昨日の夜は、仁木英之の小説『先生の隠しごと―僕僕先生』を読んでいました。
大唐帝国の周辺国・南方の諸族は統制の取れていない大唐帝国の軍隊に略奪・殺戮行為を受けていた。
人の姿に戻った蚕嬢の結婚を祝った後、僕僕先生の一行は北西に向かう。
道中で焼き討ちにあった村を見つけて……。
僕僕先生達は光の国と呼ばれるラクシアに立ち寄ることになった。
その国の王・ラクスに求婚された僕僕先生は王弁達に「ボクはラクスの妻になることにしたよ」と告げる。
王弁は混乱して動揺するのだけれども……。
僕僕先生シリーズの第5弾です。
今までは飄々として泰然自若な僕僕先生だったのです。
しかし今巻ではあの僕僕先生が揺れ動き迷い悩むのです。
理想と現実。
現実を無視して理想を急いで追うと大きく歪んで理想から離れてしまいます。
現実だけ追えば理想は無視されることになります。
共産主義と資本主義は実は相反するものではないのですが、共産主義に階級闘争を持ち込んでしまった為に歪んで伝わっているのかもしれません。
構成している人々が全て聖人でなければ成り立たない社会というのは無理があると思うのです。
人の欲は悪い面ばかりではなく良い面もあると思うのですよ。
欲望をコントロールする必要はあるけれども、欲望が無くなったら人は生きてゆけなくなると思うのです。「生きていたい」と思うのも欲望なのですから。
人の欲望を甘く考えたスターリン型共産主義はソビエト連邦の実験で失敗に終わっているし毛沢東型共産主義は中華人民共和国を主義主張をかなぐり捨てねばならないほどの窮地に陥れました。
人の欲望を甘くみるべきではないと思うのです。欲は必要なものではあるのです。
かつての自分が夢見た理想を追っているラクス。
しかし大きな歪みが生じていて理想からかけ離れたところにいる。
僕僕先生はそんなラクスとどう対峙するべきか悩みます。
王弁君は、僕僕先生がラクスの妻になることに茫然自失し嫉妬心にかられながら一見は理想の国家に見えるラクシアの歪んだ部分を知ることになり……。
今巻も面白かったですよ。
続きを読んでみることにいたします。