アイヌ民族関連報道クリップ

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アイヌの人たちは先住民族(朝日新聞)

2008-06-25 00:00:00 | アイヌ民族関連
アイヌの人たちは先住民族
2008年6月25日


「アイヌの人々を先住民族として認めること」を求める国会決議が採択され、会見するアイヌ民族の団体「北海道ウタリ協会」の人々=6月6日、衆議院議員会館で(ウタリとはアイヌ語で「同胞」) ジャン: 国会でカラフルな衣装を着た人たちが、手をふって笑っていた。泣いていた女の人もいたわ。

 神元記者: アイヌの人たちだね。アイヌの人たちを、北海道などにずっと昔から住んでいる「先住民族」と認める国会決議が、6月6日にされたんだ。

 ケン: 国会決議って?

 神元記者: 簡単に言うと、国会での決めごとだよ。今回は衆議院と参議院の両方で決議されたから、すべての国会議員が、アイヌの人たちについての決めごとを「いいですよ」としたわけ。

 ポン: どんな決めごとだったの?

 神元記者: 一つは、アイヌの人たちが北海道にはるか昔から住んでいて、自分たちの言葉や宗教、文化があるということを認めること。もう一つは、専門家の意見をよく聞き、アイヌ政策をさらに進めることだ。アイヌの人たちがかなえてほしいとうったえていたんだ。

 日本は「先住民族という言葉の意味が国際的に決まっていない」といった理由で、アイヌの人たちを先住民族と認めていなかった。

 ケン: なぜいま、この決めごとができたの。

 神元記者: 7月に北海道洞爺湖サミットがある。このテーマの1つが環境なんだ。環境とアイヌの人たちは深い関係がある。

 ケン: どういうこと?

 神元記者: もともとアイヌの人たちはサケやクマなどをとって生活していた。カムイ(アイヌの言葉で神の意味)がそれらの姿に変身していると考えてきた。自然の中で暮らす生き物をとって、ていねいにあつかったんだ。サミットを北海道で開くのに、アイヌの人たちのうったえを無視することはできない、という意見が出てきたんだ。

 ポン: それだけが理由?

 神元記者: いや、2007年9月、国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が出て、日本も賛成した。これがアイヌの人たちを後押しした。先住民族に認められる権利や自由を定めているんだ。「土地から無理やり移転させられない権利」とか「国内で差別なく教育を受けられる権利」なんかがある。無理やり取り上げられた土地があったとしたら、損害をお金などでつぐなってもらえる権利もある。

 ケン: へえー。

 神元記者: アイヌの人たちは「自分たちが先住民族と認められれば、いろんな権利を手にできるかもしれない」と思った。だから宣言が出て、活動は勢いづいたんだ。アイヌの人たちは、北海道だけでざっと数万人、北海道以外に数千人いると言われている。

 ケン: いつごろから日本にいたの?

 神元記者: 700年前には、北海道や東北北部、それからサハリン(樺太)や千島列島に住んでいたといわれている。北海道にはカタカナの地名が多いけど、あれはアイヌ語の名残だよ。でもアイヌの人たちは苦労したんだ。今から100年以上前の明治時代、アイヌの人たちに関係する政策がたくさんつくられた。アイヌの人たちがアイヌ語ではなく日本語を無理やり使うようにし向けられたし、受け継いできた伝統文化や習慣も禁止された。無理やり住むところをかえさせられた。

 ポン: 大変だったんだね。

 神元記者: いまから22年前の1986年、当時の中曽根康弘首相が「日本は単一民族国家」と言ったんだ。アイヌの人がいることを無視しているようだね。その後、「先住民族と認めてほしい」という声がいっそう大きくなったんだ。

 ケン: これからどうなるのかな?

 神元記者: 北海道知事や大学の先生たちが集まり、「アイヌの人たちにどんな政策が必要なのか」を話し合っていく予定。アイヌの人たちはこうした場に参加できるよう求めているんだ。アイヌの人たちの多くは生活が苦しい。少しでも生活ぶりが良くなる国の政策実現を期待している。


●きょうのポイント

 ▽「アイヌの人たちを先住民族として認めること」が、国会で決まった。アイヌの人たちのうったえを認めた国会決議。

 ▽アイヌの人たちは今から700年前ごろから北海道などに住んでいる。明治時代以降、土地を取り上げられたり、独自の言葉や文化を学べなくなったりする政策がとられてきた。

 ▽北海道洞爺湖サミットや2007年の「先住民族の権利に関する国連宣言」が追い風になり、今回の決議が実現した。


記者:神元敦司(朝日新聞北海道支社報道センター)

提供:朝日学生新聞社

なかのひと


【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】アイヌの「強制移住」ルートをあるく(2)(JANJAN)

2008-06-25 00:00:00 | 事件・差別問題・領土問題など
【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】アイヌの「強制移住」ルートをあるく(2)
Esaman2008/06/25
いろいろなことについて、みんな『知っている』とはいいますが、実際にやったことのある人って少ないですよね?今回のウォークでも、それを痛感しました。知識として知ることと、実際に歩くことは、まったく違うものです。

http://www.news.janjan.jp/special/0806/0806240504/1.php

 【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】アイヌのたどった「強制移住」ルートを歩くの続きになります(写真はアプカシのホームページより)。

Q: ウォークの様子はどうですか?
A:今日(21日)は、対雁(ついしかり*1)でイチャルパ(*2)を行います。ウォークの参加者は、2人増えて、1人減って、現在13名です。

 歩く行程は最後の部分に入っていて、すでに市街地に入っています。強制移住の道にそって、川沿いを歩くことになります。市街地で交通量も多いので、車に気をつけながら歩くのが大変です。今まで歩いてきたところは、山や川がほとんどでした。それはそれで大変な道のりでしたが、市街地に入ってくると、違う大変さがでてきます。今日、明日とイベントの日で、23日からは、最初のほうで一緒に歩いてくれた花崎さんをはじめ、このウォークを応援してくれている、色々な人たちが駆けつけてくれる予定です。

Q:大変なことはないですか?
A:とにかく車が怖いです。いままで歩いていた場所も、人はいないのに車だけは通っていて大変でした。歩いている人は、まず居ないようなところですから、その車もとてもスピードが出ています。次に市街地に入ったら、今度は車の量が多くて大変でした。本当に車社会なんだなと思います。あとは、歩きながら最終日のお祭りのオーガナイズもしているので、その調整で大変です。出演者やマスコミなどから、どんどん電話がかかってきます。参加者は多いですが、コアスタッフも少ないので、一人の仕事量がとても多くなってしまいます。歩くことに専念できないのが一番辛いです。最近は、歩いている間は携帯に出なかったりします(笑)

Q:これから参加したい場合はどうすればよいでしょうか?
A:現在のウォークは市街地なので、交通量の多い道を大勢で歩くのは危険もありますし、街中を歩いても、あまり楽しくないかもしれませんね。最終日に予定しているお祭に参加するのがよいかもしれません。

Q:それはどんな祭りなのでしょうか?
A:廃校になった小学校を借りて開催します。色々な人たちがやってきてくれます。とにかく楽しいと思います。でも、企画している自分自身も『架空のイベント』を準備しているような感じがしていて、どういうものになるのかは、やってみないとわからない部分があるので、うまく説明できませんが、とにかく今までにない、楽しいものになると思います。最終日には、おばあちゃんも駆けつけてくれる予定です。

Q:ウォークを通して再発見したことはなんですか?
A:いろいろなことについて、みんな『知っている』とはいいますが、実際にやったことのある人って少ないですよね?今回のウォークでも、それを痛感しました。知識として知ることと、実際に歩くことは、まったく違うものです。380kmを全部歩くことによって、見えてくるものがあります。世の中には、理屈ではわからないものがあります。机の上だけでは決して理解できないものがあります。強制移住の道のりを、実際に歩いてわかることがたくさんあります。いまも歩いている最中なので、言葉で説明するのは無理ですが、とにかく、体で覚えることはとても大切です。いくら知識があっても、実際にやったことがあるとないとでは、説得力に違いがあります。多栄子さんも、お祭りの打ち合わせをしつつ歩く、という、なんだか大変なことになってきているようなので、当初の予定のようにマメに電話で取材、というわけにはいかなくなってしまいましたが、ウォークは順調なようでよかったです。

 お話でも出てきていましたが『実際に経験することの大切さ』ということでいえば、自分自身にも当てはまることがいくつかあります。アイヌの歴史や言葉、いろいろと『勉強』をしているわけですが、やはり勉強しているだけでは、なにも身につかない、と思うときがあります。いろいろな事実を知ることは大切なのですが、それはあくまで、整理のために必要なことであって、大切なのはどう実践するか、どのように『説得力』をもつか、ということなのではないか、と思います。

 今回のウォークについて、本日(21日)、対雁でイチャルパを一緒に行い、26日には、カラフトアイヌたちの墓地のフィールドワークを行う予定の、小川隆吉エカシ(*3)にも、お話を伺いました。隆吉さんは、アイヌ民族共有財産裁判の原告団長の方で、樺太アイヌの強制連行についてのフィールドワークなどを長年行ってきた人です。エカシの人柄が出ていると思うので、やり取りをできるだけ残して掲載します。

Q:今回、過去にアイヌ達が強制移住されたルートを歩こう、という企画について、どう思われますか?
隆吉さん:今回のランナー(実際にはウォークです:Esaman注)は、画期的なことだよ。行動方針、行動内容、企画内容、すべていい。隆吉は、賛成だよ。

Q:隆吉さんも、フィールドワークを行っていますね。やはり実際歩くことは大切でしょうか?
A:そのとおり。歩くことは大切だ。勉強だけじゃね、わからないことがたくさんあるからね。僕もね、フィールドワークで人をたくさん連れて、何度もやったよ。何度も何度も。北大のね、人骨倉庫とね、昔、人骨が放置されていた建物の前にね、人を連れて行くんだ。あとね、対雁。墓地のあるね、昔のアイヌたちが先祖たちがね、死んで埋められた場所にね、いま発電所が立っているんだよ。そこにね、人を連れていくとね、わかるんだ。大きな立派な墓石がね、たくさんたっている。でも立派な墓石は、アイヌのじゃないんだ。歩かないとね、行かないとね、わからないんだよ。

Q:隆吉さんのご記憶では、このように強制移住ルートを実際に歩こう、という人は、いましたか?
A:……ノー。ノー。ノーだよ。そんな人は、いなかったな。自動車でいったり、自転車で行ったりした人はいたな。地名の調査をしたり、先祖の歩いた場所を確かめようとかね。昔のアイヌたちがつけた地名はね、すべて、その土地のことを表しているからね、それを実際に見に行くことは、大切だからね。でもね、昔の強制連行の道っつったら、道なんか、ないんだよね。すべて原野と川。川沿いに歩くしかなかったの。大変だったの。今は道路があるけど、それでも歩くのは大変だよね。初めてのことだと思うよ。立派なことだ。隆吉はね、歩こうと言い出した人にはね、感謝するよ。本当に、全部歩くなんて、考えもしなかったな!!

Q:現在G8が北海道にやってきていますが、どう思われますか? 参加される予定はありますか?
A:賛成とか反対とか、言ったって、止まるものでもないよね。でもね、アピールすることはね、いいことだよね。参加はね、あんまりしないよ。なにかに参加するとね、隆吉は、大声で質問するからね、みんな降参なんだよ。札幌もね、いろいろなところで警戒が厳しくてね、あまり出歩くとね、逮捕されちゃうからね(笑)。

 今回のG8の現場となっている植民地北海道で、かつて、樺太アイヌの強制移住があり、かなりの数の人たちが死んだ、ということを、現在、G8関連で提言や反対をしている人たちの、果たして何人が『知って』いるかというと、あまり知られていないのではないか、と思います。一方で、このような事実は、少しアイヌの事を調べた人なら『知って』いると思います。このような事実を『知って』いる人たちを増やすことは、とても大切だと思います。でも一方では『知る』事だけでは、イマイチ効果がないのではないか、と思う時もあります。

 たとえば、アイヌが先住民族である、ということは、国会で決議がされる前から、かなり広範囲の人たちが『知って』いたと思います。ですが、今回の国会決議に、それがどう結びついていたのかといえば、どうでしょうか?実は外圧によっての変化であり、国内的な議論が行われていたのかといえば、皆無に近かったのではないか、と思います。また今後、あの決議が、アイヌのおかれている現状の改善に、どう結びつくのかには、大きな疑問が残ります。

 10年前の文化振興法制定のときに『ここがスタート』と、アイヌ当事者も含む、多くの人が発言しつつも、実態としては、それ以上の進展があまりなかった、という経験を、忘れずに踏まえるならば、安易に『これをスタートにして…』といっては、いけない気がします。ではどうすればよいのか?正直なところ、よくわかりませんが、たとえば、今回のウォークや、隆吉さんが長年続けれこられたフィールドワークのように、まず足元の出来事について、具体的に、一緒に歩いたりすることが、大切なのではないか、と思いました。

*1対雁(ツイシカリ)…札幌郊外の、樺太から強制移住されたアイヌたちが住むことになった場所。この場所一帯に住み、漁業などを行っていたが、疫病により大勢亡くなり、多くの人が埋葬された。現在は市営墓地がある。
*2エカシ…アイヌ語で「おじいさん」の意味。尊敬の意味を込めて呼ぶときに使う。
*3イチャルパ…アイヌ式の先祖供養。先祖に供物を届けるために、野外で行う。
*4イナウ…生木を削って作った御幣。神や先祖をを祭る時に使う。木を削り、リボン状のものをたくさんつくって房状にする。さまざまな形がある。あちらの世界に届くと宝物になるらしい。