クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

佐藤俊介 バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲@2023.3.15 所沢キューブホール

2023-03-18 15:09:43 | 演奏会感想
2023所沢バロックシリーズ第3弾は佐藤俊介氏登場。


1月は優人さん、2月はトンさんのチェンバロだったが、今回はヴァイオリン。
改めて感じたのは、ヴァイオリンという楽器の凄さ。
あんなちっぽけな楽器なのに、一つの音だけで比べると、チェンバロをはるかに凌駕する訴求力がある。
(だからチェンバロは10本の指でたくさんの音を出して勝負するしかない。)
チェンバロは弦を弾いて音を出す。
ヴァイオリンは弦を擦って音を出す。
この違いが大きくて、擦るから音を引き延ばせるし、微妙な強弱や揺れもつけられる。
擦って音を出すというやり方は偉大な発明ではないか、という気がしてきた。

さらにヴァイオリンの音が心に響くのは、その音が人の声に近いからかもしれない。
人の聴覚は風の音とか虫の声とか自然界のいろいろな音を聞き取ることができる。
しかし、野山を歩いていて、もし赤ん坊の泣き声が聞こえたら、誰だって耳をそばだてるに違いない。
これは人の本能に組み込まれていて、ヴァイオリンの音はそこを突いてくるのだ。

もう一つ、ヴァイオリンとチェンバロの違いは奏者の向き。
聴衆に対してチェンバロ奏者は横向きだが、ヴァイオリンは正面を向いている。
向かい合わせの俊介氏が全身で表現しているのを見れば、それはもう迫力です。
こういうヴィジュアル的な訴求力も演奏の一部かも。
(ピアノでもグールドみたいにやれば、スゴいヴィジュアル効果がありそうだが。。)

演奏順はやはりシャコンヌがビッグなので
 1番→3番→2番 (それぞれソナタ→パルティータ)
でしたが、最後にシャコンヌが終わったときは聴いているだけなのにヘトヘト。
家で聴くときはせいぜい1曲か2曲だから、6曲通しで聴くには体力が必要である。
もちろん演奏している俊介氏は100万倍以上のパワーを発揮しているわけで、ただただスバラシイ。

ついこの間は現代のルイ14世になり、今日はケーテン公、と庶民が王侯貴族になれるのはいい時代だ。