動物園日和

日々の徒然なる思いを綴ります。

残念な七月

2009-06-25 01:03:58 | 日々のつぶやき
大学のゼミの先輩から昔フィールドワークに行った村へ行くお誘い。

お世話になった村の方に会えるし、友達と行けるし、夏だし、お祭りもあるみたいだし。うーん、行きたい。

彼に電話してその話をすると
「あれ、でも12日ってもう予定入ってない?」

手帳を見てみると確かに12日会議と書いてある。私の字で。

「なんで俺のほうが把握してるの?」

なんででしょう。
手帳に書いておいても見る習慣がついてないからあんまり意味がないみたいです。
みんな手帳ちゃんと使いこなせてて偉いな。
大人への道は遠い。

でもおかげですごく丹波山村恋しくなってきたから近いうち行こう。




遠雷

2009-06-16 23:37:26 | 日々のつぶやき
乗り換えの時間つぶしに寄った本屋で
すぐ脇を女の人が携帯片手にしゃべりながら通り過ぎていく。

「もしかしてそれで電話くれた?うんそう。そうなの、私再婚したの」

大きな声で嬉しそうに話しながら、その人はそのまま本屋を出て、階段をあがっていく。茶色い髪。鮮やかなサンダル。

今日で切れると思っていた定期が昨日切れていたことに気がつく。
往復でしっかり引かれている。


駅を出ると雨が降っていた。
あいにく傘がない。
駅前のコンビニで雨脚が弱まるのを待つ。

なんとなく立ち読みしてた雑誌のマンガの主人公の女子高生は
好きな人が別の人と手を繋ぐのを目撃してしまう。

確かに女子高生は切ない年頃だ。

自分は1年と数ヶ月しか女子高生じゃなかったけど
エネルギーの消耗の度合いを考えたら今も1年ちょっとが限界だった気もする。

「力の入れ方が偏ってるんだよ」

中学生のとき、どうしてもくしゃみを途中で止めてしまう私にクラスメイトが言った言葉だ。


「一事が万事。」

まあそういうこともあるだろう。

大学生の頃、スニーカーを裏返して、靴底の減り方があまりにも偏っていることに気づいてびっくりしたことがある。


力の入れ方。確かにね、と思う。

コンビニを出る。
雨脚が少し弱くなっている。
今のうちに家へ帰ろう。

髪の毛が湿り、二の腕が湿り、脚が湿っていく。

水滴が髪の毛の隙間から額へ流れ落ちる。
スティーブン・ミルハウザーの短編で、こんな風にひたすら雨を描写した話がなかったっけ?

坂道。赤や黄色の車のヘッドライトが道路に滲んでいる。
煌々と明るい古本屋の前を通り過ぎる。誰もいない店内で店員が暇そうに本を読んでいる。右目の下瞼が不随意に動くのを感じる。

突然、空が瞬く。ストロボのように完全に白く。
音はしない。

うろ覚えの、ブラックジャックの話で、ある親子連れの父親が雷に打たれて、でも病院だかホテルだかがストをしている関係でブラックジャックが野外で手術することになる話があった。野外の手術でお馴染みのビニルの透明な簡易手術室の中で、雷雨の中メスを握るブラックジャック。

大雨で巨大な鰻が皇居のお堀から飛び出して日比谷の交差点でのたうつ話もあった。内田百の「東京日記」の中の一話だ。今夜の雨はもしかしたらその程度には降るのかもしれない。

また空が光る。
今度は数秒遅れて音がやって来る。

やがて雷はここへやって来るだろう。
雨は激しく、叩きつける様に降り、稲妻はその輪郭を明確に提示し
音は家々の窓を震わせる。

今はまだ少しの猶予がある。
そう思った瞬間、西の空で光が瞬き、数秒遅れてみしみしと轟音が聞こえてきた。

夜想曲

2009-06-14 23:46:43 | 本の虫
カズオ・イシグロの短編集「夜想曲集」が出ました。
翻訳は前作同様土屋政雄さん。

土屋さんの翻訳好きだなあ。
他の翻訳ではマコートの「アンジェラの灰」とか、オンダーチェの「イギリス人の患者」とか。

イシグロは前回の「わたしを離さないで」より好きな感じでした。
「老歌手」とか、「充たされざる者」を思わせるシュールなタッチですごく好きです。塩田雅紀さんの装画も素晴らしい。多分箱少年の人ですよね?

イシグロ作品読んでると本当に「小説って面白いなあ」って思う。
オンダーチェみたいに言語感覚が鋭かったり、オブライエンみたいにリズミカルだったりっていう派手なところがまったくないのになんでこんなに面白いのかいつも不思議に思う。

でも読んでるとどうしようもなく気持ちが高まる。最早恋愛に近い。
この作家の作品が読める時代に生まれていて良かったなあと思う。






オンダーチェ流

2009-06-10 23:10:57 | 本の虫
マイケル・オンダーチェの新作「ディビザデロ通り」(覚えにくいなあ)を読んでいる。

物語は常に断片的で、作品を全て読み終えても全体像を掴むことはできない。ただそこに濃厚な生の香りだけが漂っている。


彼の小説では肉体を持った人間、息遣いや体臭すら感じられる人間に会うことができる。彼らは情熱的で時に荒々しく、高貴だ。それぞれの登場人物が竜巻のように感情と記憶を纏い、時折それらの渦が激しく交わる。彼らは愛し合い、傷つけあい、損ない、贖う。

オンダーチェの作品には中心に必ず愛がある。
その愛は慈しみの愛ではなく、時には恋人同士はおろか周りからも何もかも奪ってしまうくらい激しく致命的な愛だ。

彼の小説を読むことは水泳に似ている。
深い集中と、肉体的疲労。
得体の知れない何かとの戦い。鍛錬。
いつもとは違う器官を使っているような感覚。
恍惚感。

水から上がると、世界を組成する成分がさっきとは少し異なっている。

一人の人間は、一つの宇宙のようだ。
無限で、果てが無い。

作家の筆は意識の深淵を覗き込むように繊細に人間を描く。

IQ。

2009-06-04 22:49:21 | 本の虫
発売されるまでIQかと思ってました、春樹の新作1Q84。今日読み終えました。

主人公の出身大学が自分と同じなのでちょっとテンションが上がるも本筋には全く関係なく(笑)

読んで思うに
春樹作品にこれまで登場した

羊(羊をめぐる冒険)
入り口の石(海辺のカフカ)
意識の娼婦(ねじまき鳥クロニクル)
みたいなモチーフの持つ役割が
リトルピープルとかパシヴァとかレシヴァとかにしっかり引き継がれているので
昔の作品から一気に読むと楽しい感じです。

最近カフカ読み返したばかりだったのでチェーホフと拳銃のくだりとかのかぶりっぷりにちょっとびっくりしましたけど。

あと久しぶりに牛河さんが出てきてちょっと嬉かったです。
ねじまき鳥~で綿谷ノボルの使い走りしていた頃って何年の設定なんですかね。