
世間的には、いわゆる「一発屋」とも揶揄されかねないヒップホップグループ。
個人的にはもっとも活動再開して欲しいグループ。
アルバムを2枚リリースした後まったく音沙汰が無くなってしまったからだ。
リーダーの Butterfly、それに Doodlebug、紅一点の Ladybug Mecca の3人からなる3MCの形態。
いわゆるアメリカ的ヒップホップグループとは一線を画し、「お上品な」感じさえする。
上品というのは、PARENTAL ADVISORY が付くようなリリックとか、
メンバーが銃で撃たれたとかクスリで捕まったとかとは無縁、ということだ。
それが悪いわけではなく、むしろヒップホップという音楽の懐の深ささえ感じる。
彼らの楽曲で圧倒的に有名なのは、1stアルバム収録の# Rebirth Of Slick (Cool Like Dat) だ。
今聴いても本当にカッコいい。
1stアルバム『Reachin'』
しかし1stアルバムは、いささか無機質的に過ぎるというか、冷たい印象が強かった。
今回紹介するのは、彼らの2ndアルバム。
彼らの音作りはより有機的になり、良い意味でヒップホップぽくなったように思う。
先に述べた# Rebirth Of Slick (Cool Like Dat) のようなインパクトのある曲は無いものの、一つひとつの楽曲がジャズの雰囲気をうまく演出している。
3人のMCはそれぞれ淡々とラップする。感情的になりすぎず、クールに徹している。
だがその内容は政治にも当然言及し、辛辣である。
そのクールさがトラックと上手くマッチして、これぞジャズヒップホップだ、と思わせる。
元ネタにジャズを用いてはいる。
例えば#8 The Art Of Easing では Bobbi Humphley の名曲『Black And Blues』を大ネタ使いしているが、
それを「ウリ」にすることはない。
元ネタをジャズに求めたことを強調する(→ US3 )でもなく、
ジャズミュージシャンとの共演(→ JAZZMATAZZ )でもなく、
ジャズ的即興の妙をヒップホップに置き換えて取り込む(→ THE ROOTS )でもない。
にもかかわらず、彼らの音楽にはジャズを感じる。
#5 Borough Check 。ここでも Guru がゲストとして登場する。
やはり風格というか、Guru のラップがカットインしてくる瞬間は(CDの解説で松尾潔氏も書いているが)鳥肌が立つほどカッコいい。
本作の日本盤には、ボーナストラックとして#15 Rebirth Of Slick (Cool Like Dat) のリミックスが収録されている。
はっきり言って、オリジナルとほとんど大差ないリミックス(聴き比べてみて、初めて違いが分かる程度)。
ついでなのでこの# Rebirth Of Slick (Cool Like Dat) にも触れておくと、
元ネタはJazz Messengersの『Stretching』。
印象的なベースラインは、冒頭2小節をサンプリングして、速さを落としてループさせている(その分音程が下がっている)。
だから# Rebirth Of Slick (Cool Like Dat) のベースラインをウッドベースで弾くと、ポジショニングやラインの繋がりで違和感を感じる。
2小節のループだから、2小節目の最後→1小節目の頭への繋がりが弾きにくい、とか、
低い音域でこのベースラインは、普通のウッドベースの発想では出てこない、など思う。
なお、それに被さるホーンリフも、同じ曲からのサンプルだ。
これも冒頭の1フレーズだけをサンプルしてリピートさせている。
彼らが活動を休止してずいぶん経つが、2007年に再結成されたという。それを期してか、ベスト盤も発売された。
1st、2ndアルバムから選曲したもので、ジャケットもその2枚をミックスしたような作りだ。
彼らの音楽をまったく知らなければ、ここから入るのもいいかも知れない。
余談だが、Butterflyは “Ish” という変名で 4hero の楽曲に客演している。これについては別記事で触れる。
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