最近奇妙な言葉をよく聞くようになった。集団的自衛権の対義語として使われる「個別的自衛権」という言葉だ。
困ったことに「集団」という言葉の対義語がなかなかはっきりしない。やっと引っかかった、『反対語大辞典|対照語・対義語の検索』によれば、
「集団」の対義語は「個人」である。
『対義語・反対語辞典』および『対義語検索 - Weblio類語辞典』には、該当するものはない。
実はそもそも国家そのものが集団の一種である以上、言葉通りに「集団的自衛権」を放棄してしまった場合、「個人的自衛権」しか国民には残されていないという、空恐ろしい現実を国民に突きつけることになる。
「日本国憲法」下では、あながち冗談では済まされない現状ではあるが、一方「個別」の方はどうであろうか。
『反対語大辞典|対照語・対義語の検索』によれば、
「個別」の対義語は「一括」、「包括」、「合同」である。
『対義語・反対語辞典』および『対義語検索 - Weblio類語辞典』によれば、
「個別」の対義語は「全体」、「総合」である。
決して「集団」ではない。つまり、「個別的自衛権」なるものの対義語は「全体的自衛権」とか「総合的自衛権」であり、現実に存在するとすれば、国連のようなものがあらゆる軍事力を持って自衛権を行使する状態であり、いったい何から自衛するのかよくわからない。いや、ありがたいお話ではあるが。
以上のように言葉通り「個別的自衛権」を「集団的自衛権」の対義語として使うとなぜか不思議な世界が広がってしまう。何がおかしいといえば、やはり、「集団」の対義語に「個別」をあてたのが間違いではないのか。例えば、ネットの辞書にはないが、「集団(的)行動」の対義語は「単独行動」だと思う。「集団的自衛権」とは、Wikipediaによると
「他の国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である」。それに対し「個別的自衛権」とは、国家はその国家だけで自衛し、他国が攻撃を受けても助けないという意味であるから、「単独自衛権」という言葉をあてたほうが適当ではないか。
当然、「単独自衛権」という言葉を使うと、日本一国で場合によっては世界を敵に回してどうやって日本を守り抜くのだろうという、不安という名の現実を国民の皆様に直球で与えてしまうのはほぼ確実であり、必然的に軍事費がうなぎのぼりになることも求めざるを得なくなる。ちなみにそうしなければ、自然に国が亡ぶだけである。少なくともスイスのような国民皆兵は必要だといった議論は、当然「単独自衛権」について回るはずである。しかしながら、「個別的自衛権」で対応可能とか主張する人たちは、暴力上等でむきむきマッチョな完全な自由主義者ではなく、平和を愛するらしい人たちである。それどころか、率直に申し上げて、「自衛権」そのものを否定している人々といっても過言ではない。したがって、上記の議論を起こさないようにするために、「個別的自衛権」という言葉が巧妙に選ばれた疑いを持たざるを得ない。非常に小狡い方法である。よって成敗、言葉は正しく使うのだ。
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