脳と振る舞い 「今日のNature」表紙 / BBS / マイぷれす
記事 : 瞑想する僧侶達は心の焦点を合わせます
05年06月13日(月)
Meditating monks focus the mind
オーストラリアの研究者達が、チベットの僧侶達を対象にして「錯視」の実験を行い、瞑想を行としてきた僧侶達が意識的に思考の速度と内容を制御出来る、と報告しています。慈悲を行とする僧侶達では、一般人とあまり差のない結果が得られたのですが、瞑想を行とする僧侶達では意図的に情報(思考)を制御している事を示唆する結果が得られたそうです。研究者達は、これが「瞑想が精神を鎮め、より明確に焦点を定める事を可能にする」という事を支持する結果だとしています。
仏教徒達は錯視課題での明確な注視を明らかにします
僧侶達での研究によると、思索は測定できる方法で心の焦点を合わせる事が出来ます。脳を混乱させるように設計された視覚テストで、僧侶達は瞑想の訓練を受けていない人々よりも容易に混乱を避けることが出来ました。
研究者達は、それぞれの目に対して2つの競合するイメージが提示される、「知覚の競争」のテストを76人のチベット人の僧侶達を対象に行いました。この試験は、一般に何が見えているのかを理解できるようにする為の苦闘を引き起こすので、脳はほぼ数秒毎にそれらのイメージを切り換えます。
単一の物や考えに対してその注意のすべてを振り向ける事を伴う、「1ポイント思索」の技術を習得した僧侶達は、この切り換えを減速させる能力を持ち、さらにそれを完全に停止させる事さえも出来る、とオーストラリアの St Luciaに有るクィーンズランド大学のOlivia・Carterと同僚達は報告しています。
「Current Biology」誌で電子出版された彼等の研究によると、研究者達は 5年から54年に及ぶ期間訓練を受けてきた僧侶達に対して、異なった形式の思索訓練を習得するように依頼し、その後2つの異なったイメージを表示するゴーグルを身につけさせました。ゴーグルによって、片方の目には水平な棒が、そしてもう片方の目には垂直な棒が映し出されました。
世間から離れて瞑想を20年以上続けている最も経験豊富な「1ポイント」瞑想者達は、実験の5分間を通して視覚切り換えに抵抗する能力を持ちました。僧の自己申告によると、彼等は1セットのバーが優位な状態の、ただ一つの安定したイメージだけを見ていました。
他の人々の苦しみを熟考する行為を伴う、「慈悲(compassion)」の訓練を行っていた僧侶達には、明確な改善は見られませんでした。
また、渦巻ドットのパターンの中である静止したドットを、同じ画像の中の他の静止したドットが見えなくなるよう感じられるまで見つめる、という、「動きに誘発された盲目(motion-induced blindness)」という別の種類のテストも行われました。( どんなものかを知りたい場合は、 こちらに例が有りますので眺めてみてください) 世間一般の人達では、それはわずか2.6秒なのですが、僧侶達の場合、平均が4.1秒間でした。最も経験豊富な瞑想者達は、12分間以上もその状態を維持しました。
参考情報 : 恒常性について
外界にある対象によってもたらされる網膜上に投影された刺激が変化しても、物の様々な特徴が比較的恒常に保たれることを恒常性という、そうです。錯覚・錯視などについての解説が有ります。
思考の流れ
Carterは、この発見が瞑想が精神を鎮め、より明確に焦点を定める事を可能にする、という考えを支持するものだと語っています。「僧侶達は、自分たちの『意識の流れ』の中で、思考の速度と内容を制御することができるように見える」、と彼女は語っています。
瞑想がひょっとしたら抑鬱状態の人々やトラウマを被った人々を、彼等の心が絶えず否定的な考えに向かうのを止める事で、助ける事が出来るかもしれない、と彼女は示唆しています。
「瞑想の実践者達はこれまでずっと、悪いニュースやいたましい事件に直面した時に、人々はその悲劇を是認する事が出来る。しかし、それ以上により積極的な方向に彼らの考えを向け直す能力を持つのだ、と主張してきています」、とCarterは語っています。「これは普通の人ができない何かなのです」
しかし、Imperial College Londonの神経科学者のJohn・Gruzelierは、あまりに多くの内省と熟考は、憂うつと戦っているある種の人々には危険かもしれないと警告しています。
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「錯視」、「瞑想」、「脳の情報処理」
ブログ探検隊
http://www.mypress.jp/v2_writers/miyu_desu/story/?story_id=1078976
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05年06月13日(月)
Meditating monks focus the mind
オーストラリアの研究者達が、チベットの僧侶達を対象にして「錯視」の実験を行い、瞑想を行としてきた僧侶達が意識的に思考の速度と内容を制御出来る、と報告しています。慈悲を行とする僧侶達では、一般人とあまり差のない結果が得られたのですが、瞑想を行とする僧侶達では意図的に情報(思考)を制御している事を示唆する結果が得られたそうです。研究者達は、これが「瞑想が精神を鎮め、より明確に焦点を定める事を可能にする」という事を支持する結果だとしています。
仏教徒達は錯視課題での明確な注視を明らかにします
僧侶達での研究によると、思索は測定できる方法で心の焦点を合わせる事が出来ます。脳を混乱させるように設計された視覚テストで、僧侶達は瞑想の訓練を受けていない人々よりも容易に混乱を避けることが出来ました。
研究者達は、それぞれの目に対して2つの競合するイメージが提示される、「知覚の競争」のテストを76人のチベット人の僧侶達を対象に行いました。この試験は、一般に何が見えているのかを理解できるようにする為の苦闘を引き起こすので、脳はほぼ数秒毎にそれらのイメージを切り換えます。
単一の物や考えに対してその注意のすべてを振り向ける事を伴う、「1ポイント思索」の技術を習得した僧侶達は、この切り換えを減速させる能力を持ち、さらにそれを完全に停止させる事さえも出来る、とオーストラリアの St Luciaに有るクィーンズランド大学のOlivia・Carterと同僚達は報告しています。
「Current Biology」誌で電子出版された彼等の研究によると、研究者達は 5年から54年に及ぶ期間訓練を受けてきた僧侶達に対して、異なった形式の思索訓練を習得するように依頼し、その後2つの異なったイメージを表示するゴーグルを身につけさせました。ゴーグルによって、片方の目には水平な棒が、そしてもう片方の目には垂直な棒が映し出されました。
世間から離れて瞑想を20年以上続けている最も経験豊富な「1ポイント」瞑想者達は、実験の5分間を通して視覚切り換えに抵抗する能力を持ちました。僧の自己申告によると、彼等は1セットのバーが優位な状態の、ただ一つの安定したイメージだけを見ていました。
他の人々の苦しみを熟考する行為を伴う、「慈悲(compassion)」の訓練を行っていた僧侶達には、明確な改善は見られませんでした。
また、渦巻ドットのパターンの中である静止したドットを、同じ画像の中の他の静止したドットが見えなくなるよう感じられるまで見つめる、という、「動きに誘発された盲目(motion-induced blindness)」という別の種類のテストも行われました。( どんなものかを知りたい場合は、 こちらに例が有りますので眺めてみてください) 世間一般の人達では、それはわずか2.6秒なのですが、僧侶達の場合、平均が4.1秒間でした。最も経験豊富な瞑想者達は、12分間以上もその状態を維持しました。
参考情報 : 恒常性について
外界にある対象によってもたらされる網膜上に投影された刺激が変化しても、物の様々な特徴が比較的恒常に保たれることを恒常性という、そうです。錯覚・錯視などについての解説が有ります。
思考の流れ
Carterは、この発見が瞑想が精神を鎮め、より明確に焦点を定める事を可能にする、という考えを支持するものだと語っています。「僧侶達は、自分たちの『意識の流れ』の中で、思考の速度と内容を制御することができるように見える」、と彼女は語っています。
瞑想がひょっとしたら抑鬱状態の人々やトラウマを被った人々を、彼等の心が絶えず否定的な考えに向かうのを止める事で、助ける事が出来るかもしれない、と彼女は示唆しています。
「瞑想の実践者達はこれまでずっと、悪いニュースやいたましい事件に直面した時に、人々はその悲劇を是認する事が出来る。しかし、それ以上により積極的な方向に彼らの考えを向け直す能力を持つのだ、と主張してきています」、とCarterは語っています。「これは普通の人ができない何かなのです」
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