私は皇室に属してはいないので、皇室に然程の関心を持っていない。
併し人間界には属しているので、人間には強い関心を持っている。
近頃TVを見ていると、時節柄皇室に関する番組が多い。
その中で結構耳に付く言葉がある。「天皇たるものが、公衆の中に入って床に膝を付けたりしてはいけない」と云うような意味のものである。
この場合、耳に障る結果、耳に付くのである。
こういう事を言うのは恐らく、天皇や皇室に強い関心を有する人達である。而してそのような人達の関心の殆どは、敬愛と言い換えても良かろう。
敬愛は一種の愛である。而して愛の持ち主は、その対象の総てを、無条件で丸ごと受け入れるのが自然な姿であろう。姑根性の差し出口宛らに、対象に注文を付け過ぎると愛は破局しがちである。
況して敬う相手に諫言は扨置き、指図がましい注文を付ける姿は、不自然この上なく傍目に映る。
敬愛する相手の言動なれば、率直に受け入れ鑑とする姿勢こそが、自然なものに思われるのである。
敬愛と難詰は、矛盾していると云っても良い程である。
尤も人間の在りようの矛盾しているのは寧ろ自然な姿であるのかも知れない。
人間存在の如何に矛盾しているかを改めて熟、思い知らせられている昨今である。