広域被害をもたらす火山の大規模噴火について、内閣府の検討会(座長・藤井敏嗣=としつぐ=東京大名誉教授)は16日、監視体制の強化や避難計画の早期策定などを盛り込んだ初の提言をまとめた。東日本大震災をきっかけに、富士山を含め全国で火山の活動が活発化する恐れがあるという。政府は提言を踏まえ、今年度中にも対処方針を策定する。
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検討会は、溶岩や灰などの総噴出量が1億~数十億立方メートルの大規模噴火を想定した。1億立方メートルは東京ドーム約80杯分に相当する。溶岩流や火砕流による被害が生じるほか、火山灰が1~2センチ積もると道路通行に支障が生じるなど影響が大きい。しかし、気象庁が常時監視の対象としている47火山のうち、10火山では周辺自治体がハザードマップ(災害予測地図)を整備していないなど対応が遅れている。
提言では、ハザードマップの早期策定を求めるとともに、大噴火の可能性が高まった場合に迅速に対応できるよう、知事や市町村長に避難指示を発令させる権限を持たせるようにした。
観測体制では、複数の機関に分散している専門家の知見を活用できる仕組みの構築を検討するよう求めた。さらに、火砕流や降灰の発生直後は住民の一斉避難は困難になるため、状況に応じて避難対象地域を順次拡大し、円滑な避難誘導が行えるよう訴えている。それに備え、避難手段の確保や交通規制の方法を検討しておくべきだとした。
藤井座長は「日本は火山大国だが、防災対策が遅れている。富士山でも現在は噴火の前兆はないが、300年間、噴火がない。いつ起きてもおかしくない」と話した。【渡辺諒】
【ことば】日本の活火山
火山噴火予知連絡会は「過去1万年以内に噴火した記録があるか、現在煙を上げたり、ガスを出したりしている火山」と定義し、110ある。特に活動が盛んで気象庁が常時観測する47火山のうち、富士山や阿蘇山など29火山では噴火警戒レベル(5段階)が運用され、レベルごとに入山規制などがある。総噴出量が10億立方メートルを超える大規模な噴火は、1914年の桜島以来なく、噴火活動が比較的落ち着いている。
◆約300年間に日本であった主な噴火◆
火山名 総噴出量(億立方メートル)
1707年 富士山(静岡・山梨・神奈川)17
1739年 樽前山(北海道) 40
1741年 渡島大島(同) 1.1
1769年 有珠山(同) 1.1
1777年 伊豆大島(東京) 3
1783年 浅間山(長野・群馬) 7.3
1792年 雲仙岳(長崎) 3.6
1853年 有珠山 3.5
1914年 桜島(鹿児島) 21
1929年 北海道駒ケ岳 3.4
1944年 有珠山 1.1
1990~95年 雲仙岳 2.7
※噴出物は溶岩や火山灰など。量は見かけの体積で表示。
(内閣府の資料より)
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