ユタの砂漠の中 ラトルスネイク・ハイウェイで
俺は自分の金を受け取り 町へ引き返す
ウェインズボロ郡境を車で越え
ラジオをつけた 今俺は時間潰しをしているだけ
1日中父親の自動車修理工場で働き
1晩中幻想を追って車を飛ばす
今に俺は主導権を握ってみせる
メインストリートの犬どもが吼える 奴らには分かっている
たった一瞬をこの手に掴む事さえできれば
ミスター 俺は小僧じゃない 男なんだ
そして俺は約束の地を信じている
正しい道を歩むため精一杯の事をしてきた
毎朝起き、毎日働きに行く
だが次第に見通しが利かなくなり 恐怖にさいなまれる
時にどうしようもなく無力に感じ 爆発してしまいたくなる
この町を爆破し 破壊してしまいたくなる
ナイフを手に取り 心臓からこの苦痛を切り取ってしまいたい
何かを始めようと心逸らせる者に出会いたい
砂漠の地平から黒い煙が巻き上がる
俺は荷物を詰め その嵐の中にまっすぐ突き進んでいく
竜巻になり 何もかも吹き倒す
地にしっかりと立つだけの信念の無いものは
吹き飛ばせ 心を引き裂いてしまうような夢なんて
吹き飛ばせ お前を失意に陥れる夢なんて
吹き飛ばせ 絶望と悲嘆しか残す事のない嘘なんて
俺は約束の地を信じている
ENGLISH
</object>
私はアメリカ東海岸に留学中の冬休みに3週間ほどカリフォルニアを1人で旅しました。その中でサンディエゴはクリーヴランドを経由してオルバニーに帰る前の最後の訪問地でした。1人旅は解放感と達成感を与えてくれる一方で、非常に気の張るものです。大学の寮生活のある種の閉塞感から逃れるために出てきたにも関わらず、疲労感と相まって次第に人恋しささえ感じ始めていた頃でした。他所で同い年の息子さんとご両親というコロンビア人家族と懇意になり、彼らとの別れを惜しむ気持ちもありました。予定を変更してロサンジェルスに留まれば、彼らと共に過ごす事ができる筈でしたが、そうはしませんでした。
泊まったのはガスランプ・クォーターと呼ばれるお洒落なお店が並ぶ繁華街です。夕食時で賑わう通りを1人ぽっちで歩いているとだんだんどうして私は1人でいるのか、という事が疑問に思えてきました。ロサンジェルスに残れば良かったかなぁとも思いました。「地球の歩き方」で見たショッピングモールを探していたら道に迷い、人気がない所を疲れた足を引きずり、どこに行っても逃れる事のできない自分自身の性質について思いを巡らせるうちに落ち込みそうになっていました。
その時、道の先から微かに聴こえてきたのがブルース・スプリングスティーンの”The Promised Land”でした。今まで1度もこの曲を自分以外の人がかけている場面に遭遇した事はなく、まるで妙な夢の中にいるような気がし、一瞬耳を疑いました。それでも確かにブルースの声は聞こえてきます。「俺は約束の地を信じている」と。音は確実にアルバム『闇に吠える街/Darkness on The Edge of Town』(1978)に収録されたスタジオバージョンでした。でも、ここでブルースの音に出会った事が何かものすごい奇跡を意味しているような気がして、私はきっと何かあるに違いない、もしかしたらブルースが突然現れてびっくりイベントをやっているのかもしれない、とさえ僅かに期待しながら、音のする方へ急ぎました。それまでずるずると引きずりまわしていた退屈な悩みは霞みました。

早足で道を下り、とうとう開けた所に出ました。ブルースの声はすぐ右手から聞こえてきます。ぐるりと周ってその正面に出るとそこにあったのは1月でも少しも寒くないサンディエゴの小さな屋外人口スケート上でした。何だか拍子抜けすると同時に思わず自分の期待や興奮がおかしくて笑ってしまいそうでした。多分、本当は期待はさほど高くなかったのだと思います。殆ど落胆を感じなかったからです。けれど、一瞬の間味わった高揚感は心地よく胸に残っていました。そして、ブルースが歌うように私は自分のつまらない思いを吹き飛ばしたのでした。
私はそもそも15歳の時からこうしてブルースの声に導かれ、今アメリカにいるのだ。それは約束の地を求めてきた私の行動の結果でもある。そして、ブルースは今でもこうして私は導き、失意から救い出してくれている。それは、さっき考えていた「何かものすごい奇跡」とは違うけれども、何かものすごく幸運で幸福な事だと感じる事ができました。また、この時この曲に遭遇した事を私は運命のように考えずにはいられませんでした。スケート上は1978年よりもずっと後に生まれたような若者達でいっぱいでした。それでも、そこでは”The Promised Land”が流れていたのです。そしてこの日から殆ど丁度4ヵ月後、この曲を歌いながらブルースは私に手を差しのべてくれたのでした。
俺は自分の金を受け取り 町へ引き返す
ウェインズボロ郡境を車で越え
ラジオをつけた 今俺は時間潰しをしているだけ
1日中父親の自動車修理工場で働き
1晩中幻想を追って車を飛ばす
今に俺は主導権を握ってみせる
メインストリートの犬どもが吼える 奴らには分かっている
たった一瞬をこの手に掴む事さえできれば
ミスター 俺は小僧じゃない 男なんだ
そして俺は約束の地を信じている
正しい道を歩むため精一杯の事をしてきた
毎朝起き、毎日働きに行く
だが次第に見通しが利かなくなり 恐怖にさいなまれる
時にどうしようもなく無力に感じ 爆発してしまいたくなる
この町を爆破し 破壊してしまいたくなる
ナイフを手に取り 心臓からこの苦痛を切り取ってしまいたい
何かを始めようと心逸らせる者に出会いたい
砂漠の地平から黒い煙が巻き上がる
俺は荷物を詰め その嵐の中にまっすぐ突き進んでいく
竜巻になり 何もかも吹き倒す
地にしっかりと立つだけの信念の無いものは
吹き飛ばせ 心を引き裂いてしまうような夢なんて
吹き飛ばせ お前を失意に陥れる夢なんて
吹き飛ばせ 絶望と悲嘆しか残す事のない嘘なんて
俺は約束の地を信じている
ENGLISH
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私はアメリカ東海岸に留学中の冬休みに3週間ほどカリフォルニアを1人で旅しました。その中でサンディエゴはクリーヴランドを経由してオルバニーに帰る前の最後の訪問地でした。1人旅は解放感と達成感を与えてくれる一方で、非常に気の張るものです。大学の寮生活のある種の閉塞感から逃れるために出てきたにも関わらず、疲労感と相まって次第に人恋しささえ感じ始めていた頃でした。他所で同い年の息子さんとご両親というコロンビア人家族と懇意になり、彼らとの別れを惜しむ気持ちもありました。予定を変更してロサンジェルスに留まれば、彼らと共に過ごす事ができる筈でしたが、そうはしませんでした。
泊まったのはガスランプ・クォーターと呼ばれるお洒落なお店が並ぶ繁華街です。夕食時で賑わう通りを1人ぽっちで歩いているとだんだんどうして私は1人でいるのか、という事が疑問に思えてきました。ロサンジェルスに残れば良かったかなぁとも思いました。「地球の歩き方」で見たショッピングモールを探していたら道に迷い、人気がない所を疲れた足を引きずり、どこに行っても逃れる事のできない自分自身の性質について思いを巡らせるうちに落ち込みそうになっていました。
その時、道の先から微かに聴こえてきたのがブルース・スプリングスティーンの”The Promised Land”でした。今まで1度もこの曲を自分以外の人がかけている場面に遭遇した事はなく、まるで妙な夢の中にいるような気がし、一瞬耳を疑いました。それでも確かにブルースの声は聞こえてきます。「俺は約束の地を信じている」と。音は確実にアルバム『闇に吠える街/Darkness on The Edge of Town』(1978)に収録されたスタジオバージョンでした。でも、ここでブルースの音に出会った事が何かものすごい奇跡を意味しているような気がして、私はきっと何かあるに違いない、もしかしたらブルースが突然現れてびっくりイベントをやっているのかもしれない、とさえ僅かに期待しながら、音のする方へ急ぎました。それまでずるずると引きずりまわしていた退屈な悩みは霞みました。

早足で道を下り、とうとう開けた所に出ました。ブルースの声はすぐ右手から聞こえてきます。ぐるりと周ってその正面に出るとそこにあったのは1月でも少しも寒くないサンディエゴの小さな屋外人口スケート上でした。何だか拍子抜けすると同時に思わず自分の期待や興奮がおかしくて笑ってしまいそうでした。多分、本当は期待はさほど高くなかったのだと思います。殆ど落胆を感じなかったからです。けれど、一瞬の間味わった高揚感は心地よく胸に残っていました。そして、ブルースが歌うように私は自分のつまらない思いを吹き飛ばしたのでした。
私はそもそも15歳の時からこうしてブルースの声に導かれ、今アメリカにいるのだ。それは約束の地を求めてきた私の行動の結果でもある。そして、ブルースは今でもこうして私は導き、失意から救い出してくれている。それは、さっき考えていた「何かものすごい奇跡」とは違うけれども、何かものすごく幸運で幸福な事だと感じる事ができました。また、この時この曲に遭遇した事を私は運命のように考えずにはいられませんでした。スケート上は1978年よりもずっと後に生まれたような若者達でいっぱいでした。それでも、そこでは”The Promised Land”が流れていたのです。そしてこの日から殆ど丁度4ヵ月後、この曲を歌いながらブルースは私に手を差しのべてくれたのでした。