新型ウィルス騒ぎが事業の先行きに影を落として居るので取り敢えず不要になったとの理由で、就活生への採用内定取り消しが出ている。職安などでは、内定取り消しをしてはならないと、企業に言って居る。
其れを無視するのは背に腹は変えられないからか内定を出すような大企業としては、職安の意向など気にならないからか。
小企業では、内定などと悠長な事を言って居ては袖にされそうで、到底言って居られまい。
私は予て此の「内定」が虫唾の走るほど嫌いであった。
「決めるのは此方だ」との居丈高な意識が感じられる。「大勢の応募者の中から選んで採って遣るのだ」という恩着せがましさが見える。契約や取引などは、人間の社会制度の中でも最も基本的で典型的なものの一つである。そういう性質を持った企業の従業員の採用活動を、敢えて「内定」などという名を付けて自ら曖昧なものにしてしまって居る、潔くない。
大企業なら社会的責任も相応に大きかろう。契約も取引も率先して公正なものにすべきである。
又内定と云うなら、まだ外部に居る応募者には伝えざるべきである。
抑も内定などという、制度とさえ呼べぬ制度に問題がある。採用とも不採用ともまだ確かに決まった訳では無い。併し全く決まって居ない訳でも無い。こんな曖昧模糊として摑み所の無いものに、少なくとも契約や取引と云った大事な場面で存在する意義も理由も在りはしない。
企業側が、自身の都合で持ち出してのさばらせているこんな妖怪、応募者は脳裡から払拭するよう努めるが良かろう。