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遠い家への道のり (Reprise)

Bruce Springsteen & I

Bruce Springsteen "Thunder Road" (Reprise)

2008-11-28 12:47:14 | Born to Run
網扉が音を立てて閉まり
メアリのドレスが揺れる
幻のように踊りながらポーチを横切る彼女の傍で
ラジオではロイ・オービソンが
孤独な者に歌いかけている
それは俺の事 そして欲しいのはお前だけ
家に追い返さないでくれ
独りきりで自分に向き合う事はもうできない
家に逃げ込まないでくれ
ダーリン、俺がここにいる理由は知っているんだろう
だからお前は怯え、考えている
もしかしたら俺達ももうそんなに若くないかもしれないと
少しくらい信じてくれないか 夜には魔法がある
お前は美人ではない だけど素敵だ
俺にはそれで十分

隠れて自分の痛みについて考える事だってできる
恋人達から苦しみの十字架を作る事も
雨の中に薔薇の花を放る事も
この街から救世主が立ち上がるよう祈って
ひと夏を無駄にしてしまう事だってできる
俺は英雄なんかではない
それは分かっている
俺に贖えるものは
この汚れたボンネットの下にあるものだけ
だがそこには何とかうまくやっていくためのチャンスがある
他に一体何ができるんだ
窓を押し下げ、お前の髪を風になびかせる以外に
夜が広くどこまでも続いている
この2本の道を辿ればどこへでも行ける
これが最後のチャンスだ
翼の代わりに車輪を手に入れる取引を実現させるための
後にの後に乗るんだ
天国がこの道の先で待っている
oh oh さあ俺の手をとって
約束の地の様子を見に出かけよう
oh oh サンダーロード oh サンダーロード
白日の殺人者のようにのびている
もう遅いのは分かっているが走れば間に合うだろう
oh サンダーロード しっかり座って掴まるんだ
サンダーロード

俺はこのギターを手に入れ 語らせる術を学んだ
俺の車は裏に止めてある
表口のポーチから助手席までの長い道のりを歩く用意ができたなら
ドアは開いてるよ
だけどただで乗れる訳じゃない
俺の語らない言葉のせいで お前が寂しいのは分かってる
だけど 今夜俺達は自由だ
約束は全て破られる
お前が追い払った少年達の目に映る亡霊達は
埃っぽい海辺の道端に打ち捨てられた
シボレーの骸骨のような枠組みの中に宿っている

奴らは夜中にお前の名を通りで叫び
お前の卒業式のガウンはその足元でぼろぼろになっている
孤独でひんやりとした夜明け前
お前はエンジンの轟きを耳にするが
ポーチに辿りつくと奴らは風に乗って既に消えている
だからメアリ、乗れよ
ここは負け犬で溢れた街
俺はここを出て勝利を手にする

ENGLISH


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ロック史の授業では、毎回10曲弱の音楽を聴きます。その1学期分のソングリストを最初の授業で配布されて私は1番にブルース・スプリングスティーンの曲を探しました。見つかったのは15歳の頃から最も好きな"Thunder Road"でした。日付けは約3ヶ月後の11月、殆どセメスターの終わりに近い頃だったので、この曲が扱われる日がこんなに早く来るとは思いもしませんでした。そしてこの曲を教室で聴く事がこんなにも胸に迫る出来事になるとも想像していませんでした。

ブルースを好きになって間もない頃、彼の曲だと知らずに初めてこの曲を偶然耳にしました。イントロのハーモニカにどれだけ心を奪われたか今でも驚くほどに鮮明に思い出す事ができ、それがブルースによるものだと分かった時の嬉しさといったらなかったです。それと同じ音楽をいつの間にか20歳になって、ずっと目指してきたブルースの生きてきたアメリカの大学で聴いているのだと思うと信じられないような気持ちがして胸がいっぱいになりました。

高校生の3年間、「I'm pulling out of here to win」という最後のフレーズを聴きながら穏やかすぎて退屈にしか思えなかった故郷を出て行く事を夢見ていました。18歳の春になるとそれは現実になりました。そして大学生の2年間、やはり同じフレーズを聴きながら今度は自分が育った国を出て行く決意をして今それが現実になっている。この曲を聴きながら、怒りまみれのティーンを過ごして、不条理な孤独を味わい、沢山の夢を見てきて、今私は10代の自分が見た夢の1つを生きているんだとこの曲を聴きながら初めて実感しました。夢は叶うんだと思いました。

授業で先生がブルースについて話した内容:

●1930年代から活躍し、Bob Dylanをも見出したJohn Hammondと契約したこと。
●そのため、最初の2作ではディランのフォロワー的サウンドを求められたこと。
 (先生は『青春の叫び』が好きなこと)。
●しかし、ロックンロールがやりたくて遂にこの曲を収録したアルバム『明日なき暴走』ができたこと。
●導入部はアコースティックでフォーク的でありながら、次第にダイナミックに発展し、フィル・スペクター風のプロダクションに展開し、どんどん形を変える「No chorus, no hook」な曲であること。
●それまでの時代のロックンロールの様々な要素を吸収して取り入れていること。
●歌詞の上では内省的フォークの特徴を保ちながら、ロックンロールしていること。
●「Mr. Blue jeans」というイメージであること。
●authenticityがあると信じられているアーティストであること。
 それ故、同時代のアーティストであるDavid Bowieのようなメイクをブルースがする事は想像もできなかったこと。
●"Born in the U.S.A."をレーガンに利用され、誤解されたこと。
 (それが、John Lennonの「ビートルズはキリストより偉大」発言や、James Brownがブラックパワーの代表者であるというイメージが受け手の勝手な解釈であるのと同じであること)。 などなどでした.。o○


Bruce Springsteen "Thunder Road"

2008-02-20 16:10:16 | Born to Run
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ダーリン 俺がここにいる理由は分かっているんだろう
だからお前は怯え
俺達ももうそんなに若くないかもしれないなんて考えている
少しくらい信頼してくれたっていいんじゃないか
夜には魔法があるんだ
お前は美人ではないが素敵だ
俺にはそれでいい

隠れて自分の痛みについてじっくり考えることもできる
かつての恋人達から十字架を作り
雨の中 薔薇の花を放ることも
この街から救世主が立ち現れるよう祈り
ひと夏を無駄にしてしまうこともできる
俺は英雄なんかではない
それは分かっている
俺に贖いとして差し出せるものは
この汚いボンネットの下にあるだけだ
どうにかうまくやっていくチャンスと共に
なあ、今の俺達は他に一体何ができるんだ
窓を下げ 風にお前の髪をなびかせる以外に


ブルース・スプリングスティーンの代表作であるBorn To Run (明日なき暴走)』(1975)のオープニングに収められたこの"Thunder Road"という曲はファンの中でも抜群の人気があります。私にとってもこの曲はずっと3本の指に入るくらい大切な曲でした。15歳の時に出会って高校を卒業するまで、私はサンダーロードに沿って歩いて来たみたいなものだ、と思います。

この歌の中にはロックソングのプロトタイプとも言えるような要素が沢山あります。ロマンスとリアリティのせめぎ合いや故郷からの脱出というのは多くのロックソングの中で繰り返し繰り返し表現されています。夢は捨てていないし、それを手に入れようとし、それまでのうだつの上がらない自分と決別するために故郷を出て行く。でも、そうしながらも心のどこかでそれがロマンティックに過ぎる考えだと気づいている自分がいるのです。どこかへ行っても自分自身と別れる事はできないし、成功する事は容易ではないからです。たぶんロックが好きな方はみんな何かしら自分にぴったりなそういう曲をお気に入りとして持っているのかもしれません。私にとってその1つがこの"Thunder Road"でした。

高校生の時に歌詞でも詩でも何でも良いから自分の好きなものを持ってきてクラスの前で発表する、という国語の授業がありました。その時に私はこの歌詞の三浦久さんの訳を持って行って自分なりにすごく一生懸命喋ったのですが、ロックとは縁の無い先生から「意味が分からない」と一蹴され、家に帰って泣いた経験があります。自分の言語表現の至らなさのためにこの曲を不必要に傷つけてしまって、とても申し訳なく感じました。今でも私にとって、ブルース・スプリングスティーンについて語る事ほど難しい事はありません。感情が深すぎるあまりにどんな言葉も不十分で軽薄に思えてしまいます。そう思うとこのブログは自分の言葉を見つける作業なのかもしれません。


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Thunder Road Lyrics</embed>

こちらのブログに、"Thunder Road"の歌詞対訳を探しに来てくださる方が多いので、追記します。
こちらの記事には訳の一部しかありませんがここに全訳を載せています。よろしければご覧ください。ご訪問ありがとうございます。