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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「枯れ葉」を観る

2023年12月18日 | 映画

池袋のシネ・リーブルで映画「枯れ葉」を観た。2023年、フィンランド・独、監督アキ・カウリスマキ、原題Kuolleet lehdet(枯れ葉)。シニア1,300円、今日は座席は満席であった。こんなことはシネ・リーブルで初めてだが、何かあったのだろうか。若者が圧倒的に多かったのにも驚いた。

この映画は、私の好きなアキ・カウリスマキ監督(66才)が5年ぶりか6年ぶりにメガホンをとって監督した新作で、孤独を抱えながら社会の底辺で生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリーと紹介されている。

フィンランドのスーパーで店員をしているアンサ(アルマ・ポウスティ)は、賞味期限切れの商品を持ち帰ろうとして監視していた店員に見つかりクビになる。一方、アル中気味で勤務中もこっそり酒を飲んで工場で仕事をしているホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)も、あるとき仕事中に酒を飲んでいることがバレてクビになる。その後また別の仕事に就くが同じように酒が原因で長続きしない。

そんな2人が出会い、何となく惹かれ合うが、最初のうちはお互い名前も知らないまま会っていた。アンサは両親・兄弟を父親のアル中が原因で相次いで失い、一人暮らしで生活が苦しい孤独な女性。ホラッパも職場の同僚と酒を飲みに行ったりカラオケに行ったりするが、心が通う友達も家族もいないようだ。

主人公の一人ホラッパはアル中に近い人物として描かれているが、社会の底辺にいる人が、アル中になるというのはゾラの小説「居酒屋」でもいやというほど描かれている。どうしてそうなるのか、その立場になってみないと理解できないが、悲惨なことであろう。日本人は真面目だからこうはならないと思っているが。

やがて2人は名前も明かし、アンサの家で食事をするまでになるが、アンサがホラッパの酒の飲み過ぎを注意すると、ホラッパは他人から指示されるのがいやだ、といって別れてしまう。そしてある日、ホラッパは酒を断つことを決意して再びアンサに会いたいと言い、アンサから直ぐに来て、と返事をもらって急いでアンサの家に行こうとするが・・・・

劇中、アンサの家でラジオをつけるとロシアによるウクライナ侵略で今日も犠牲者が何名でたというニュースが繰り返し聞えてくる。フィンランドはロシアと長い距離にわたり国境を接しており、ウクライナ戦争でロシアの脅威が改めて認識され、つい最近NATOに加盟した。軍事的脅威が相当深刻になっているのが映画でも出ていると言うことか。一方、映画に出てくるヘルシンキの街の方は何十年も前の雰囲気で、アパートや工場やカラオケバーなど場末感が漂っているのがカウリスマキらしい。ただ、相変わらず室内などは貧しくてもカラフルな壁紙やタイルになっているのが面白い。

今回、主演のアルマ・ポウスティ(42)とユッシ・ヴァタネン(45)はカウリスマキ映画初出演ではないか。特にアルマ・ポウスティは美人で、カウリスマキ映画にはちょっと雰囲気が合わないように思うがどうであろうか。こんな美人は男がほおっておかないのではないか。いつものカティ・オウティネン(62)が出てないのが残念だ。そして、久しぶりの新作だが今回はワンパターンのストーリーに飽きてきたな、という感想を持った。何かストーリーにひとひねりほしいと感じた。

アキ・カウリスマキ監督の映画は社会の底辺で経済的に恵まれず、孤独に暮らしている労働者の苦悩を描くものが多い。その労働者が暮らしているヘルシンキの街も何となく殺風景で、経済的にあまり豊かな国ではないのではないかと思えるが、調べてみるとフィンランドは人口550万人、一人あたりGDPは5万ドルで日本より高く、欧州の中では経済の優等生らしい。国全体はそうだが格差が結構あると言うことか。

さて、シネ・リーブルの1階下のフロアーには東武の本屋がある。映画が始まる前に陳列されてる本を見ていたら、若手ピアニストの藤田真央の本が出ているのを見つけた。高そうな紙に写真もたくさん含まれているので購入した。そういえば新聞の書評に出ていたのを思い出した。ヨーロッパの劇場でラフマニノフか何か難しい曲を弾けるかと聞かれたとき、弾けないのに「弾けます」とハッタリで回答してテストの時か公演までに猛練習したようなことが書いてあり、なかなかただの優等生ではないなと感じていたところだ。



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