「次は~とりで~いわ~ とりで~いわ~」
「ネクスト! ストップ! トリデ・・・イワ!!!」
雨のしとしと降る日は、不意にこのアナウンスが脳内で何回もリフレインする。
ネットで調べてみると、あるくくまもんと同じように、この同じフレーズを思い出す人がそこそこいるようで、ちょっとだけ嬉しい気持ちになる。
これは
1991年に放映された、大長編ドラえもん「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」と同時上映された「ドラミちゃん アララ・少年山賊団!」の冒頭のシーンで流れる言葉だ。
セワシくんに呼ばれ、ドラミちゃんが22世紀の道を歩く
駅の巨大なエスカレーターを降りると、21エモンのゴンスケがさりげなく隣のレーンを降りている。
天井には、ドラえもんみたいなのがぐるぐる回っていて
「一家に一台、耳付きスーパードラえもんをどうぞ」と放送が流れている。
ホームで電車を待つドラミちゃんの横で
食べた直後に男の子が爆走する「SUTTOBIフレーク」のCMが流れている。
「手前川駅」からやってきた電車が「花田橋駅」に着く。
電車の中で、冒頭に行った「次は~」のアナウンスが聞こえる。
すると、雨が降ってきて、画面が引いて、22世紀東京が映り、映画の題名が現れる中、右の方で、お店の天井にある野球のユニフォームを着た人形(ホログラム?)がバットを振って、激走して、スライディングをして、またバットを構える姿に戻る。
そんなオープニング90秒のシーンだ。
話のあらすじとしては
セワシが「のび太よりも、もっとダメなご先祖様がいる。ドラミちゃん、過去に行ってそのご先祖様をどうにかしてきて」と言ったので
ドラミちゃんが、ロボットのアララと2人で1580年、戦国時代の日本へ向かう物語だ。
「のび平」「お静ちゃん」「スネ丸」「たけ蔵」といった、それぞれのご先祖様が出てくる。
領主の一人息子であるスネ丸と、平民ののび平、たけ蔵とその仲間たち
スネ丸の家で女中(今で言う家政婦やメイド)として働くお静ちゃんに、ドラミちゃんやアララがかかわって、色んな出来事が起こる。
エンディングを含めて、ほんの40分なのに、2時間モノを見たかのような錯覚に陥る、濃いアニメだ。
なんで、そんな30年以上も前のアニメのシーンを詳細に覚えているかと言うと
当時、テレビ放映された時に、ビデオ録画して、何回も何十回も、何百回も見返していた。
インターネットもDVDもまだ存在しない時代
思い返せば、当時は何度も録画したものを見ていたなぁと。
おかげで、30年以上経った今でも、記憶の奥深くに詳細に刷り込まれている。
2020年代を生きるこども達の感覚で言うと
お気に入りのYoutubeを何度も何度も見る感じかな?
そもそも、今のこども達は同じものを繰り返し見るということは、するのかな?
今度、身近なこども達に聞いてみよう。
さて。
偶然、検索でやってきて、あるくくまもんと同じ感覚を共有してくれる人向けに、ちょっとだけ濃い話をしよう。
半分くらいは見たこともない人にも理解してもらえるように、頑張って補足説明をするつもりだ。
冒頭のドラミちゃんとセワシのシーン
ドラミちゃんが過去に旅立った後に、セワシはドラミちゃんが用意してくれた野菜たっぷりのご飯を食べることになる。
そして、セワシが
「椅子!テーブル!」と叫ぶと
床から椅子が出てきて、壁からテーブルが出てきて、セワシは食べ始める。
当時のあるくくまもんは、未来の世界ではこうやって口にするだけでモノが動くようになるんだなぁと思っていたものだった。
21世紀になって、スマホで音声認識システムは浸透してきたけど、まだ物がスムーズに動くまでには至っていない。
22世紀まで生きられないあるくくまもんだけど、生きているうちに、「椅子!テーブル!」は体験してみたいなぁって思う。
領主の息子のスネ丸
最初に登場した時には、20歳くらいの女中さん5人に囲まれている。
目隠しをしたスネ丸が「どこだ?捕まえてやる」と言いながら、女中さんを追いかけまわしている。
わざと転んで、5人が集まってきたところ、「捕まえた!」と言って、1人の女中に抱き着き一瞬だけ、すっごいエロ目になる。
「どこの中年のおっさんだよ」と今だったらそうツッコミが来るような場面だ。
この時の、スネ丸から逃げるふりをする女中さんのクネクネした動き
そして、中盤、両親が出かけて一人で食事をすることになって暴れるスネ丸を見て
およよおよよと、「あらあらあら」と、クネクネする女中さん。
このクネクネの動きは、何度見ても笑いしか起きなかった。
領主の館に忍び込み、蔵にある大量の米俵を盗んできた、のび平たち
秘密基地の砦に戻ってきて、米を炊いて
茶碗に超山盛りになった白飯を3秒で食べきる姿。
あれは、何度見ても涎しか出てこない。
「あぁ、白飯のうまさ・・・・」
あの場面を見たから、あるくくまもんが太ったのではない。
あの映画を見る前から、あるくくまもんは、くまももももーんな体型だったのだ。
そんな姿を見て、スネ丸が
「おまえらの食べるものなんて、きっとバッチイ!バッチイ!ブワァァァァッチイイイイイ!に決まってるー!!」
あのスローになって、「音声を変えています」で出てきた元犯罪者みたいな声が込みで出てくるバッチイ
あれは何度見ても面白い。
でも、そんなスネ丸が、ふんどし一丁の姿になって、みんなと農作業をして、できたトマトを食べて、幸せな気持ちで眠りにつく。
そして、その一連の流れの中でも、未来から来たドラミちゃんは、何も言わずに見守り続け、必要な時だけひみつ道具で支援をする。
大人になった今だと、その姿が
「これは、先生だ!理想の先生の姿だ!ドラミちゃんじゃなくて、ドラミ先生や!!」
って思うような姿に見えてくる。
でも、植えた直後に作物ができる経験をしちゃったら
今後、数か月かけて作物を育てることに苦痛を感じるようになっちゃうんじゃないかって心配をしたくもなっちゃう(笑)
その後、帰宅してスネ丸が誘拐されたことに気付いた領主が起こり
翌日、山賊の砦に向かうんだけど
のび平が乗った「一家に一台耕作くん」が、領主をひき殺す寸前まで行ったんだけど
崖の上から猛スピードでスネ丸が下りてきて、のび平がすんでのところでレバーを操作して止まるんだけど、その時の誤操作で耕作くんが暴走を始める。
最初に見た時は、自分の命を懸けてでも父親を守ろうとするスネ丸のカッコよさが目立っていたけど。
何回も繰り返してみていると
「スネ丸、崖を下りるの、速すぎだよ(笑)」
「耕作くんが山を動いている向きと、のび平が木に当たっている向きが毎回逆なのはなぜだ!」
という2点が気になりすぎて笑いが止まらなくなる。
大雨によって領主とスネ丸父子が、崖から落ちそうな大木の上に取り残され、のび平がアララを使って(勇気の素=メガネをもらうまではできなかった)ターザン行動で2人を助けるという・・・
アメリカ映画さながらの緊迫した場面なんだけど。
のび平の両親が「のび太!じゃなかった、のび平!」という小ネタをわざわざ入れてくる。
あのセリフも忘れ難い。
そして、ドラミちゃんが「てるてるぼうず」の原型になったというオチ。
純粋な子どもだったら、本気で信じこんじゃいそうだ(笑)
そして、焼き魚の焦げたにおいと煙に包まれながら、エンディングテーマが流れてくる。
「ドラミ、ドラミ、ドラミドラ、ラララ、ラララ、ミミドラミ~♪」
音感のないあるくくまもんは最初、あれって歌詞と音階の両方が「ドレミファソラシド」で合わせているのかもって思い込んでいた。
それが違うって知ったのは、実は最近になってから(笑)
あるくくまもんの好きなドラえもんの歌ランキング2位の、ドラミちゃんの歌を聞きながら、エンディングテーマを最後まで聴く。
22世紀の東京の超高層ビルのてっぺんが見え始める。
そして、夜だったはずの東京の姿が、次第に明るくなり始める。
真っ黒な雲の中から、さりげなく太陽が光を出し始める。
冒頭で、「明日ピクニックなのに、雨が降るなんて・・・」という会話がなされていたけど。
無事、セワシは晴れた空の中、ピクニックに行ったんだよと言う暗示になって番組は終わる。
さっきも言ったけれど、たった40分なのに、120分くらい見たようなお腹いっぱいの気持ちになれる不思議なアニメ。
今は、youtubeでさりげなく見られるけれど。
いつかDVDを買って、自分のこども達に見せたいなと思っている。
まぁ、こどもいないけど。
この記事を書くにあたって、ちょっと調べてみたけど。
色んな人が既に、あの40分の動画を分析していて
あるくくまもんと同じような気持ちを抱いている人が一定数いて、嬉しいんだけど。
冒頭に数秒だけ映る「花田橋駅」の名前
過去に行ったドラミちゃんが、おしずちゃんと話をした橋の名前が「花田橋」と3秒くらい映っている。
これは知らなかった。
そして、「砦岩」は、タケ蔵たちがいる砦のことを意味しているらしい。
22世紀では「花田橋駅」から隣の「砦岩駅」に移動したドラミちゃん
16世紀では「花田橋」を通って「砦」に向かったドラミちゃん
そんな細かい設定まであったとは、全然知らなかった。
きっと、まだまだ気付いていない、細かな設定や表現があるんだろう。
あるくくまもんにとって、このアニメはある意味、大切な思い出の作品
きっと、ボケて過去の記憶を思い出せなくなるようになるまでは、絶対に忘れられないし、忘れたくないもの。
きっと、こういう体験があるから、つらいことがあっても生きて行けるのだろう。
今のこども達や
今の若者たちにも
あるくくまもんんとっての、アララ・少年山賊団のような、大切なものがあってくれたらいいなぁと思う。