陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「大神さん家(ち)のホワイト推薦」(八)

2009-05-25 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

「さぁて。僕たちのおもしろコントでもりあがってきたところで、いよいよメインイベントがはじまります!」

「とても盛大な前フリだったね。もうとっくに十年ぶんは疲れたよ…」

「おやおや、本番はこれからなんですよ。ほら先生、カメラの前、笑って笑って~♪」

カズキは気をとりなおして、咳払いひとつ。いつものきまじめな顔つきをつくった。

「しかしだね。きょうはなんでまた、私たちに出演依頼がきたのかね? DVD-BOXの宣伝なら、姫宮くんと来栖川くんがうってつけだろうに。なんといっても、この作品の顔なんだから」

「しょうがないですよ~、先生。ふたりとも、お忙しいんですから。わんこを連れた来栖川さんは、へたれな男子と魂の契約してボクシングで戦ってますし。姫宮さんなんか、ここ数年出ずっぱりで暇なんてとれないんですから。今年も川澄たいへんです」

「ユキヒトくん…それは、番組が違うだろう?!」

「そういや姫宮さん、去年の冬は、ミッドチルダ港湾地域でマリアージュを大量出荷してすっかり疲れたのか、また冬眠しちゃいましたね。月の社でもあんなに寝てたのに」

「魔砲少女のドラマCDの宣伝はいいから! 」

「ああ、そういえば春先には、ストーカー気質のある女子高生のママになってたり」

「だから、番 組 が 違 う ん だ よ !(怒)」

 

ユキヒトの脱線にため息を落としたカズキ。思いついたように、周囲を見渡した。

「そういえば、ソウマもどうしたのかね。せめて、あいつぐらいいれば、役に立っただろうに」

「さあ、どうしたんでしょうね。間島流ギョーザづくりにでも熱中して、遅れたのかな。ほんとうは、三人で収録するはずだったのに」

「君といっしょに巫女服コスプレするのが、嫌だから逃げたんじゃないのか?」 「その点は、ご心配なく。もし、三人出演なら、ソウマさんはアメノムラクモか、タケノヤミカズチの着ぐるみ姿で、後ろでガッツポーズしていることになってますから」

「さりげなく、むごいね(呆れ)」

 

そういえば用意された衣裳は、巫女服の収められた柳箱だけではなかった。隣にいやに大きな衣裳ケースがあったのを思い出す。あれを着込んでサウナ状態で一時間を超える撮影に挑むのと、いまのはずかしい女装とはたしてどちらがマシだろうか。カズキは頭を悩ませてしまった。

 

「そうですか~、うふふ(嬉)でも、ロボットの搭乗者なんですから、着るのは当然ですよ」

「…たしかに中に入ってはいたね」

「そうそう、ロボットがあるってことを知らしめないとね。だって、これ、巫女とロボットという異色の組み合わせが、最初に百合ファンをあざむいて最後に納得させちゃったという、盛大な番狂わせ作品ですから」

「勇者ロボットシリーズかと勘違いしていた者もなきにしもあらず、だ。けっきょく力で勝つことを謳っている作品ではないのだから」

「そうですよねぇ。まかりまちがっても、スーパーロボット大戦の参加なんて無理ですよね~。ロボットアニメじゃないのにね~。ロボットはね、おまけなんですよ。オ・マ・ケ!言うなれば、スーパーのお寿司についてくる紅ショウガ。刺し身の盛り合わせに添えられた千切り大根です。それだけにすぎない」

「おいおい、随分な言いようだね。少数派のロボット好きにも配慮しないのかね」 「ロボットなんて、彼女たちを引き立てるただの背景。着ぐるみみたいな、脱いだらすぐ棄てられるものです。核心なんかじゃないのに」

「ま、本質から外れた場所を好む人間もすくなからずいるからね」

「ソウマさんみたいな熱血タイプも、いまどきいないですよね。今はね、もっとライトな生き方が好まれてるんです。残念だなぁ」

「まぁ、だからこそソウマの存在価値があるのではないかね。姫宮くんともども、見返りのない愛を貫いたという意味において」

「無償の愛ですか…フッ、結果のついてこない努力を賞賛してるのと似てますね」

 

ユキヒトはうっすらと暗い笑いを浮かべた。侮っているのか、楽しんでいるのか、わからない曖昧さがある。

「君、なんだか、皮肉っぽいね。ソウマみたいな者は青臭いとでも?」

「いいえ。彼には僕が忘れたものが失われていないから、好きなんですよ。しかし、みごとに壮大な噛ませ犬くんぶり。アニメ史上、悲惨きわまりない男子でしょうね」

「前半はあいつに分があるとさんざん匂わせていたからね。制作者たちは、視聴者を裏切るのが得意ではあるな。ときどき、あまりに裏をかきすぎて、置いてけぼりにしてるところが鼻についてならないが(苦笑)」

「そうですよね~。嘘ッ!大げさッ!紛らわしいッ!もいいトコですね。JAROに言うじゃろ?」

「寒いギャグもよさないか」

 

 

【目次】神無月の巫女二次創作小説「大神さん家のホワイト推薦」

 

 

 


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