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「日本にも放射線物質を出す権利がある」

2020年07月14日 | 日本
かつて国際政治学者のハンス・モーゲンソーは「勢力均衡」が国際関係の基本だと考え、均衡を実現するために各国は同盟を結んだり離脱したりすると説いた。外交上の説明はその表面を飾る美辞麗句にすぎないと考えたので、現実主義(リアルポリティーク)論者といわれているが、戦後の日本にはこの考えが欠けている。「友愛」や「共生」などといった言葉が、美辞麗句ではなく実質をともなう政治的言辞として受け止められているのはそのせいである。

だが、これも日本人の覚醒次第である。これまで述べたように、いまの日本は優位戦を展開できる力がある。その力は震災後のいまも変わらない。それを穏やかに進めるとすれば、メディアの力を使った情報戦で日本のPR活動をする。

たとえば「日本クラブ」のメンバーになれば資金を貸すし、技術も教える。日本に協力すればその国のモノを輸入もするというように「日本クラブ」の魅力をPRするのである。国際会議でも摩擦回避、先行譲歩を常とするのではなく、日本が独自の主張を打ち出すのがよい。

たとえば、福島第一原発の事故で低濃度の放射性物質を含む汚染水の海への放出をした際、事前通報がなかったとして韓国とロシアが反発した。とくにロシア外務省は「日本がすべての関係国に対し全面的に情報提供し、さらなる汚染水の海中放出を避ける措置を取るよう望む」とする声明を出した。これは「以降放出するな」という要求である。

たしかに日本政府は危機管理センターの職員すら汚染水の放出を把握していなかったこともあって、外国政府への事前通報や船舶に対する注意喚起など必要な措置を講じられなかった。こうした国内の危機管理センターの不備は改めねばならないが、だからといってロシアに“抗議”されて「はい、スミマセン」と頭を下げるだけではいけない。

自分に都合の悪いことは忘れているらしいので指摘しておくが、ロシアは1993年、日本海で約800トンの液体放射性廃棄物の投棄を行ったことが確認されているほか、前年の92年には、ロシア海軍太平洋艦隊が、日本海に計4回にわたって原子力潜水艦の老朽原子炉など放射性廃棄物を海上投棄していたことがわかっている。

また、旧ソ連時代に生産された化学兵器約12万トンのうち1万5000~2万トンを秘密裏に日本海に投棄したことが、1995年にロシア科学アカデミー研究員のレフ・フョードロフ博士によって明らかにされている。

旧ソ連政府もそれに続くロシア政府もその事実を公表していないが、フョードロフ博士の指摘は多くの旧ソ連海軍関係者の証言でも裏付けられている。ロシアの核廃棄物の日本海への投棄は、日本から老朽化した核兵器の処理施設建設のための資金援助を引き出す目的があったのは明らかで、当時のダニロフ・ダニリャン環境資源相も、「国際的な支援が得られなければ海洋投棄を再開するほかない」と明言していた。

これをもう少し範囲を広げて考えれば、核保有国は日本に対し、「低濃度の放射性物質を含む汚染水の梅への放出」を非難する資格があるのか、という主張もできる。米露英仏中が一体これまでどれほど核実験を行い、大気中や海洋に放射性物質を放出したか。

たとえば、アメリカがビキニ環礁で行った核実験だけでも、1947年に日本海軍の戦艦長門を標的艦にしたことで有名なクロスロード作戦をはじめ67回(もちろん他の実験場でも行っている)、フランスがムルロア環礁で行った核実験は約180回にものぼる。

このような事実を踏まえれば、「日本にも権利がある」と主張するのは国際的にけっして無理のあることではない。表だって摩擦を起こす必要はないが、裏舞台でしておくべきことはいろいろある。外交とはそういうものである。

日本には実力がある。たとえば自衛隊がどれほどの“戦力”を保持しているかは日本国民よりも周辺国のほうが知っている。彼らはその“戦力”に、日本国民が自立や独立の強い意思を反映させないようにさまざまな情報戦を仕掛けてくる。外国からの日本への「抗議」や「不快感の表明」には常にこうした背景がある。「災後」の日本人は、空虚な理想主義や摩擦回避のために先行譲歩を重ねるだけの“お人好し”から脱け出さなければならない。

---owari---
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