子猫の家出

実は、大晦日の夕方から元旦の夕方までの丸一日、子猫はプチ家出をしました。

ごはんをあげようと思ってケージを開けると、子猫は外に出てきて私の足元の落ち葉にじゃれて遊びだしました。
遊んでいるから…と油断して、そのままケージの中の掃除をしていると子猫は急に走り出しました。

今までも、何度かはこうやって逃げ出してはいたのですが、だいたい木に登ってそのまま降りられなくなったり、植え込みの隅でじっとしていたりで、すぐに抱きかかえることができました。

ところが、この日は逃げ回って、どうしても捕まえることができませんでした。
ごはんで釣ろうと思っても、娘に応援を頼んでふたりがかりでも…

今までとは様子が違いました。
ただ遊んでいるのではなくて、本気で逃げているという感じ。
そしてとうとう、ウチの敷地から出て行ってしまったのです。
姿はまったく見当たらず、しかたなくケージの扉を開けたままにして、ごはんを置いておきました。

おなかがすけば、そのうち帰ってくるよ、と家族はいいましたが、私はもう帰ってこないんじゃないか・・・そう思っていました。

大晦日の夜、何度もケージをのぞきましたが、ごはんはそのままの状態で残っていました。
とてもショックでした。もうちょっと信頼関係が築けていると思っていたのに・・・

出会ってから4ヶ月、そばに置いてから1ヶ月。
えさを運び、うんちを片付け、シャンプーをして、医者に連れて行って・・・
だけど、考えてみれば、子猫にとっては別にありがたいことではなかったかもしれないですよね、そんなことは。
猛烈に痒かったはずの皮膚がかゆくなくなったことが、医者にいったおかげだなんて、猫にはわかりませんからね。
捕まえられて、変なところに連れて行かれて、狭いところに入れられて、へんなのを飲まされて・・・そんな風に思っていたかもしれません。

私のしてきたことは、なんだったのだろう？猫にとっての幸せってなんだろう？
考え込んでしまいました。

元旦の朝、お向かいのガレージでちらりと姿をみせた子猫は、私とライムの姿をみるとサッと逃げてしまいました。
やっぱり戻ってくる気はないみたい・・・

「あんな狭いところに入れられてるのがよっぽどいやだったんだな」「もともと野良なんだから、いいじゃん」
もともと保護に反対だっただんなの言葉がグサリと突き刺さりました。
でも、だんなのいうとおりかもしれない・・・皮膚もほとんど完治したから、もういいか・・・あきらめようか・・・
そんなことも考えていました。


そんな元旦の夕方、「子猫の声がした！！」と娘がえさを持って慌てて外に飛び出していきました。
そして、まもなく子猫を抱いて戻ってきたのです。
えさを置くと子猫はすぐにやってきて、でもえさには口をつけぬままおとなしく娘に抱かれたようです。

娘が「ケージを私の部屋に置いて！！」と強い口調でいうので、私はそのままの勢いでケージを2階の娘の部屋に運び込みました。
ケージに戻った子猫はのどが渇いていたらしく、水をゴクゴクと飲みました。
その様子を娘とふたり、じっと見つめていました。
私の勝手な思い込みかもしれませんが、子猫はちょっとホッとしているように思えました。

やっぱり、里親さんをみつけるまで世話しなきゃ！それが一度手をかけた私の責任だ。そう思いました。

「おとうさんには、この部屋に置いてもらえるよう私から説得するよ。部屋に出して飼うのではなく、基本ケージに入れておくと約束すること。きちんと里親をみつけるまで責任を持たないと保護した意味がなくなってしまうこと。ちゃんと伝えるから。」
娘と約束して、いざだんなへの説得。
元旦で、親族揃っていたことにも助けられて、だんなも渋々といった感じながら承諾。


そんなわけで、今、子猫は娘の部屋にいます。
「この部屋に入ると鼻がムズムズする!」というだんなの言葉を無視しつつ（ああ、本当にちゃんと飼ってくれる人を探さなくては！！）とあせりを感じています。

およそ130枚の年賀状に入れた「里親募集」の小さな写真とコメント。
誰か連絡をくれるでしょうか。
そして、このブログを読んでくださったごくごく少数の皆様の中に名乗り出て下さる方はいないでしょうか？

写真は、まだ見つけたばかりの頃のガリガリにやせたネズミみたいだった頃の子猫です。