27 日露関係Ⅲ(1945.10~現在) -14-
ⅱ 1957-1984 -6-
■まとめと考察 1/4の2 ~まとめ表再掲~
1 「1956年ごろの冷戦」の描き方
●1956年ごろのソ連と東欧の状況の描き方が不十分 → △ 東京書籍、帝国書院、日本文教。
※《ソ連と近接し、かつ、ほんの10年ほど前に南樺太や千島列島を侵略された日本》にとって、遠い東欧のできごとであっても重大な関心を寄せざるをえないできごとだった。戦後の日米関係を理解するためにも必要な知識だろう。
2 「ベルリンの壁の建設」の描き方
●建設したのが「東ドイツ」であることを書いていない。 → × 帝国書院。
※「できごと」の伝達を目的とする文においては、「5W1H」は基本。そのなかでも、《主語=誰/何:who/whot》はもっとも重要な情報。歴史情報において「主語」の無い文は、それだけで無価値だろう。しかも、この場合は、《政治的動機による”情報隠し”》と疑われても仕方ないだろう。
●東ドイツが「壁」を作った主な理由を違うように書いている。 → △ 東京書籍、日本文教。
※×にしたい人もいるだろう。主な理由は《「相次ぐ西側への人口流出」(≒逃亡や亡命)を防ぐためだった》ことは明らかなのだから。「自由に行き来できないように」という表現は、誤りではないが、中学生が誤解する可能性がとても高い、あいまいな表現だ。
●東ドイツが「壁」を作った主な理由を書いていない。 → △ 5社:自由社、帝国書院、教育出版、清水書院、学び舎。
※上記(東書・日文)のような「誤解」は避けられるだろうが、この歴史事象の場合、理由を書かなければ”必要最低限の歴史的理解”ができないだろう。「5W」=1961年、東ドイツ政府が、ベルリンで、(why)東ベルリン市民を西ベルリンに行かせないために、壁を作った。
過去の闇にまぎれて《もう理由が(よく)わからない》事象も多々あるようだが、この場合、理由ははっきりわかっているのだから、きちんと知らせるべきだ。
そうすると、日本人が、《東ベルリンから逃げ出した市民と、中華人民共和国や北朝鮮から逃げ出している人民の共通性》にも気づけるようになる。
3 「キューバ危機」の描き方
●「キューバ危機」を書いていない。 → × 日本文教。
●キューバ危機の原因(理由)を書いていない。 → × 東京書籍。
※人類がもっとも「核戦争」に近づいた、重要な教訓的事例。現在でも「今、そこにある危機」なのだから、史実をきちんと書くべき。
●アメリカによる「海上封鎖」などの強力な対抗活動があったことを書いていない。 → △ 清水書院。
※米国の行動を書かなければ、「撤去」の理由はわからない。中学生に(も)、敵対性国家間の厳しい現実をきっちりと教えるべきだ。そうすれば、「核ミサイル」をめぐる現在の米朝関係の厳しさもよく理解できるだろう。
~次回、まとめと考察2/4~
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《著者:松永正紀 教育評論家 /h22年度 唐津市・玄海町:小中学校校長会長》
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