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鹿嶋少将の航海日誌second

宇宙戦艦ヤマト新作情報・二次創作他、気になったものなどをお届け(^-^)

機動戦士ガンダム外伝◇陽炎-ようえん-のキシリア◇第一話

2021-02-23 07:36:00 | 機動戦士ガンダム外伝

◆U.C.0109木星圏

一隻の深紅に塗られた大型宇宙戦艦。
どことなく見覚えのある艦形。
くちばしのように先端にゆくほど細く尖り、両脇に翼を設け、何処か深海生物の体型を思わせるような艦体、後部には地球上でいう石油タンクのような球状構造物が、左右対象に二つづつ連ね、その真下には大型の翼、安定翼が設けられている。
かつてジオン公国軍総旗艦とされた"グレート・デギン"である。
いや、主砲塔は四基から艦底部に一基増設され、また門数も一基につき三門、計15門を構える。
他、外見上はさほど変わらない。
艦首に大きく画(えが)かれたジオン軍のマーキングも健在だ。
何処からか見てもグレート・デギンそのものだった。
その深紅に塗られた大型宇宙戦艦から少し距離を空け、アルファベットの「V字」を逆さまにしたように、これも今の時代では旧式扱いの部類に入るムサイ級軽巡洋艦が15隻づつ連ねている。
誰が何処から見ても、大艦隊だ。

「全艦!進路地球圏へ!」

先頭のグレート・デギンを彷彿させる深紅の大型宇宙戦艦の各エンジンノズルに青白い炎が、所狭しと連ねた。
その炎の光の輪が合図かのようにV字に並ぶムサイ級もまた、エンジンノズルに青白い炎を灯した。
宇宙空間に陽炎(かげろう)が伺えるほどだった・・・




同じ頃
地球圏サイド:4フロンティアエリア

◆コロニー・USJ-7

廃棄されたこのコロニーで、アナハイム・エレクトロニクスによる"次世代ガンダム"試作機によるテストが行われていた。
このコロニーはコロニー・インダストリア-7からも近く、解体され、再利用するまでの間、アナハイムに貸し出されたコロニーである。
そして、何よりも、かつてルウムエリアと呼ばれ、未だに暗礁宙域が健在な事から、模擬弾を使用した実戦的テストが行えるエリアは、アナハイムにとっては"おあつらえ向き"のコロニーである。

「ニコル。そのまま速度、上げれるか?」

「やってみます!」
エンジニアのリクエストに応えるニコル・フジタナニア。
ニコルは生まれこそ地球・連邦本部のあるオーストラリア管区:アデレード地区だが、生まれて直ぐに父親の仕事の関係で、インダストリア-7に移住、現在、連邦の士官学校に通う18歳。
学校での成績も優秀で、尚且つ父親のコネの手助けもあり、現在、卒業課題の傍らテスト中の"次世代"ガンダムにテストパイロットとして、課題をこなしている。
学校を卒業すれば准尉の階級が与えられ、その後、三年間上級士官候補生として上を目指し、学ぶ事も可能。
身長は170cmスリーサイズは88/57/86と魅力的なプロポーションの持ち主だ。
髪は金髪のショートカット。瞳はブルー。
パイロットとしての腕前は「A」ランクと云ったところ。

コロニーの周りを縦横無尽に飛び回るニコル。

「よし。いい数字が取れた。」
「ニコル。ガンダムを巡航速度に落とし、コロニーへ戻って、クールダウンに入れ。」

「了解。」
巡航速度に落とし、クールダウンに入った直後だったヘルメットに内臓された無線から慌ただしく、何やら話している様子が漏れていた。
エンジニアは無線をOFFにするのを忘れていたのだ。

「全部で31隻も確認出来たぞ!」

「識別コードの読み間違いではないのか?」

「えっ!何だろう?」
そう思いながらも、ニコルは口を挟むの堪え、クールダウンを終わらせ、速やかに所定位置に降りた。
コックピットから降りたニコルはヘルメットの耳の辺りを指先で「コツコツ」と叩きながら、エンジニアたちに近づいた。

「ん!?」
「しまった!」と顔を覗かせるエンジニアの一人、無線をOFFにするのを忘れていたカトウは「お疲れ様。今日は上がっていいよ。」とだけを伝え、しらばっくれようとした。

「全部、聴こえたわ。」
ニコルはヘルメットを脱ぎ、カトウに渡した。

「それで、何が観えていたのかしら?」とニコルは、両手手首を腰に当てカトウを覗き込むように、顔を近づけた。

「……いや、まだ未確定な段階だから気にしないで。」

「は~い。と云うとでも?」
と、そこへ管制室から駆け付けて来たこのテストプログラムの責任者アマノが、口を開いた。

「此方らでも確認出来たようだな。」

「はい。たまたま今日は、宇宙(そら)での稼働テストを行っておりましたので。」

「目視でもハッキリと解るくらいの距離を航行してましたからね。」
「それも、あれだけの数の艦艇です。」
「今、データと照合、旧式の識別コードですが、"ジオン公国軍"の識別コードです。」

「でも、ガンダムを見逃したくらいだから、何かイベントのデモンストレーションでは?」

エンジニアの一人ツバサが冗談混じりで口を挟んだ。

「ツバサちやん。面白い事、云うね。」と苦笑いのカトウ。

舌を出し「でへへ。」と笑いながら「方向からして、サイド:3エリアね。」と付け加えた。

「連邦に連絡を。」アマノは指示をだした。

サイド3(ムンゾ)

月を隔てた反対側で、地球からは最も遠いジオン公国発祥の地となった。 付近にはジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーも置かれていた。 ジオン・ダイクンによってサイド3にジオン共和国が建国された後、サイドに存在する開放型コロニーを密閉型コロニーに改造し、工業生産能力と人口の収容能力等を他のサイドよりも増強させられている。 また、ジオンの本国としてズム・シティが置かれ、一年戦争ではア・バオア・クー、ソロモン、グラナダを本国に対する防衛拠点とし、それらを結んだ線を防衛ラインとして成立させ、万全の防衛体制をとった。

一年戦争末期、ソロモンが地球連邦軍に攻略された後には、第3バンチコロニー「マハル」をソーラ・レイへ改造するために住民を強制疎開させるなど、戦争の旗色が悪くなり一般住民に直接影響が及んだ。 星一号作戦の目標が判明する頃には、駐留する部隊はア・バオア・クー防衛のために動員され艦隊がほとんど残らなかったが最終的にア・バオア・クーは陥落、防衛拠点のうち2つが攻め落とされた時点でジオン公国改めジオン共和国は連邦政府と終戦協定を結んだ。

これによりジオン本国への直接攻撃は辛くも回避され、他のサイドのほとんどをジオン公国が徹底的に破壊した事により、皮肉にも最も工業生産能力を温存していたサイドとして、終戦後はコロニー再建計画等に関わることとなる。 その後、ジオン共和国はUC.0100年に自治権を放棄して消滅した。

1バンチ / ズム・シティ (Zum city) 名称はジオン・ズム・ダイクンに由来する。公王庁が設けられ謁見室やデギンの私室があり、裏手にギレンの官邸が配されている。 そのため公国の施政の中心となり、サイド3の政府高官・高級軍人・名家が住んでいる。ガルマの国葬もここで行われている。 地球連邦軍の星一号作戦の最終目標となっていたが、終戦協定により戦火を免れる。

UC.0100年の自治権放棄後のサイド3でも「首都」とされ、UC.0105年に旧公国庁舎の向かい側に一年戦争記念館が建造された。



「キシリア閣下。間もなくサイド:3エリアです。」

「うむ。」と軽く頷く、白い鉄火面タイプのヘルメットに紫色のネックマスクで口元を隠し、将官クラスの軍服用マントを背負う紫色の軍服に身を包む姿は"キシリア・ザビ"そのものであった。

「木星圏という、偏狭の地で息を潜め早30年余り。」
「ようやく私はこの地へ帰って来た。」
「今は亡き母の悲願達成のために、私は帰って来た。」



キシリア・ザビ=Kycilia Zabi

ジオン公国軍突撃機動軍司令で階級は少将。デギンの長女。

ギレンとは政治的に、ドズルとは軍事的に対立している。 座乗艦はグワジン級戦艦グワジンあるいはグワリブ又は、紫色のチベ級戦艦パープル・ウィドウ)。 ギレン以上の政治的手腕を持ち、サイド6の中立化政策も彼女の画策したものとされる。常に顔の下半分を覆うマスクを着けているが、その理由は戦場での肌荒れを防ぐためだとも、戦場の血の臭いを嫌悪しているからだとも言われている。 将官で普段からヘルメットを着用しているのは他に例を見ず、腰だめ撃ち用のレーザーガンはキシリアとシャア・アズナブル以外には装備を確認された人物はいない。

兄であるギレン同様、他者を政治的な力関係で見てしまいがちな人物であるが、ガルマの葬儀に、なかなか出ようとしない父デギンに労わりの言葉をかけており、ギレンが父を暗殺したことを知った際には怒りをあらわにしていることから、家族愛の意識は持っていたことが窺われる。 もっとも、父を大切に思う娘の気持ちはしっかりと伝わっていたとは言いがたく、デギンはギレンに対する忠告を行なった際に「キシリアは何を考えているのか」と独白している。 兄ギレンの父殺しを確定させるため和平交渉に向かった父の座乗艦グレート・デギンの座標情報をリークしており、この間接的な殺害で最後まで持ち駒のひとつとして利用していたことを明示している。 末弟のガルマに対しては、自分への忠誠心を持つようにある程度優しく接しながら利用していたようである。

次兄サスロの暗殺への関与疑惑、キャスバル暗殺のために無関係な乗客を巻き添えにした宇宙船の爆破、ミノフスキー博士の亡命を連邦軍への示威行動に利用、内通者や反対政治家の暗殺など容赦がない。 キシリア機関と称される独自の諜報機関(親衛隊)を指揮し、ジオン軍内部の綱紀粛正を行っており将兵から恐れられている。

また、奔放な男性関係を伺わせる。 自らも変装し工作活動に従事している。 その一方で、地球至上主義者のマ・クベを抜擢。 戦争継続のために南極条約調印交渉の全権を与えるのみならず、和平交渉決裂後に行われた地球降下作戦の指揮権を与えている。 また彼への信任の証として自らの本心を語り、末弟ガルマ・ザビの身柄を預けている。

若くして政治的な野心を持ち、長兄ギレンに対抗するため軍事力や政治ルートなどを独力で確立せんと試みるが、自身よりも年上で、すでに政治に身を投じていたギレンに対し、正攻法では困難と気づいていた。 そのためか、モビルスーツやニュータイプなど新しいものに目をつける傾向が見られる。大佐時代のUC.0078年10月にはモビルスーツ中心の軍備増強を主張して、宇宙艦隊を重視していた三男ドズルと激しく対立し、両者とも自説が容れられなければ軍籍を離脱するとまで発言している。 その結果、ギレンの調停により、ジオン公国軍はドズルの指揮する宇宙攻撃軍とキシリアの指揮する教導機動大隊をベースとした突撃機動軍に分割されることとなる。 なお、一年戦争中にも戦略海洋諜報部隊の本拠となるキャリフォルニアベースの取り扱いについてドズルと対立しており、ドロス級大型輸送空母ドロワを譲ることで彼の譲歩を得ている。

長兄ギレンと政治的に反目する過程で、自己の政治勢力を拡大することに腐心していく。月の裏側にあるグラナダ基地を根拠地とし、末弟ガルマ麾下の北米方面軍によって北米大陸を押さえる一方、そのガルマの死に憤るドズルに左遷されたシャアを登用してマッドアングラー隊(大西洋潜水艦隊)を預けたり、腹心マ・クベを地球に派遣して中央アジア(オデッサ)を中心に鉱物資源を採掘させるなどしている。

また、マ・クベと共にアッザムに搭乗して自らガンダムと対戦、その性能を目の当たりにしてドムなどの新型モビルスーツ配備を急ぐようになる。 ニュータイプに対しても一定の理解があり、フラナガン機関を創設している。

シャアとは、「幼い頃に遊んでやった」間柄でもあり、後にその正体を見破るが、彼の目的がザビ家打倒からジオニズム実現へと移行しているとの言質を取った上で、逆に自分の懐刀として使うことを伝えている。 キシリアが「シャア=キャスバル」であることを悟った際の心理は、幼いキャスバルの聡明さを愛していたせいか、その正体を知りながらもシャアに対する信頼は篤く、政治的計算の他にも期待するところが大きかったようである。 11歳にしてダイクンの後継者として毅然とした態度を見せたキャスバルに少なからず恐れを抱き、後に成長した彼のジオン入国を察知して暗殺命令を出した際には、「無名で朽ち果てるつもりなら生かしておいたものを」と独白したことからそれを伺わせている。

UC.年12月31日、長兄ギレンが父デギンを謀殺したことを知り、これを機にア・バオア・クー攻防戦の最中に司令部でギレンを射殺。兄に代わって総司令となるが、皮肉にもそれまで優勢だった戦況がこの暗殺による指揮系統の混乱をきっかけに暗転。 さらに連邦軍の猛攻によるドロス、ドロワを始めとする基幹部隊の壊滅やデラーズ艦隊の戦線離脱等々による防衛線の崩壊によってジオン軍の敗色が濃厚となる。 また、アルテイシア・ソム・ダイクンを担ぎ上げた予想外の叛乱部隊の蜂起によってキシリアのシナリオは狂わされる。戦局が絶望的となった時点で、司令部のトワニング大佐に事後処理を任せ、ザンジバル級機動巡洋艦で脱出を図るが、発進寸前にシャアがブリッジに向けて放ったバズーカ砲の直撃によって首を飛ばされ即死、死体もバズーカの着弾で四散した。

最期の瞬間、自分に砲口を向けるシャアを確認したときの表情は驚愕に充ちたものだった。これはこのとき、キシリアはシャアが搭乗していたMSジオングからの識別信号が途絶した報告を受けており、彼を戦死したものとみなしていたためである。 乗艦していたザンジバルもその直後に連邦軍艦の集中砲撃を受けて轟沈し、公式記録ではこれによる戦死とされている。

キシリア自身にもニュータイプの素養があったとされている。昔、幼いころのキャスバルとアルテイシアを見て「自分も金髪碧眼の男性と結婚し、こういう子供を授かってみたい」と感じていたという。

第ニ話へつづく。


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