学校法人「森友学園」をめぐる決裁文書の改(かい)竄(ざん)は、中央省庁の“代表選手”財務省が起こした問題だけに霞が関全体の信頼が失墜しかねない。同省は財政健全化計画の遂行や消費税増税といった重要課題に取り組んでいるが、生半可な改革では国民からの信頼を取り戻すことは不可能。国税庁を本省から切り離す「解体論」すら浮上し始めた。
「財務省と行政全体の信頼を損なった。二度とこうしたことが起こらないよう大臣としての職責を全うする」。麻生太郎財務相は4日の記者会見で、こう述べた。
予算配分権と徴税権を握る財務省は「最強官庁」として行政機関の代表のようにみられてきた。その代表が国会答弁とつじつまを合わせるため公文書の改竄や廃棄を行ったことで、「『役所もウソをつく』という意識を国民に植え付けた。罪は重い」(経済官庁関係者)との批判は強い。
また、財務省は今回の改竄や廃棄が「当時の理財局(だけ)で行われた」(麻生財務相)と結論づけた。こうなると問題になるのは財務省の内部統制のあり方だ。理財局という一部局の独断による重大な不祥事を許したことになり、組織運営の甘さへの批判が強まるのは必至だ。
批判にさらされる財務省は4日、再発防止策として(1)国有財産の管理処分手続きの見直し(2)公文書管理の徹底、電子決裁への移行加速化など(3)コンプライアンス、内部統制の総合的な態勢整備-を挙げた。
ただし財務省が具体策を示したとは言いがたい。たとえば(3)に関しては「外部の専門家の意見を参考にしつつ総合的な態勢整備を進める」との抽象的な文言にとどまり、信頼回復を真剣に考えているのか疑念が高まる可能性もある。政府幹部からは「政権に迷惑をかけたのだから、かわいそうだが力が弱まるのはやむをえない」との声も出る。
こうしたなか“懲罰”として財務省を解体し、権力をそぐべきだとの意見も出始めた。徴税権を持つ国税庁を分離し、年金などの徴収機能と一体化した「歳入庁」を作るというものだ。念頭には20年前、接待汚職事件を機に旧大蔵省から金融監督部門を切り離し、「金融庁」が創設された歴史がある。
先進国最悪といわれる財政の健全化に向けて財務省はリーダーシップを発揮すべき局面にあるが、逆風はますます強まりそうだ。(山口暢彦)
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