信長が自分の存在をおもしろがっていることを久秀(松永)は知っていた。と同時に、興(きょう)を感じているうちはいいが、飽(あ)きればあっさりとうち棄(す)てにされることも見抜いていた。うち棄てられる前に、こちらが裏切るしかない。裏切りという行為には、ある種の麻薬性もあるにちがいない。天正5年(1577)8月、久秀は上杉謙信が加賀一向一揆と和睦し、上洛するとの情報を得た。かれは直前に信長から逼塞(ひっ . . . 本文を読む
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