本書は、その題名や「TPPへの参加など、論外です」(248頁)にあるとおり、日本のTPPへの参加に反対する立場から書かれている。
著者によれば、TPP賛成論者は、「基本的な事実認識の誤りがあまりにも多すぎ」(日本の平均の関税率が米国のそれよりも低いこと等)、「経済運営の基本をあまりに知らなすぎ」(更なる貿易自由化と輸出推進は現在の日本のデフレを悪化させるだけ)、リーマンショック後の世界経済の構造変化及び(それに伴う)米国の戦略の変更を「まったく見誤っている」そうだ。TPP賛成論者による本書に対する反論を是非聞きたいものだ。恐らく、賛成する理由は米国との関係を好ましい状態に維持したいということだけになるのではないだろうか。こういうことを、「自虐的」とかいうのではないのだろうか。
本書は、TPPのことをよく知らない人にもわかりやすく書かれているので、多くの人に対してオススメする。本書の内容は、あとがきである「おわりに」に要約されているので、そこから読んでもいい。
なお、著者は、経済産業省から研究者として京都大学に出向中とのことである。