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経営コンサルタントの目で、日々の出来事から、参考になるキーワードを取り上げて、解説したり、情報発信をします。

【5】「農山漁村発イノベーション」と6次産業化・農商工連携

2024-07-29 22:53:42 | 独り言
国の農林水産業に対する支援策の内容は毎年改善されていきますが、平成4年から6次産業化を発展させて、「農山漁村発イノベーション」事業としての取り組み支援を推進することになっています。ただ6次産業化の本質に変更はありません。
 6次産業化総合化事業を推進するにあたり、いつもお話することがあります。事業で成功するためには、まず1次産品の生産に成功する必要があります。成功とは、消費者が求める安心安全でおいしい農産物がまずできていることです。そこに「ストーリー」がないと1次産品は売れません。もったいないからB級品をジュースやジャムにという発想は全国にありますが、一農家でそうした商品を加工しても成功するでしょうか。毎年どれほどB級品のジュースやジャムが生産できるでしょうか。1次産品の生産効率が良い年はどうなるでしょう。そうしたB級品である商品をブランド化するのは至難の業です。消費者が「B級品で作ったジャムですが」とか、「ジュースですがいかがですか」と言われて購入するでしょうか。さらには、家内手工業的な「工場」で衛生管理の行き届いた安心安全の確保は本当にできるのでしょうか。小さな虫や埃など、さらには髪の毛1本混入しない設備になっているのでしょうか。道の駅でオリジナル加工食品をレストランの厨房などで作っているところがあります。ドアは1枚扉、「虫さんいらっしゃい」の状況で、百貨店やスーパーなどのバイヤーがその商品を購入するとは思えません。もし小さな虫が入っていたら、クレームの元、バイヤーはそうした状況は事前に防ぎたくなるものです。
 6次産業化を進めるためには、何度も申し上げますがまず1次産品である農産物をしっかり栽培する必要があります。そこに「ストーリー」があり、「ブランド化」ができれば、2次加工品についても、販路開拓は比較的行いやすくなります。ただし、家内手工業的な環境ではいくら保健所の認可を受けても、簡単ではありません。都道府県やJAの方に提案するのですが、いろいろな農家の味はおいしくても商品化できない1次産品を集め、しっかりと衛生管理等がされた加工場で2次産品への加工を行うことをなぜしないのでしょうか。現在6次産業化では加工を自園でなく安心・安全な加工場に委託することも許されていますが、「餅は餅屋」という言葉があるように、しっかりした管理下で製造することのほうが重要です。しかも、供給量をまとめることで、販路の拡大が見込めます。令和5年度の農水省の農山漁村振興交付金の内容を見ても、「農山漁村発イノベーション対策」として、農林水産物やの農林水産業に関わる多様な地域資源を活用し、新事業や付加価値を創出することによって、農山漁村における所得と雇用機会の確保を図る取り組みを支援する目的で、6次産業化を発展させて、
農林漁業者はもちろん、地元の企業なども含めた多様な主体の参画によって新事業や付加価値を創出していく「農山漁村発イノベーション」としての取組を支援することになっています。ただ、6次産業化の認定を受けさらに施設整備事業へと展開する支援は従来通りでハードルが高いです。前年に各都道府県で次年度の施設整備事業に関する予算化を図っておく必要があり、農家や農業事業者にとって申請書の作成、その審査などに大変手間がかかるからでもあります。
6次産業化を推進するため加工品を作りたい場合、
①同じ加工品づくりを近所の農家と連携し共同で行う
②その際、「加工場」としての環境を整備すること、もしくは安心安全管理の行き届いた専門の加工場に委託すること、自身で加工場を管理する場合は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を実践すること
③連携や共同でできない場合は、単独で委託できる安心安全な衛生管理のできた「加工場」に依頼すること
④資金的にゆとりがある場合には、自園で身の丈に合った、将来の拡張を考慮した「加工場」を設置すること
などが、選択肢として考えられます。
しかし6次産業化に挑戦する場合、最初のハードルはここにあります。
実は施設整備事業に関して、「六次産業化・地産地消法に基づき、農林漁業者の組織する団体等が作成した総合化事業計画等の実現に向けて、加工・販売施設等の整備を支援」とあり、従来の農家や農業事業者では難しくなっている点です。一番見直しを図ってほしい部分ではあります。
さらには計画した商品が消費者目線で、受け入れられる商品づくりになっているのか、よく判断する必要があります。
 2次加工においても、キーワードは「連携」です。それなりの圃場の広さを持たない農家では、自園で残ったB級品や1次産品を処理するのではなく、栽培方法の似通った近隣の農家といかに連携して、売れる2次産品の加工を行うか、そのほうがブランド化を図りやすく、知名度の向上にもつながり、販路開拓も進めやすくなります。自己完結型で行う場合は、1次産品にも優れ、しかもその一定の割合を2次加工に回すくらいでないと成功しません。B級品では供給量も限られ、販路開拓もむつかしくなります。
しかしもったいないのですから、その処分の方法について、工夫が必要となります。自園のみで考えないことが大切です。もちろん資金的にも余裕があり、広い栽培面積を誇り、それなりに2次加工品としての供給量が確保できるのであれば、ぜひ直接加工から販売まで挑戦していただきたいものです。そうした場合に、6次産業化に関わる補助金は、農商工連携も含め大いに活用の仕方があります。では小さな圃場でB級品の取り扱いはどうすればよいでしょうか。それはそれで方法があります。例えば、しっかりとした衛生管理の下、ジャムやジュースに加工して、自園訪問者や取引先に販売したりギフトとして配布したり、道の駅などに出荷するなどの方法があります。その際、出来上がる量で工夫する必要があります。
 ここで注意していただきたいのは、農商工連携といっても、国が支援するものと都道府県で行うものがあるということです。(年度によって異なる場合があるので、注意してください。)国の支援を受ける場合はかなり申請へのハードルが高く、商品は国内で初めて生産されるような新規性が求められます。現状国内初の新規性ある商品開発はむつかしくなっていると思われ、中小機構の担当者に問い合わせをしたところ、最近は新規性についてはあまり問わないとの話ではありました。確かに直近の認定結果を見てみると、新規性のない案件が認定されているケースも見られるようになってきています。それでも平成5年度2月の農水省発表では全国で1件愛知県の認定でした。
 少し詳しく申し上げますと、農商工連携は6次産業化の一形態ですが、農業者が生産・加工・販売を一体的に行う狭義の6次産業化とは内容が異なります。 
 6次産業化の目的は、農業者が生産・加工・販売を一体化し、所得を増やすことにあり、当初農業者と商工業者がお互いの技術やノウハウを持ち寄り、新商品開発などを行う農商工連携は含まれていませんでした。 
農水省の説明によると、『「6次産業化」とは、農業者が生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)、流通・販売等(3次産業)に主体的、総合的に関わることで、付加価値を得ようとする取り組みのことで、「農商工連携」とは、農林水産業者と商工業者がそれぞれの経営資源を持ち寄り、新商品・新サービスの開発等に取り組み、それぞれの収益拡大、消費者の便益向上、さらには地域経済の活性化や食料自給率の向上を目指す』というものです。
両者の大きな違いは「6次産業化」が農林水産業者を支援対象としていることに対し、「農商工連携」は商工業者と農林水産業者の「連携体」を支援対象としているということです。またハード(設備等)に対する補助金に対しても、「6次産業化」はハードとソフト(試作開発・販路開拓等)の両方を補助金の対象としていますが、「農商工連携」は基本的にはソフトに対する補助金であるということです。
また、農商工連携といっても、都道府県、独立行政法人中小企業基盤整備機構、地元金融機関、農業団体等が出資した「農商工連携応援ファンド」があります。国の支援と比較すると金額的には少なくなりますが、考え方によっては申請のハードルはやや低いといってもよいかもしれません。
さらには地域資源活用事業などを利用してハードにかかわる事業に関しても、国の支援があります。小生はその支援実績で、中小企業診断士として弁護士や税理士と並び経産省の経営革新等支援機関に認定され、事業再生やモノづくり・商業・サービス補助金などの支援活動が可能となっています。
しかし最近、6次産業化総合化事業の申請支援に携わることがありますが、以前に比べ、ハードルが高くなってきた感じがします。農家や農業法人の方でも申請書の記述がむつかしくなってきています。安心・安全に対する要求が高くなり、また申請後の事業の成果を厳しく問われることが原因かもしれません。ハード事業を行う際には当たり前ではありますが、申請前の事前準備にしっかり取り組んでおく必要があります。国や県の少しでも認定しようという気持ちは感じられますが、認定に至るハードルの高さを超える努力が求められるようになっています。ここ数年、年に1件は6次産業化事業への申請のお手伝いをしてきましたが、最近の申請に当たっては農政局の担当の方から非常に丁寧な申請書に対する支援を行っていただいています。申請を受理するためには細かな気が付かない点の指摘などもありますが、何度かやり取りをする中で認定に向けた申請書の「完成」に至り、農家の方に喜んでいただくことが増えてきました。
再び増加していますが、残念ながらコロナの影響もあり最近は伴走支援よりセミナーが多く、個別の支援は「事業再構築補助金」による申請支援の方が増えています。ただこの補助金も12回目が終了、あと数回は続くと予測されますが、加工場建設などに補助金が引き続き13回目も使えるのか、心配な点もあります。ただ事業を拡大し、生産加工の充実を図るためには活用していただきたい補助金ではあります。むしろ唯一といっていい建物に対する補助金のため、前向きに取り組んだいただきたい補助金です。
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