
4Hero は、DegoとMarc Macのふたりからなるドラムンベースのユニットだ。
(ドラムンベースは、レゲエやダブのシーンから発生したジャングルという音楽から派生して生まれ、
ボサノヴァなどの影響も受けながら発達したビートのスタイル。・・・ややこしくて申し訳ない)
ドラムンベースはブレイクビーツの流れをくむもので、シーケンサーやリズムマシンにて作られた複雑なビートを高速に流す一方、
ベースラインはむしろゆったりとパターンを繰り返し、重層的な空間感、奥行きを感じさせる。
90年代の終わりから2000年代にかけて、トーキン・ラウドレーベルはちょっとしたテクノ/ハウスブームだった。
さきに紹介した MJ Cole(2ステップ)はもとより、Roni Size や Krust といったドラムンベース勢、
それに Masters At Work などのハウス系プロデューサーらが活躍した。
4Heroは、そんな最中にトーキン・ラウドへ移籍してきたユニットである。
4Heroの音世界は、聴きやすく壮大なスケール感がある。
宇宙や自然の広がりを感じさせる一方で、幾重にも織り込まれた複雑なビートが聴く者のリズム欲求を刺激する。
彼らを知る上で最適なのが、本作である。
タイトル通り2枚組でリリースされたものがオリジナルだが、その後1枚にまとまったバージョンも発売された。
←ジャケットデザインは同じだが、色使いが違っているのでまるで別物の印象
だが、ここでは絶対に2枚組(冒頭の写真)を勧める。
彼らの持つ二つの側面……
しっとりとして壮大な音の広がりと、先進的でエッジの立ったタイトなブレイクビーツ。
単なる4つ打ちでなく複雑なリズムパターンを提示しているのだが、それを複雑に聴かせない。
また生楽器を多用し、とくにストリングスやウッドベースの音色は彼らの世界観を支える重要な要素と言っていい。
彼らは2枚のディスクにそれぞれの側面を分かりやすいかたちで収録している。
ディスク1は、主に歌ものが中心である。実に3分の2以上がヴォーカル入りだ。
#1 loveless には、ポエトリー・リーディングの Ursula Rucker が登場する。
彼女はThe Rootsのアルバムにも客演している、ブラックミュージックの詩人だ。
また、さきに紹介した Digable Planets の Butterfly は#8 The Action でラップを披露している。
とは言え、インストゥルメンタルの曲も素晴らしい。
メロウなトラック、神秘的なストリングス。
ヴォーカル入りでも、インストゥルメンタルのパートが素晴らしく洗練されている。
ドラムンベースに馴染みのない人でも、例えばファンタジー映画のサウンドトラックのような感覚で聴ける。
ディスク1をライト・サイドとするなら、ディスク2はダーク・サイドだ。
うってかわって、ヴォーカルものは一切無い。
#1 We Who Are Not As Others 、のっけからスリリングに煽る複雑なビート。
そのバックで淡々と鳴る、ウッドベースのような低音。
ビートは激しいのに、どこまでも醒めている、冷たい印象。
電気的な音をふんだんに使いながら、サンプリングも多用し、生々しさがある。
ディスク2は不思議な感覚だ。これも、4Heroの音楽なのである。
さらに、この中からいくつか楽曲をピックアップし別のミュージシャンが手がけたリミックスアルバムもある。
『Two Pages Reinterpretations』
オリジナルを踏襲したものもあれば、原型を留めないくらい弄り倒しているものもある。
参加しているのはMasters At Work、Jazzanova、Photek、Azymuth……など。
是非チェックし、リミックスの面白さを堪能してほしい。
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