有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

有志舎の11月新刊、牛米努さん著『近代日本の課税と徴収』です。

2017-10-18 15:43:17 | 出版
有志舎の11月新刊は、牛米努さん(税務大学校)著による『近代日本の課税と徴収』(本体7400円)です。
正直に言って、明治から戦前期の税金についての実に地味~な研究書です。
しかーし!
これまでの税金についての研究って、要は税や税制をめぐる政治史・政策論争史であることが多かったと思います。
それに対し、この本はもっと根本的なこと、つまり戦前の税金というのはどういうものがあって、それがいかなる思想のもとに作り出され、制定されて、どのように課税され、どのようなシステムで徴収され、それに対して人々はどのような税についての認識をもち、どのように納税していたのか、ということを地を這うように明らかにしているのです。
こういう事は以外に知らないものです。
それに、戦前は強制的・強権的に税金をとられていたのではないか、と漠然と感じてしまいますが、そんなことはありませんでした。
大正期のある大蔵官僚(のち衆議院議員)は、「税とはいわば会費である」という認識のもと、納税義務を振り回すのではなく、納税者が税に関する知識を持ち、税金の使途を監視することが必須であると言って「税務行政の民衆化」を提唱していました。カケ・モリ問題などを見ると、現代日本は戦前日本より「退化」してしまったのかもしれません。
このように、
戦前のことを知ることで、現代との比較が初めて出来ますから、この本を読むことによって今の税制や徴収・納税方法や使い道が果たして良いのかどうかも考える事ができる。
それに、税制は社会構造によって異なってくるので、戦前の税制を知ることで戦前社会の構造も分かります。
11月下旬の刊行です。
よろしくお願いします。