動物園日和

日々の徒然なる思いを綴ります。

湖上の出逢い

2007-09-20 23:08:05 | travelers-high(旅行記)
ケルンから列車であっさり国境を越え、スイスはチューリヒへ。

チューリヒは湖畔の町。
ユーレイルパスを持っていればチューリヒ湖の遊覧船にも乗ることができる。
これは乗るしかないでしょう。

午後五時過ぎ、1時間50分周遊型に乗り込む。
湖上で優雅に夕食を。鶏肉・・多分鶏肉ね、よしよし。みたいな感じで
アバウトにドイツ語のメニューで頼んだら。
山盛りのフライドチキン。山盛りのフライドポテト。
厨房、注文入りました!
よし、揚げて揚げて揚げまくれ! 
そんな感じでしょうか。もう揚げなくてよろしい。

ともかく景色を楽しむ間もないまま食べて食べて食べて30分。
ようやく食べ終わり、オープンデッキから湖上を見渡せば、
そこにはセラドングリーンの美しい水面が広がっていた。

が、ふと目を元に戻すと、向かい側にはにかみつつ佇む人影。
ぱっと見たところインド系の人にも見える、褐色の肌に暗いスーツが似合う長身の男性。確か彼は隣のスイス人らしき父子と相席していた男性・・。

彼「ここいいですか」
・・・・できれば一人でゆっくり写真を撮ったりしていたいんだけどな。もしくは、もっと早く来てフライを食べるのを手伝ってくれればよかったのに。と思いつつnoと言えない日本人な私。

彼「どちらから?」
私「日本です。どちらから?」
彼「アフランド」

・・・・アフランド?
「ポーランド?」「NO」
「オーランド?」「NO」
「アフランド?」「YES」
「どこの近くですか?」「ドイツ」
「(地図を出し)指差していただけます?」「ここ」
・・・てドイツ国内ですけど。ドイツ国内で「ドイツの近く」って表現がよくわからない。その後も、私の英語力のなさと、彼のなまりが強い英語での意思疎通はなかなか難しく、会話は膠着状態に。
博物館に一緒に行かないかだのホテルはどこに泊まっているかだのをやたら深刻なトーンで聞かれ、丁重にお断りさせていただく。(どのホテルに泊まっているか聞かれて数㎞離れた岸を指し「あっち」で果たして丁重なのかは、この際置いておこう。)

こういうところで声をかけてくる人は、話好きな人だから、別に以後のことに無理に繋がらなくても、その場は楽しく終わらせればいいと思うんだけど(←基本的にはその場は和やかに終わらせたいタイプ)、この時は本当に気まずかった。ともかく雰囲気が重い。彼みたいな根明とは言いがたい青年と私のように引きやすい人間が船で相席はハードルが高すぎるのだ。

視線を上げると彼の凝視。
昔、ギリシアには目があった人間を石にするゴルゴンという怪物がいた。ふと、そんなことを思い出すチューリヒ湖湖上。もう、見たら最後!くらいに高まる緊張感。
っていうか湖見たいのに、空気が重すぎてろくに風景も見られないんですけど・・・。

気がつくと、さっきまで隣でパパとアイスを食べていた2歳児くらいの男児が、我々を挟んで隣のテーブルへちょこちょこと歩いていく。

見れば隣のテーブルでは男児と同い年くらいの女の子が、ゴージャスな風車をまわしつつにっこりしている。
女の子は、ちょっと歩いてはたまに思い出したようにこちらを振り返り、男児を奥へ奥へと誘い出している模様。

男子諸君、湖を見るんだ湖を!!!


ちなみに。次の日はメキシカンの陽気な男性に「あなた日本人か?」と日本語で話しかけられた。ATMを探していたらしく、案内してあげる道すがら話したところ、ルームメイトが日本人なので日本語が上手いらしい。
「俺のルームメイトの友だちも君と同じ名前だけど、彼女、もっとちびっちゃい。」等数々の素敵トークを繰り広げ、さくっとメアドを聞く懐っこさ。そしてこちらの僅かな躊躇を見破り、「はっはっーん。さては英語のメールが苦手なんだな?(←その通りです)」とあっさり去っていく諦めの良さ。
うーん、ラテン系って素敵だ。

その日、私は知人にメール(←海外でも使える携帯)をうった。
「私のペーター探しはまだまだ続きます」と。まあ、本音は出会わないでいいから放っておいて欲しい感じですけど・・。




消失。

2007-09-19 23:08:49 | 日々のつぶやき
もう九月だし、記憶が残っているうちに旅行記も進めないと、と長々書いた文章がワンクリックで消失。茫然自失。

何度か体験しているのですが、消えちゃった文章はどこにいっちゃうのでしょうか。さすがに同じ文を書く気もせず・・なんか哀しくなってきました。

多分、仕事から現実逃避している罰ですね。明日までにもう少し詰めないと恐ろしい目に・・。ではではまた近いうちに。

螺旋の果て

2007-09-11 23:05:24 | travelers-high(旅行記)
階段、また階段。

ケルン、大聖堂、南塔。

石造りの螺旋階段はどこまでも続いている。
上も石、横も石、視界が狭く、空気が篭っている。

人二人がやっと並べるか並べないか。
上から降りてくる人 下から上ってくる人はひっきりなし

ちょっと休もうものなら下がつかえてしまう。

たまにドアがあって、その前に人一人分の凹みがある。
肩で息を切らした人がつかの間の休息をとっている。

何故人間は高いところへ行きたがるのか。
何故私はケルンについて30分しかたっていないのに
苦行のように石段を踏みしめているのか。
某名言風に言うと、「そこに塔があるからだ」としか言えない

その情熱は、「もう誰も楽しんでいないのに、やめるタイミングを逃してしまい延々と続く深夜のトランプ」に似ていなくもない。

前を行くは、短髪碧眼、爽やかなドイツ人男性だ。
くっくっくっと勢いよく、リズミカルに上っていくナイスガイ。(※死語、最近職場でガイをつけるのが流行っている影響)

上へ上へ。窓のない塔は薄暗く、ひんやりしている。
先にいた人たちが途中で脱落していく。

と、これまで順調なペースを保っていた前のガイの足取りが重くなってきた。
頑張れ、ガイ!君のペースが落ちると、私のペースも乱れてくるんだ。

そんな彼と私を励ますかのように、ふいに空気の層が変わった。
(あと何段か上には、確かに外の空気がある・・・!!)
彼もそう感じたのだろう。彼の足取りに力強さが甦る。
そして、唐突な光。視界に広がる空間。

・・・来た!

その時、彼の口元にも、私の口元にも、同じ種類の微笑が浮かんだことは否定しまい。そう、我々は生き残った。この鬼のような螺旋階段を、ついに踏破したのだ。

人類皆兄弟。幸せなら手を叩こう。
そう、言葉なんかいらない。目の色が違ったって分かち合える。

我々の微笑は更なる進化を遂げ、最早笑顔といっていい領域にまで踏み込んでいた。


そして。私は見た。
次なる試練を。
彼も気がついた。
フロアの奥、さらに上へと延びる螺旋階段を。

彼は薄く引きつった笑いを片頬に貼り付けたまま
無言で私に道を譲った。

ええっ・・・あなたが無理なのに、この小娘が行けるとでも?
そんな、手まで示してレデイファースト風にされても。

映画や物語では、旅を続けられなくなった者が、仲間にすべてを委ねひっそりと息絶えていくシーンがしばしば描かれる。

ようし。君の分まで、ケルンの景色を目に焼き付けておこうじゃないか!!!
私は力強く、次なる一歩を踏み出した。
とっとっとっ。
リズミカルに上っていく。
とっとっとっ。とっとっとっ。
とっとっとっ。とっとっとっ。・・・・・ん?
すぐ背後を嫌がらせのようにぴったりつけてくる者がいる。
車間距離でいえばわずか1m。
疲れてちょっとでも立ち止まろうものならぶつかってしまいそうだ。
あっ、さっきの人じゃん。

どうやら今度は彼が私をペースメーカーにしているらしい。
もしかしたら、私もこんな感じで背後からプレッシャーかけてた?
いや、だって最初のうちは込んでて後ろが詰まってたんだもん。
私今、復讐されてる?

渡る世間は鬼ばかり。昨日の友は今日の敵。
大聖堂の螺旋階段で繰り広げられるこの地味な戦いは過酷を極めた。

しかし、その戦いと螺旋の果てに現れた青空はとてもすがすがしかったことだけは書いておきたい。その展望台への最初の一歩が彼のサンダルではなく私のスニーカーだったことも。

まあ正直、景色はプラハの聖ウィード教会の尖塔からの眺めの方が良かったことは、悔しいのでちょっと秘密にしておきたい事実だ。


バスと台風

2007-09-06 23:23:11 | 日々のつぶやき
関東を巨大な渦巻きが取り巻いている。

バスの周りは水しぶきで霞んでいる。
車体は隈なく水で覆われ、バスの乗客は水族館に来たときみたいに大きな窓を見上げる。

ディズニーランドのジャングルクルーズで、滝の裏側を通ったときのことを思い出した。たまたま乗り合わせた運命共同体の台風ツアーズ。

それにしても。
水の膜に包まれると、どうしてこんなにうっとりと眠たくなるのか。
羊膜と胎児の記憶。

ふいに、ドアが開き、ずぶ濡れの、もう何かを通り越した後の大笑いでサラリーマンが駆け込んでくる。

そうそう。
子どものときに、何かにあんまり圧倒されたときに、最初に起こる衝動はいつも笑いだった。
兄弟げんかで兄に手ひどく殴られたとき
クラスの誰かの言動が本当に頭にきたとき
何かの掛け金がふっと緩んでただ爆発的に笑いが訪れる。
涙がこぼれるぎりぎりのタイミングで
喉元に笑いがこみ上げ、見る見るうちに口角があがっていく。

お気に入りのシャツが瞬時にずぶ濡れになり
高かった革靴が排水溝から溢れた濁流に埋まり
超軽量折り畳み傘が複雑骨折したときに人はどうするか?

わらうしかない。
台風は小さく無力な大人たちを子どもに戻していく。



小さい頃、台風が来るとわくわくした。
窓の外は別世界
身体的不快感が伴わない、胸が騒ぐ非日常

浸水とか土砂崩れとか身近な誰かの深刻な被害を経験したら、そんな不謹慎なことは考えられなかっただろうけれど、
台風が、関東の私の町まで、勢いを保ってやってくることがそんなになかったので。


今日はすごい。
空が鳴っていた。
空が鳴るのなんか滅多に聞けない。

風が両手で木々をなぎはらっていく。

雨が現代音楽のように変則的なリズムであちこっちから吹き込んでくる。


知っている村に避難勧告が出たと聞いた。
台風に限らず、自然との闘いというのは、経験した人でないとわからない大変さなのだろう。
なんだか申し訳ないくらいそういう経験をしたことがない私は、どうかあの優しい人たちの村が壊されませんように と、いつになく激しい雨音を聞きながら、小さく小さく祈っている。

ウィンナーの後に・・・

2007-09-04 22:45:17 | travelers-high(旅行記)
夜 迷子 IN フランクフルト 

迷った。
迷ったぞ。

こんなわかりやすい町なのに。
さっきまで余裕で写真とか撮ってたのに。

高いビル。
遠くから見てるだけだったのに、どんどん
どんどん どんどん 近づいてくる。

ホテルから見たときはすごく遠くにあったのに。

ってことは・・・・遠のいてる?どんどんホテルから遠のいていくところかい?

まだドイツ二日目。時刻は夜9時半をまわっていた。
サマータイムのドイツは9時くらいまで明るい。
が、9時過ぎると急激に暮れる。
普通に夜だ。

メインストリートからはとうにはずれ、人通りはあくまで少ない。
たまにすれ違う人がいかつい格好系の男性3人組みとかで、結構緊張する。

おかしい、道さっき聞いたんだけどな・・・。
道路標示もこっちだったんだけどな。

「あの~すみません・・・」

やっぱり間違っていたことが判明。
もう10時過ぎ。駅が見えたときには本当ほっとしました。方向音痴なのに何の確信もなくどんどん歩いていくレミングのような習性をそろそろどうにかしないとまずいと思いました・・。
あと、道で迷っている人には親切にしようと思います。