茜ちゃんの生命科学入門
細胞生物学&脳科学 -40
もっと銃を!
全米の学校に武装警官配置を訴えるNRAのラピエール副会長と、抗議する活動家
「News Week」に掲載された記事。日本はおろか文明国では考えられない事がアメリカの地で起こっている。
銃支持派が導く被害妄想な未来 When Gun Nuts Write Gun Laws
「悪人は善良な人が持つ銃を、非合法かつ暴力的に奪い取る。だから法律で銃の所持・購入を規制しても無駄だ」・・・とラピエールは論じる。
「銃による殺人の大半は、衝動的な犯行だ。オーストラリアでは、銃規制の強化で銃犯罪が大幅に減ったことが分かっている。コロンビアの首都ボゴタでは、一般人の銃所有を禁じた結果、銃による死亡者が58%も減ったという。手元に銃がなければ死者は減る。明白な事実だ」・・News Week
文明化社会のアメリカの中にも、このような被害妄想に陥ったような組織の幹部が存在し、且つ彼らがロビーストとして、議員達を操っているのも事実です。これではイタチゴッコで、何時果てるともない銃撃事件が展開されるでしょう。
この幹部が本心から述べているかどうかは、筆者には分かりませんが、もしそうだとしたら精神疾患を疑いますね。彼の子供の時代に何か恐ろしい経験をしているのでしょうか。アメリカよりも広大な面積を有し、同程度の人口を抱えるロシアでこのような事件は余り発生していないと記憶しています。
長い時代の中でアメリカ自身が国として成長する中で育んで来た負のジレンマなのでしょうか。国の持つこころの中の病根なのでしょう。まだまだ、南北戦争の意識がアメリカ人の心の中に、くすぶり続けて居るのでしょうか。
「自閉症の子どもが大人になるとき」
* 橙色は「ウタ・フリスの自閉症入門」の文章です
サヴァン症候群
先回から<サヴァン症候群>についても、記述し始めました。
サヴァン症候群にしてもアスペルガー症候群にしても、HPなどの情報の中にはその特異的な才能の部分だけを取り出して、賛美しているかのようなものも沢山見受けられます。しかし、それはある一部分を取り出して見ているだけで、全体像を見ると精神的疾患の状態がはっきりと実感できるのではないでしょうか。この部分を勘違いをしてはいけないと考えます。
先回は<レインマン>を取り上げました。一般的な情報(HPも含む)では、レインマンは<サヴァン症候群>を取り扱った映画であると言う前提で記事を書いております。しかし、「ウタ・フリスの自閉症入門」では、文章の中では<サヴァン症候群>という記述(単語)はありません。「サヴァン能力」としています。
長崎大学医学部精神神経科学教室で開催されている、シネマサイキアトリーの中で<レインマン>が取り上げられていますが、不思議な事に<サバン症候群>という用語が出てきません。ここではただ<自閉症>、<発達障害>という医学用語が出てくるだけです。
* シネマサイキアトリー 長崎大学医学部精神神経科学教室で開催されているもので、教育を中心とした教室運営が目標である当教室では、精神疾患への偏見を是正することを目的として、「シネマサイキアトリー」を開講しています。ここでは、精神障害をテーマとして映画を鑑賞したあと、症状を検討しながら討議しています。こうした手法も用い、精神疾患への理解を深めていきます。
関連する事ですが、<アスペルガー症候群>なる医学用語も、世界保健機関・アメリカ・日本などにおける公的な文書では、自閉症とは区別して取り扱われ、アメリカ精神医学界の診断基準(DSM-4-TR)では、アスペルガー障害と呼んでおります。
前にも記述しましたが、日本国内でも政府と医学会では、用語の取り扱いに微妙な違いがあり、混乱をしてしまいそうです。いずれ、統一されるでしょうが、このような事柄を読者の方も心得て置かれたほうが良いと思います。
ダスティン・ホフマン
それでは今回は上記の 長崎大学医学部精神神経科学教室の講義を見てみましょう。
* 以下は長崎大学医学部精神神経科学教室のシネマサイキアトリーを典拠としております。
A・ 映画の内容
「米西海岸のロサンゼルスで車のディーラーをしているチャーリー・ハビット(トム・クルーズ)は事業がうまくいっていません。そんな中、絶縁状態にあった父親が亡くなります。借金に追われる彼にとって、父親の遺産は願ってもないことです。しかし、贈られたのは一台の車とバラの木だけ。遺産の300万ドルは長年、病院で暮らしている兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)へ。
チャーリーは遺産目当てで知的障害の兄を米北東部シンシナティの病院から連れ出し、車でロサンゼルスに向かいます。チャーリーは当初、自閉症をただの知恵遅れと思っていましたが、彼と行動を共にするうちに、それとは全く異なることを知ることになります」
以上が大まかなストーリーです。最後は兄弟愛、人間愛が醸成されてきて、最後はレイモンドは病院に戻って行くという、ハッピーエンドストーリーで終わります。
B・ 発達障害について
自閉症は・・・ 1・ 相互対人関係の質的異常 2・ コミュニケーションの質的異常 3・幅が狭く反復的・常同的である行動・興味・活動のパターン―の三つの領域の障害でまとめられた発達障害の総称です。
「症状には幾つかの特徴があり・・・ 1・ 他者との情緒的接触の欠如 2・物事を常に同じようにしようとする強い欲求 3・ 言葉がない、あったとしてもおうむ返しや他者には通じない独特な言葉を作るなどコミュニケーションに役立たない言葉の使い方 4・ カレンダー計算などの特殊な領域での優秀な能カ―などです」
以上については、既に<ウタ・フリスの自閉症入門>で、記述してきましたとおりです。
「チャーリーは何度もレイモンドに話し掛けますが、レイモンドはそれに答えず、まるでチャーリーがそこにいないかのように振る舞ったり、ある番組のせりふを意味もなく繰り返したりして、コミュニケーションが成り立ちません。レイモンドは独自の生活リズムや行動様式を持ち、それが狂うと奇声を上げ、パニックを起こします。
独特な知覚(身体的接触・音・光など)の過敏さも持ち、体に触られることを極端に嫌がったり、警報機の音や救急車のサイレンなどの音に混乱を起こすこともあります。車で移動中、レイモンドは流れる風景でなく、橋や電柱で変化する光や影に注目している様子が分かります」
レイモンドの行動を纏めておりますが、自閉症の特徴を良く示しております。
以前ご紹介したアメリカの女性科学者・テンプル グランディ博士も、かなり長い間自分の身体に接触される事を大変嫌がり、自ら器械を設計して、それを使って訓練して矯正したことを語っています。面白い事に牛の牛舎にそれを使用すると、牛達に無意味な刺激から解放させる効果があることを実証しております。
この辺りは興味のある現象ですね。
次に、<特異な才能発揮>について、論じています。
「映画の中でレイモンドは特異な才能を発揮します。人類の歴史の中で、彼のような才能の持ち主が科学・芸術の分野で大発見・発明をしていることに気付かされます。時として情報が創造性に邪魔なもの、雑音になってしまうことがあります。他人の心を読み過ぎることは、物事の本質を遠ざけるのかもしれません」
上記の例の・テンプル グランディ博士はアメリカの畜産業界の2/3の施設の設計に携わり、講演や著作活動で大活躍をしているそうです。しかし、それでも尚相手の感情を読み取る事が苦手だそうです。良い面を充分に伸ばし、弱点を自ら率直に認識し、世界に貢献しているということですね。
最後に、医学部の方はこのように結んでおります。
「自閉症を取り扱った映画は幾つかありますが、この映画には演出的にも自閉症としてのうそがないような気がします、それが作品の芸術性を一層高めていると思います」
長崎大学医学部では<サヴァン症候群>という特別な疾患として扱うのではなく、自閉症の特徴的な部分・・特異な才能発揮・・として、扱っているようです。<サヴァン能力>ということでしょうか。
では、次回は主人公レイモンド役の実在した人物、<キム・ピーク>について、さらに解剖学的な所見も見ながら、考えて見ましょう。