遊びをせんとや

人生総決算!のつもりで過去・現在のことなどを書きます
といっても肩肘はらずに 楽しく面白く書きたいと思います

永井荷風#27『断腸亭日乗~西遊日誌抄その5 イデスその後』

2024年02月28日 | 日記

前々回(#25)で 「あめりか物語」ではイデス→マリアン 荷風→博士B と
名前を変えてていることを書いた
荷風が仏蘭西に渡ったあと イデスはどうしたのだろうか?
旅費を貯めて自分も仏蘭西に行く と言っていたイデスだったが・・・

荷風は「ふらんす物語」中の「雲」という挿話にイデスを登場させている
名前はアアマ 語り手の小山貞吉という外交官が荷風である
荷風が亜米利加在住時を回想し アアマとの日々などを想うという挿話
しかも荷風 他の娼婦と同棲や外泊を繰り返しながら・・・

そして或る日 大使館の机の上にそのアアマからの手紙が置かれる
以下 「ふらんす物語」からの要約引用~名はイデス、荷風で書く

<あちこち転送され 宛先が朱色になったイデスからの手紙が来た
~運河工事で人が大勢集まるパナマに稼ぎに行った
3か月経たずに風土病に冒され 死も近いので最愛の人に手紙を送る~
10行足らずの乱れた文字 筆をもつことすら苦しかったのだろう
荷風は呆然としてしばらく何も考えられなかった>

<どうしてパナマなんかに行ったのか
色香の失せたこの種の女の末路を荷風は眼に思い浮べた
米国で食いつめ 技手や工夫を相手にあんな処まで流れて行ったに違いない 
可哀想な事をした>

イデスは既に死んでいるだろう
親しく触れて感じたその肉体が朽ち果てたと思うと荷風は恐怖を感じた
馬車を呼び 思いっきり駆けろ と命じた>

<セーヌ川からの冷たい風に吹かれ 馬車の中て再びイデスを想う
初めに感じた悲愁や恐怖は既に消え 広場の向こうには繁華な大通り
過ぎた恋人の死さえ 唯一夜も泣き明かせない自分の頼りない心
荷風は自分ながら悲しく思った> 

断腸亭日乗・西遊日誌抄・あめりか物語・ふらんす物語等々・・・
読んでいて時々思うのは どこまでが事実か 或いは虚構か ということ
しかし 一方で 書いた本人にも誰にも分からないのでは? とも思う 
思いながら浮かんだ言葉が 実即虚 虚即実・・・

それでは明日またお会いしましょう
[Rosey]