検証ですが、暑い場所で撮影する機会はほとんどなさそうなので…。もともと普段撮り用に買ったカメラなので昼間も手軽にたくさん使いたいですしね。
そんなこんなで今の所感としては、センサー性能は恐ろしく高い、ただし取り回し環境が整備されていないのでその辺り苦労しそう、というのが正直なところです。ただ、オペレーションのハンディを凌駕する程の魅力がこのα7Sには宿っていると思います。SONYさーーん!(絶叫)
ISO:12,800, 40秒, 1枚、撮って出し。富士山富士宮口五合目にて(2014/6/25)。