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ACID JAZZ FREAK

一時のブームとして流されがちなアシッドジャズ。その作品群を取り上げ、思うところを書いていく、時代に逆行したブログです

Underground / COURTNEY PINE

2023年05月21日 | INSTRUMENTAL

前作『Modern Day Jazz Stories』からの、コンセプトまんまの続編。
ターンテーブルやサウンドエフェクトなど、「今風な」装飾を施しながらも、
やっていることは古典的なジャズ、という感じ。
日本のビデオゲーム『SFⅡ』のボイスをサンプリングしているのも、前作同様w

前作よりもヴォーカル曲を増やしているせいか、そこまで「ジャズ色」は強くなく
そっちを期待した側には、もの足りない印象が拭えない。

 

前作とメンバーは入れ替わり、
ヴォーカルは Cassandra Wilson → Jhelisa
ベースは Charnett Moffet → Reginalt Viel
となっている。

端正な出来だが、#3 Tryin' Time 以外は印象に残りづらいアルバム。


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Standing Together / GEORGE BENSON

2022年08月28日 | INSTRUMENTAL

ジャズギタリストの大御所、George Benson。
その諸作の中でも、異色というか
なぜかクラブ方面へ親和性が高いのが、本作だ。

既に当ブログのいくつかのエントリで、参考アルバムとして本作をピックアップしているが
なぜ、これがクラブ受けが良いかと言えば
考えられる理由のひとつに、Masters At Work の二人の参加がある(それしか要素が無い、とも言える)。
彼らはこの時、別のプロジェクト『NUYORICAN SOUL』を動かしていた。

NUYORICAN SOUL については、別エントリで紹介しているのでここでは省くが
George Benson も、このプロジェクトに参加する一員だった。

NUYORICAN SOULのアルバムに収められたGeorge Benson参加の楽曲の、
オリジナルヴァージョンともいえるものが、本作には収められている。
とはいえ、これだけでクラブ受けするアルバムになる……はずがない。

本作は、ジャズともフュージョンとも
ある程度の距離をおいた、何とも不思議なテクスチャーに包まれたアルバムだ。

メロウでありながら、しっかりとビートは打ってあるさまは、90年代のR&Bを強く意識させる。
そして全体に漂う、ジャズの香り。
UK発祥のアシッドジャズを、アメリカ東海岸のフュージョン風で料理した、という感じがする。

フュージョン的には「カラッと明快に」処理するところを、あえてUK風に「くすんだ」処理をした……
みたいな感じだろうか。

#3 All I Know、#7 Fly by Night あたりは、チル・アウトに最適な楽曲だ。
夜にも、昼下がりにも良くマッチする。
#5 Poquito Spanish, Poquito Funk も
アルバムの中では少し異色な楽曲ではあるが
聴き通していくうちに、これがアルバムの中間に位置していることの意味(効能)が、分かってくる。

この曲が似合うのは、ようやく暑さが収まってきた晩夏の夕暮れ。
まだ明るさが残る空の下、涼しい風が吹き抜けるベランダで
モヒートなどを片手に、この曲を聴いてみて欲しい。

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Journey to Truth / STEVE WILLIAMSON

2022年05月29日 | INSTRUMENTAL

サックス奏者、Steve Williamson がトーキン・ラウド・レーベルに残した、おそらく唯一のアルバム。

全体の印象としては、アフロに寄りたいのか現代的なサウンドにしたいのかがハッキリせず
それ故に、世にはあまりウケなかったアルバムと思う。

けれど
ところどころに起用されるサイドのメンバーが、実は豪華だ。
THE ROOTS のドラム ?uestlove、フロントMCの Black Thought 、ベースのHubb(彼はキーボードも弾いている)。
Carleen Anderson の姉妹、Jhelisa Anderson と Pamera Anderson 。
ヴォーカル曲では、この二人のほか Noel McKoy がマイクを取っている。


#1 Meditation、#4 Affirmation
この2曲は、サックスとパーカッションのみという非常にストイックな音作りで
楽曲の位置づけは、ありがちな “箸休め的インタールード” ではなく、
なぜかとても記憶に残る。

#6 part1 Who Dares ~ #8 part3 Rough
の3曲は一連の流れでヒップホップ的。
ラップの絡まない、アブストラクト・ヒップホップの一種とも言えるのでは。


出色の曲目としては、
ラップでは
#9 Pℱℱat Time だろうか。
Black Thought の貫禄は、流石としか言いようがないが
そのラップに絡んでいく Williamson のサックスも、なかなかにスリリング。

ヴォーカル曲は5曲。
#2 Journey to Truth 、#5 Celestial Blues で歌声を聴かせるのは Jhelisa(Courtney Pine のアルバムにも参加している)。
#11 How Ya Livin'? のほうは Pamera(INCOGNITO での活動は知られたところだ)。
#12 Blakk Planets 、#13 Evol Lover では Noel McKoy がソウルフルなパフォーマンスを見せる。


全編を通して
ところどころに光るものを感じつつも、楽曲の構成に耳を惹くものが無く、印象に残りづらい。
サックスのプレイも、どうも弾け切れていない印象。
エレキベース(スラップあり)の音も軽すぎる(個人的には、それがいちばんのマイナス……)。

Steve Williamson 本人は、US3 の1st や J.T.Q. のアルバムに参加していたりと
「アシッド・ジャズ的サウンド」には親和性が高いのだろうけど……

本人がやりたいことと、レーベル側がやらせたいことに齟齬があったのかも知れない。

いろいろ「惜しい!」と思わせる、ある意味で印象深い作品。

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Ulf Sandberg Quartet

2021年05月05日 | INSTRUMENTAL

ピアニスト、Ulf Sandberg 率いるワンホーン・カルテットのアルバム。

このブログは、いわゆる『アシッド・ジャズ』を紹介するブログなので
スタンダードなジャズ、つまり4ビート中心でハードバップ的な作品は紹介しないのだが、
このアルバムはスタンダードなジャズアルバム、と言えるかもしれない。

とは言え、ここで紹介するワケは、
この作品がACID JAZZ レーベルからリリースされた、ということだけでなく、
JTQのオルガニスト、James Taylor にジャズを教えた人物でもある、という点だ。

リリースされたのは80年代の終わり、ちょうどアシッド・ジャズのブーム真っ只中だ。
当然、ハードバップ~モード~新主流派の時代ではない。かと言って
それらを消化した後の、高度で難解なテクニックが畳みかける「現代ジャズ」でもない。

使われる楽器はアコースティックのみで、フュージョン的要素もなく、ヒップホップ的でもない。
抽象性が高いとか、実験的要素みたいなものも無い。

内容を聴く限り、悪く言えば平凡な印象。
往年のジャズ喫茶では、あまりウケないだろうな、とは思う。

この良い意味での中途半端さは、「ちょうどいい感じ」でクラブへの親和性が高かった。
アシッド・ジャズは、もともとジャズの要素を含んでいるので、プレイリストに
このアルバムの1曲が混ざったとしても、違和感なく溶け込む。

「ジャズのアルバム」として聴くと物足りないかも知れないけれど、
「ジャズ度」が高すぎず、かと言って存在感はある不思議なテイストは、
R&Bやテクノ・ミュージックにつなげても違和感なく流れる。


#1 Bolivia は、Cedar Walton のアレンジを踏襲している。
G一発で16bars引っ張った後の展開が聴きどころ。
Red Sky(Freddie Hubbard)、Recorda Me(Joe Henderson)のように、
ベースイントロの楽曲はクラブ向きな気がする。

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Man Made Object / GO GO PENGUIN

2019年10月19日 | INSTRUMENTAL

GO GO PENGUIN を「ジャズのピアノ・トリオ」と呼ぶのには、ちょっと違和感がある。

仮にこのアルバムを、ジャズ好き、それもピアノ・トリオ愛好家に聴かせたとして、
その評価はどうだろうか。

同じフォーマット(ピアノ・ウッドベース・ドラム)で奏でられる音楽であるにも関わらず、
きっと「聴いたけど……良く分からない」という感想が、半数を占める気がする。


このブログでは、いわゆる “ガチのジャズ” は扱わないのだが、
GO GO PENGUIN に至っては、
取り扱わないわけにはいかなかった。

彼らのやっている音楽は、おそらく「ジャズ」ではない。
キョート・ジャズ・マッシブの沖野修也氏は、彼らのことを「アコースティック・エレクトロニカ」と
表現していたが、まさにそうだ。

エレクトロニカが大好きで、自分たちもそのような音楽を演ってみたいが、機材が無いので
大学のジャズ研の部室にあるピアノ、ウッドベース、ドラムセット、各種パーカッションを使って、
『#それっぽいこと演ってみた』
的な、雰囲気を感じる。

ピアノはメロディを紡ぐ役割から離れ、シーケンスを繰り返して「背景」となり、
ベースは、ときにサウンド・エフェクトのようにアルコを奏で、ときにフレーズとも呼べない音列を繰り出し、
やはり「低音部とコード感を支える」という役割からは離れている。

そしてドラムも、ビートを刻むだけでなく、やはりサウンド・エフェクト的なコトもやり、
全体のダイナミズムをコントロールしている。

4ビートだとか8ビートだとか、キーがどうとかモードがなんとかいうハナシからは、もはや遠く
各楽器が “テクスチュア” を提供しあって、音像を作り出している。

彼らの音楽は、本当の意味での「ジャズと “それ以外” の音楽(ここではテクノ・エレクトロニカ)の融合」と
思える。



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The Detroit Experiment / CARL CRAIG

2017年02月05日 | INSTRUMENTAL

テクノのプロデューサーとして知られる Carl Craig が、生楽器とプログラミングの融合を試した作品。
・・・というのが、たぶん本作を示すもっとも分かりやすい常套句なのだろう。

しかし、それに釣られてテクノ・ヘッズがこれを聴いても、肩透かしを食うだろうとは思う。
これは決してテクノのアルバムではない。

実際、たとえば JAMIROQUAI あたりのアルバムに繋げて聴いても
「あ、JAMIROQUAI のインストの曲が始まったんだ」
くらいの違和感の無さで溶け込む。

そのくらい、“アシッド・ジャズ的”な音である。

本作が作成された頃、アシッド・ジャズはブームとしてはとっくに下火になっていた筈である。
にもかかわらず、本作は非常にアシッド・ジャズを意識させる、楽器による演奏重視の音作りだ。
しかし、それはそれで上質ではあるのだが、「何かが足りない」印象も受ける。

本作は、冒頭に記した通り Carl Craig が指揮を執って収録した、インスト・アルバムだ。
“使い方”としては、サンプル音源にされるなりトラックの下敷きにされるなりして “活きる” アルバムなの
かもしれない。

「素材」として “活用” できそうな音源は、いくつも見つかる。
しかし、演奏自体は優れているのでこれだけでも成立しそうな気もする。
ミュージシャンとしては、これをリリースした「本音」はどこにあるのか、気になる。


ちなみにこのタイトルには元ネタがあり、
それは『The Philadelphia Experiment(フィラデルフィア実験)』というタイトルのSF映画(マイナーなB級映画である)なのだが、 
そのことはあまり作品内容に影響しない。

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Light To Dark / RONNY JORDAN

2016年05月21日 | INSTRUMENTAL

アシッド・ジャズを代表するギタリスト、Ronny Jordan 。
アルバムはいくつかあるが、その中でもあまり目立たないのが本作だ。
(ふざけてるのか真面目なんだか、よく分からないセンスのジャケットである)



なぜだか分からないが、このアルバムには、強烈に “深夜” を意識させる雰囲気がある。
『真夜中に聴きたいアルバム』というのがあったら、これは間違いなく入れておきたい。

全体的にメロウな楽曲で構成され、派手な曲が無いのが原因かもしれない。
けれど、単純にそうとも言い切れない。曲単位で聴けば、昼間のラジオでかかっても違和感ないものもある。
例えば、シングルカットされたヴォーカル曲の #7 I See You だ。

この曲での Ronny Jordan のカッティングは、小気味良くバウンスしていて素晴らしい。
ソロイストとしてだけでなくバッキング・ミュージシャンとしても優れていたことを示している。

もちろん、他の曲でもメロウながらしっかりとエッジの立ったトーンでフレーズを綴っている。
ソロにもバッキングにも秀でている、というのが、さすがジャズ・ギタリストと思わせる。



さて。
やはり、このアルバムは
「深夜に自宅のリビングや自室で一人、聴く」
というイメージが合う。

写真を現像する暗室をイメージしたジャケットデザインに倣って、照明を落とした部屋で、お酒でも飲みながら聴くイメージだ。
飲みながら、自問自答する。仕事のこと、家族のこと、将来のことなど……
そんなBGMに、ぴったりだ。


この雰囲気に近いのは、George Benson の『Standing Together』。

やはり同じくメロウな路線で、しかもギタリスト作品。

ギターというのは、ピアノとはまた違った方向で内省的な世界を見せるのに適した楽器なのかもしれない。



【参考アルバム】

『Standing Together』 George Benson
フュージョン界ではもっとも知られたギタリストだが、 このアルバムは何故かクラブ・ヘッズにウケが良い。
Masters at Work が絡んでいるためと思われるが、それもごく一部の曲だけだ。 

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We Live Here / PAT METHENY GROUP

2015年02月13日 | INSTRUMENTAL

このブログの趣旨はいわゆるアシッド・ジャズの作品を紹介することなので、Pat Metheny は似合わない。
フュージョンあるいはコンテンポラリー・ジャズにカテゴライズされるグループで、クラブ・ミュージック好きには認知度は低いのではないだろうか。

Pat Metheny は自身のバンドPMG(Pat Metheny Group)とソロ名義とで作品をリリースしていて、
本作がリリースされた頃は
ソロ作品はジャズ色が濃く、PMGではフュージョンに寄っている傾向だった。


どちらにしてもジャズファンは注目したが、そうでない一般の人々にはさほど注目されなかったように思われる。
そんな中で本作は、例外的にクラブ層にも “ウケた” 実績を持つ作品と言える。

#1 Here To Stay はメロウな曲想とスムースなグルーヴが、90年代という時代背景も手伝って
アシッド・ジャズのひとつとしてプレイリストに組み込まれた。

実際、それらに混ぜてもまったく違和感のない佳曲だ。

#3 Girls Next Door はPMGとしては異色の重たいビートで、HIP HOPの影響を感じさせる。
サンプリングの素材としても使えそうだ。


#4 The End of the World は、「これぞPMG」というべき曲だ。
曲構成のダイナミックさとギターシンセの響きが最高に気持ち良い。
この曲が、本作のハイライトと言っても良いだろう。

後半はジャズ~フュージョン色が強くなっていく。
特に#6 Episode d' Azur あたりは古典的なジャズが好きな人にも受け入れられる楽曲だろう。
#8 Red Sky では Metheny 得意のギターシンセを存分に聴ける。


全体に、90年台のHIP HOP、R&Bをイメージさせる、メロウでありながらビートを感じる音作りになっている。
クラブヘッズはこれをきっかけにジャズに守備範囲を広げるも良し。
DJならば、ミックスのプレイリストに組み込める曲も多いのではないだろうか。
想像を掻き立てる曲想が多いので、風景系自作動画のBGMとしてもハマる。


アシッド・ジャズは、クラブ・ミュージックの側からだけではない。
レア・グルーヴやクロスオーバー・ジャズは掘り尽くされてしまった感があるけれど、
90年代前半のフュージョンはまだまだアシッド・ジャズとして括れるネタがあると思う。 


【関連作品】


Standing Together / George Benson

こちらもジャズ/フュージョン界のギタリスト、George Benson による98年のアルバム。
同じくクラブ・ミュージックの影響が色濃い作風で、プロデューサーに Tommy LiPuma を迎え、
さらに NUYORICAN SOUL で縁のある MASTERS AT WORK の二人も関わっている。


 

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World Standard Schema / various artist

2014年03月21日 | INSTRUMENTAL

Nicora Conte の作品などで知られるイタリアのジャズレーベル、SCHEMA の音源を
「夜ジャズ」などをプロデュースするDJ須永辰緒が選曲・ミックスした作品。

SCHEMA はクラブ・ミュージックとジャズのシームレスな作品を多くリリースしていて、洗練されながらも野心的試みを感じさせる。
一方の須永辰緒は、自身も sunaga t. experiment というクラブ・ジャズユニットを率いている(本ミックスにも1曲選ばれている)。

中身は、クラブサイドからは「しっかりとしたジャズ」という印象を持たれるだろう。
全曲インストで、ほぼ楽器の生音が中心に構成されている。

ジャズ好きからは 「今どきの音」 という感想が聞かれるかも知れない。
完全アコースティックというわけではないし、当然4ビートものだけでもない。
楽器ソロはそれなりにあるが、ソロでゴリゴリ聴かせる感じではない。

それを予定調和的、つまらないと捉えるかどうかは人それぞれだ。

ただし、音楽としては「聴いていて心地良いかどうか」は重要な要素だろう。
その点で、この作品は非常に優れている。
涼し気なジャケット・デザインに違わず、随所にボッサやラテン・フィールを盛り込んで、洒落た雰囲気に溢れている。


ただ洒落ているだけでなく、クラブの鋭いエッジやジャズのインテリジェンスも時折覗かせる、
なかなか聴き応えのあるミックスCDだ。 
 

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Dance Lesson #2 / KARL DENSON

2013年02月07日 | INSTRUMENTAL

ジャケット写真と参加メンバーから、クラブ・サウンド寄りの作品かと思って聴くと、予想は大きく外れる。
全体に、60年代末あたりのソウル・ジャズに対するオマージュとしての色合いが濃いように思える。「今の音」を追求している感じはない。
テナー奏者のアルバムだが、なぜかオルガンのサウンドが際立っていて、オルガンジャズの作品として聴けてしまう。
こういう感じならば、すでにLarry Youngあたりがやっているな、という気がした(60年代末の当時にしてはとてもモダンな演奏をしていて、
今聴いても十分新鮮)。 


#1 dance lesson ♯2
往年のコテコテ風ソウル・ジャズを思わせるイントロと、JTQ路線のアシッドジャズ的なバンドサウンド。

#2 like like dope

これも60年代末ソウル・ジャズ風。オルガンにフルートを合わせる感覚も当時っぽい。DJ Logicによるスクラッチが入ってはいるが、
あくまで装飾音的なものにとどまっている。MM&Wのような攻める感じはない。


#3 rumpwinder

Jack McDuff あたりのコテコテ風ソウル・ジャズから、脂っこさを抜いたような印象。

#4 flute down

70年代あたりによくある感じのマイナー・チューン。タイトルのフルートよりもオルガンとギターの印象が強い曲。

#5 A.J. bastah

John Patton を思わせるオルガンのハーモニーが印象的。4ビートでトラディショナルなジャズをやっている。

#6-7 shorter path ♯1→♯2

♯1は端正な感じ、♯2に入ると8ビートに。バッキングはオルガンだが、なんとなくUlf Sandberg Quartetを思わせるジャズナンバー。

#8 i want the funk

とくにこれといった特徴なし

#9 who are you?

SOULIVE的な楽曲。オルガン(+スクラッチ)をバックに展開されるギター・ソロが印象的。


冒頭の文だけを読むと酷評なようだが、あくまで「現代ぽくない」だけで、アルバム自体はそれほど悪くないように思える。
BGMとして流すぶんには申し分ない。ただし、聴きどころが無いという印象も否めない。総じて無難な内容。

思うに、BLUE NOTEのクラブ・ミュージック路線は、ジャズミュージシャンによる作品はあまりぱっとしない印象(Greg Osbyのそれが
特にそう思う)。
対し、クラブ・ミュージックのミュージシャンがジャズ色濃くやっているようなもの(St.germain、Marc Moulinなど)のほうが
実り多い作品を残している気がする。


【参考アルバム】

Greg Osby『3D Lifestyles』


John Patton『Understanding』 


Larry Young『Into Somethin'』


Ulf Sandberg Quartet『Ulf Sandberg Quartet

 

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The Modern Sound Of Nicola Conte / NICOLA CONTE

2013年01月03日 | INSTRUMENTAL

Nicola Conte プロデュースによる “ジャズ作品集” といったところ。
『Other Directions』は彼の率いるジャズ・コンボのアルバムだったが、本作はそれにとどまらず、彼が曲を書いたりプロデュースを行ったりした
楽曲を広く採り上げている。


とはいえ、それらがとっ散らかった印象にならず統一感を持っているのはさすがとしか言いようがない。

Incognito の Bluey や、Opaz のRay Hayden に通じる、独自のサウンド構成力というべきか。

『Other Directions』と同じく、一聴するとオールド・ジャズのマナーに則った演奏が展開されている。
打ち込みでなく生演奏ではあるのだが、その演奏一つひとつは計算され尽くした、クールな印象。


古く臭さを感じさせないのは、やはりクラブ・ミュージックを通過した上でのこのスタイルなのだと思わせるアレンジだからか。

ハウスやドラムンベースを意識したようなビートのとり方は、若干ワンパターンと感じなくもないが、
ジャズファンもクラブ好きも違和感なく聴けるのではないだろうか。


カテゴリをINSTRUMENTALとしたが、実際には唄モノが多い。 

初っ端(CD1の#1)に# Stolen Moments のヴォーカルヴァージョン! 
まずこれにびっくりしたのだが(そんなものがあるとは思いもよらなかった)、Mark Murphy の渋い声が非常にカッコいい。

すぐ後(同#3)には Akiko が登場。 スタンダードである Mood Indigo を貫禄充分に歌い上げている。

前半のハイライトは、万波麻希によるLotus Sun(同#10)。
Nicola Conteが彼女のアルバム用に書いた曲だが、軽やかなビートと不思議な存在感を持つ彼女の声質がうまくマッチして、
なんとも妖しげな魅力を放っている。


後半のアタマ(CD2の#1)は、Till Bronner が歌う So Danso Samba。こういう楽曲配置も絶妙だ。
Take Five(同#6)はピアノのサンプリング音源を元にホーン隊がアンサンブルやアドリブを繰り広げる、イマっぽいアレンジ。
後ろのほう(同#11、#12)には須永辰緒の名前があったりと、意外な発見もあるお得なアルバム。 

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Blue Note Trip / DJ Maestro , JAZZANOVA

2012年01月04日 | INSTRUMENTAL

BLUE NOTEの企画コンピレーションは数多いが、これはミックスCDとも言えるし、コンピレーションとも言えるシリーズ。
BLUE NOTEの音源を新旧取り混ぜ、選曲者のセンスで繋いで紹介する、という趣旨のようだ。

選曲者はDJ Maestro と JAZZANOVA。



DJ Maestroについては、この『BLUE NOTE TRIP』以外での活動を知らないのだが、
このシリーズはもはやDJ Maestroのものと言えるくらい数多くのCDを製作している。
SOULIVEやRonny Jordanなど現在のBLUE NOTE在籍ミュージシャンの作品を多く取り上げているのが特徴といえるだろうか。

Saturday Night & Sunday Morning / DJ Maestro


1作目(黒いジャケット)は、とにかくこの手の企画では外せない有名曲を取り上げている。

US3の「Sooky^2」で有名なGrant Greenの「# Sookie Sookie」、
Stevie WonderのカバーであるGene Harrisの「# As」、
そしてスカイ・ハイプロダクションの名曲、Gary Bartz「# Music is Sanctuary」。

ここらへんは、BLUE NOTEの企画コンピレーションでは定番とも言える曲だ。
(有体に言ってしまうと食傷気味とも。montaraなど、何回聴いたか分からない!)。

“ いかにもジャズ ” な曲は少なく、あえて “ ジャズっぽくない ” 曲をセレクトして
ジャズに馴染みのない人にも楽しんで聴けるよう
配慮された作品。
それは Minnie Riperton やTaste of Honey といった、ジャズよりもポップ傾向のあるシンガー・グループの曲を
取り入れていることからも
窺える。 

先に書いたとおり、最近の作品からもピックアップされていて、それは例えば
1枚目の最後の2曲 St.Germain ; # Rose Rouge → Ronny Jordan ;# London Lowdown
の流れなのだが・・・

この2曲は、DJ Smash も『Phonography』で並べたラインナップ。
順番は逆だが、使用したバージョンも同じ。正直、ちょっとガッカリではあった・・・。
ただ、特筆すべきは順番を入れ替えたことで(しかも最後に持ってきたことで)、# London Lowdown が
フルレングスに近い状態で聴けるようになったことである。

テクノ/ハウスの人気DJ、Jou Claussell によるこのリミックスはヴァイナルにしか収録されておらず、
ターンテーブルを持たないRonny Jordan ファンは押さえておきたい1曲だ。
DJ Smash『Phonography』のほうは、楽曲がブレイクした時点でカットオフしていくのだが、このブレイクの後ドラムソロがあり、しばらくすると
Ronny Jordan がギターをポロポロと弾いてドラムソロに絡んでくる。
ここは完全にこのヴァージョンでしか聴けないものなので、フレージングなど余さず採っておきたい人はマスト。


Sunset & Sunrise / DJ Maestro


2作目(赤いジャケット)を聴いた感じは、さきの印象がより強まった。
“ BLUE NOTEレーベルにある、ジャズじゃない作品” を選んだようなラインナップである。

いわゆるレア・グルーヴ的な選曲と言えるが、それならば音源をBLUE NOTEに限定することもないと思うのだが・・・。
しかも、(最近の作品からの曲はとくに)アルバムタイトルになるような代表的な曲を選んでいるので、
たとえば SOULIVE や Charie Hunter など、このブログで紹介しているようなミュージシャンの
オリジナルアルバムを既に持っている人には、新鮮味が足りない。
DJ Maestro が独自にリミックスをしているわけでもないので、曲がダブってしまい、なんとなく損したような、期待外れな印象。

サンプラーとして捉えればこれはアリだが、出来ればこういう企画では
アルバム収録曲のなかで目立たずともカッコ良い曲、というのを選んで欲しかったと思う。

Goin' Down & Gettin' Up / DJ Maestro


3作目(黄色いジャケット。2作目よりはDJとしての腕を発揮しているようには感じた。
ビートの近いもの同士をクロスフェードで重ねたり、コード進行が似ている曲を並べたり・・・と、違和感なく流れていく。 
Incognito がカバーしたことで有名な# Always There のオリジナルヴァージョン(Ronnie Lawsによる)が収録されている。

Gene Harris の# Los Alamitos Latinfunklovesong が収録されているのだが、これはJAZZANOVAの作品(このページ一番上)にも
収録されている。まあ選曲者が違うし、カブることなどあって当然とは思うが。

選曲の傾向は上記2つと同じなのだが、 とくに70年代の作品からの選曲が気になった。
レーベル傘下とはいえ、EMIやCapitalから選曲するのは、果たして「BLUE NOTEの作品」と言えるのかどうか・・・? 

ただ、Lee Morganの# Sidewinder やKenny Burrell # Midnight Blueなど有名曲が、アドリブソロをカットせず
しっかり収録されているので、これからBLUE NOTEのジャズに手を出そうと考えている人にはいい入門編といえるかも知れない。
DJ Maestro選曲による上記3枚の中では、この作品が一番良かったように思えた。


もう一人の選曲者は、JAZZANOVA。

Lookin' Back & Movin' On / JAZZANOVA


JAZZANOVAはドイツのDJ・プロデューサー集団で、彼ら名義のアルバムもリリースしている。
ジャンルはテクノ/ハウス系、ということになろうか、ジャズの影響を感じさせる音作りをしている。

第1弾の↑(茶色のジャケット)は、60年代後半の4000番台末期~70年代のBN-LA時代の音源を中心に、まんべんなく選曲した感じ。
有名ネタもいくつかあるが、後年になってリリースされたレアトラックもピックアップしている。

JAZZANOVA の手による独自のリミックスは無い。
この企画では、あくまで彼らのセンスによる選曲を楽しむものなのだろう。
意外性のあるつなぎ方やマッシュ・アップ等も無く、無難にまとめられた印象。ラテンナンバーが多く入ったところに、MAW的なテイストも感じる。
有名どころも押さえているが、マイナーな曲に彼らのこだわりが垣間見える。
レコードを模したCDレーベルもなかなか良い。


Scrambled & Mashed / JAZZANOVA


このシリーズのJAZZANOVA第2弾(白いジャケット)は、ジャズ色を極力排してコンテンポラリー色を前面に押し出しているセレクトとなっている。
「BLUE NOTEにはこんなのもあるんだぜ!」というような気概に溢れている(実際にはCapitolレーベルなのだが)。

Gene Dunlap や
 Taste of Honey など、BLUE NOTEのコンピと言うよりは『Free Soul』シリーズの70年代盤を聴いているような感覚だ。
Bob Doroughの # Three is a magic number (3の段のかけ算の唄) までも網羅していることは、特筆に値する。
もちろん、レコードを模したCDレーベルも健在。レコード盤面に映り込むツヤまで再現している徹底ぷりだ。


両者ともBLUE NOTEレーベルに対する深い愛が感じられる内容だが、好みを言うと
DJ Marstroの3作目(黄色盤)とJAZZANOVAの1作目(茶色盤)をよく聴く。

ハウスやヒップ・ホップなどクラブ・ミュージックが好きで、ジャズにも興味があって「名盤」と云われるジャズ作品を
聴いてはみたものの、なんとなくいまいち・・・という向きには、この二つがオススメできる。
ジャズ色はしっかりとあるが、そこは現役クラブ・ミュージックのクリエイター。現在のセンスで美味しいところだけを聴かせてくれる。

近年、こうした動きはBLUE NOTEレーベルに留まらない。
Verveも似たような企画で作品をいくつか出しているので、機会があればそちらもレビューする予定。

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A Brighter Day / RONNY JORDAN

2011年11月25日 | INSTRUMENTAL

『アフター8pmの男』。

アシッドジャズ・ギタリストの第一人者、Ronny Jordanの、BLUE NOTEレーベルからの作品。

冒頭の言葉は、この作品、またはこの次作がリリースされた頃に(おそらくレコード会社から勝手に)名付けられたアダ名だったように記憶しているが、
本人はその後、まんまのタイトルでアルバムをリリースしているのだから、案外とそのアダ名を気に入っていたのかも知れない。

読んで字のごとく「夜8時以降」、つまり夜のオトナな雰囲気にぴったりな音楽、という意味だろう。
たしかに、この人の作品はしっとりとメロウな曲が多く、それは夜、とくに夜中の静まりかえった時間にふさわしいと感じる。

しかし、本作はまだ日の光が残る夕暮れ時、トワイライト・タイムから聴き始めるのが最もよく合うと思う。

#1 A Brighter Day はタイトルトラックでもあるが、女性ヴォーカル(Stephanie McKey)をフィーチャーした歌もの。
過度に増幅された感じのウッドベースが、HIP HOPっぽさを演出する。

#4 MackinではDJ Spinnaをフィーチャリング。
その後、中盤まではHIP HOP的アレンジのトラックが続く。

楽曲はミディアムテンポが中心で、ゆったりとくつろいで聴ける。
ジャズファンは、#5 Mystic Voyage に目が行くだろう。なんとオリジナルのRoy Ayersを迎えての演奏!

#7 London Lowdown は、ひた走る深夜の地下鉄、といった風情。 
クラブサウンドでまわりを固めつつも、Ronny Jordanのギターフレーズはジャズテイストに溢れている。
ソロをバリバリ弾き倒す、というのではなく、ギターで唄(メロディ)をていねいに奏でている、という印象。

後半、#9 Mambo Inn からは、エキゾチックなテイストの楽曲が並ぶ。
インドやブラジルなどの、民族音楽的リズムやテクスチュアを取り入れ、クラブサウンドとはまた違う音作りだ。
(前半部最後の曲のタイトルが #8 Two World というのも意味深な気が。勘ぐり過ぎか?)
活気ともの悲しさが同居する、夕暮れ時の市場のような雰囲気がある。

#14にはボーナストラックとして、MCのMos Defをフィーチャーしたリミックスバージョンを収録。
このリミックスもDJ Spinnaが手がけている。

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Other Directions / NICOLA CONTE

2011年02月17日 | INSTRUMENTAL

コラムでも取り上げたが、現在の Blue Note レーベルは伝統的なジャズを紹介する一方で、
ハウスやドラムンベースといったクラブミュージックの要素を含んだジャズの作品もリリースしている。


Nicola Conte は(ギタリストでもあるのだが)コンポーザーあるいはプロデューサーである。
彼はこれまでにもクラブミュージック色の強い作品をリリースしているのだが、
本作は彼のコンポーザー、アレンジャーとしての側面を色濃く出した作品である(2曲を除きすべて彼のオリジナル)。

現代版クール・ジャズ、とでも言おうか。

クール・ジャズは1940年代、過熱したビバップの揺り戻しのように興ったジャズのスタイルである。
即興演奏(それもとても速いテンポで)に重きを置いたビバップに対し、クール・ジャズはアンサンブルやバンド構成を重視した。

本作の楽曲は、ぱっと聴いた感じでは、目新しさを感じない。
出てくるサウンドは、1950年代のハードバップ(ビバップ~クール・ジャズの時代を経て即興・アンサンブル双方を
重視したジャズの形態)そのものである。
バンドは、決してホットなソロの応酬を聴かせるわけではない。淡々と演奏をする。
代わりに聴こえるのは、50年代のブルーノートやプレスティッジのレコードで聴いたような、耳に馴染みのあるアレンジだ。

収録されている13曲のうち、10曲がヴォーカルもの(このことも、アドリブソロを重視しない要素の一つとは思う)。
トランペットの Till Bronner が2曲歌っているが、これを聴いて Chet Baker を想起しない人はいないだろう。


↑裏ジャケットも往年のBlue Noteレコードを意識

はじめに聴いたとき、この作品はいったい何を目指しているのか、よく分からなかった。

現在でもトラディショナルなフォーマットでジャズを演奏しているミュージシャンは大勢いるが、それのひとつなのか?
それにしてはアドリブやコード、調性などへのチャレンジを感じない。
各楽器のソロなど、アドリブかどうかすら怪しいと思ってしまう。いわゆる「書きソロ」では無いにしろ、
ソロフレーズまできっちり譜面に書きこまれているような、隅々まで構成・管理された印象だ。

単に往年の(1950年代の)ジャズを再現したかっただけなのだろうか? 
懐古趣味ならば、カバー集でなくオリジナルで固めた理由が分からない。

なにか新しいものを、というのならクラブミュージック方面へ行かなかったのは何故なのか?
バンドの編成は、いずれも複数管のフロント。
トランペット(Fabrizio Bosso)を軸にテナーサックス(Daniele Scanpieco)、トロンボーン(Gianluca Petrella)、
それにピアノ、ウッドベース、ドラム。時にパーカッションも加わる。
実にトラディショナルな編成といえる。ターンテーブルもエフェクターも登場しない。


しかし、目新しさを求めてクラブサウンド、という方向性自体が、すでに古い気もする。
もちろんそれ「だけ」ではダメで、そうする必然性のある、それならではの表現を模索するべきなのだが、
やはりこの方向性はすでに行き詰まりかけているのかも知れない。

タイトルの意味は、そっち(クラブサウンド)ではない方向へ行ってみた、ということなのだろうか。



本作には2枚組バージョンが存在する。
日本で主に流通しているのはBlue Noteのロゴが付いたものだが(しかもCCCDである)、
もとはSCHEMAレーベルの作品で、2枚組バージョンはBlue Noteロゴの代わりにSCHEMAレーベルロゴが付いている。

Disc2には別の楽曲が6曲、Disc1の別テイク・別アレンジ3曲、計9曲が収録されている。
そのうちの1曲(# Charade)は↓にも収録されているが、他は未発表音源またはレコードのみでのリリース曲。
『The Modern Sound of Nicola Conte』 
これもSCHEMAの作品だ。 

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Songs From The Analog Playground / CHARLIE HUNTER

2011年01月27日 | INSTRUMENTAL

8弦ギターを操る鬼才、Charlie Hunter のカルテットによるアルバム。

彼の奏でる8弦ギターは特注で、通常のギターよりもレンジが広く、しかも低い方の3弦はベースアンプに繋がれている。
つまり、自身でベースも同時に演奏する。具体的には、親指でベースラインを奏でつつ残りの指で1~5弦を使ってメロディ、コードを弾く。

そのバンド編成から、ジャズのオルガンを思い浮かべた。
このカルテットは(8弦)ギター、テナーサックス、ドラム、パーカッション。

ジャズ、こと50~60年代のジャズにおいては、オルガンがいる場合はベーシストがいないことが多い(Shirley Scott のように例外もあり)。
そして、なぜかギタリストを伴うことが多い(Larry Young のように例外もあり)。

オルガントリオと言ったら、オルガン・ギター・ドラムの編成を指す。

Charlie Hunter は、そのオルガンとギターを一人で兼ねているようなもの。

しかも60年代のブルーノートに限って言えば、
オルガン → ソウルジャズ → コンガとテキサステナー みたいな図式があり、
本作の編成だけを見ると、「現代に復刻したソウルジャズ」とでも言いたくなってしまう。

かような推論をしてしまうのは、本作がブルーノート作品だからだろうか。


さて、肝心の内容。
ジャケットから、濃いファンクを想像していたのだが・・・これは良い意味で裏切られた印象。
楽曲はどれもくつろいで聴ける、アーシーでファンキーなジャズ。
D'angelo のアルバムで聴かれた心地良いバッキングは、ここでも存分に聴くことが出来る。

Charlie Hunter のベースラインはグルーヴにあふれ気持ち良いのだが、決して聴き手に押しつける感じではない。

パーカッションは良いアクセントで、民族音楽的な感じよりはむしろストリートでストンピングしているような雰囲気を生んでいる。
メロディ楽器がギターだけでは単調になりがちなところにテナーが入ることで、テーマメロディにもアドリブソロにも変化が生まれる。

そして、このアルバムにはゲストを迎えてのヴォーカル曲が7曲あるのだが、そのなかでも、下記の2曲は秀逸だ。

#3 Mighty Mighty は、ご存知Earth, Wind & Fireのカバー曲。
オリジナルはきらびやかなファンクだが、こちらはぐっと地に降ろしたストリートバージョン。
映画『ブルース・ブラザース』で、若き日の Aretha Franklin が切り盛りするソウルフード・カフェの前で奏でられていそうな雰囲気だ。

もう1曲は、Norah Jonesがマイクをとった #13 Day Is Done。
ジャズヴォーカルかどうかは置いといて、彼女の声はやはり存在感がある。
この曲はNick Drakeというフォークのシンガーソングライターの楽曲ということだ(オリジナルは未聴)。
それも、聴く人をホッとさせるような、それでいていつまでも印象に残るような・・・
(#5 More Than This も彼女のヴォーカル。Roxy Music の代表曲のカバーだが、こちらもオリジナルとはまったく違ったアレンジで面白い)。


Charlie Hunter は他にもブルーノートから作品をリリースしているが、ジャケ買いしたものをもう一つ。

『Charlie Hunter & Pound For Pound / Return Of The Candyman』



まずこのジャケット。
Blue Note往年のイラストレーター、アブドゥル・マティ・クラーワインによる『Demon's Dance』や『Blue Mode』を想起させる。

                    
Demon's Dance(Jackie McLean)       Blue Mode(Reuben Wilson)


そしてパーソネル。

こちらも同じく4人編成だが、テナーの代わりにヴィブラフォンが入る(ドラム、パーカッションは別の人)。
ヴァイブは Stefon Harris! ブルーノートの新進勢力の一人(つまりNEW DIRECTION参加組)だ。
ここで John Patton の『Let'em Roll』を想起した。これは、もう・・・買わざるをえない!

こちらはヴォーカル曲は一切無いので、意外に(ジャケットに比して)地味な印象。
ただ、Steve Miller Band の# Fly Like An Eagle がカバーされていることは、書いておかなければならないだろう。

この曲は Seal (R&Bの枠に留まらない個性的な世界観を持っている黒人シンガーソングライター)もカバーしていて、
映画『スペース・ジャム』で使われていた

クールな楽曲は、この編成での演奏にとてもマッチしている。

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