有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

藤田進さんとパレスチナ民衆史

2017-01-19 11:22:00 | 学問

最新の『歴史評論』(2017年2月号、歴史科学協議会)の特集「歴史における強制移住・「難民」」に、藤田進さん(東京外語大名誉教授)が論考「パレスチナにおける「ユダヤ人国家」の諸問題」を書いていて驚きました。
驚いたというのは、藤田さんはとてつもなく遅筆で手間が掛かる人なので(2013年に出した「21世紀歴史学の創造」シリーズ第7巻『21世紀の課題』の時も大変だった)、とても雑誌の特集などに書けるとは思っていなかったものですから(笑)。
ただ、これは悪口じゃありません。言っておきますが、私は昔から藤田さんの作品のファンで、唯一の単著『蘇るパレスチナ―語りはじめた難民たちの証言―』(東京大学出版会)は数ある現代史の本のなかでも最高の作品の一つだと思っています。文献資料調査と現地での取材・インタビューによって、ここまでパレスチナ民衆に迫った歴史書は他になく、「パレスチナ民衆史」という分野は藤田さん以外にやっている人はいないのでは?
今回の論考も、2015年にイスラエル占領下のパレスチナに実際に行ったうえで書かれており、相変わらず命知らずの冒険歴史家ぶりで素晴らしかった。
ただ、藤田さんも70歳を過ぎているので、願わくは、彼を嗣ぐような若手パレスチナ民衆史研究者がどんどん出てきて欲しい。

それにしても、藤田さんは人間的にも面白い人なので、今度一杯やりながらパレスチナの話をきかせてもらおうかな、と思っています。
『歴史評論』(2017年2月号)、ぜひ読んでみて下さい。