A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

やっとレコーディンを終えたので、今度はフェスティバルの舞台にも・・

2017-02-08 | CONCORD
Jazz Prose / The Fraser Macferson Quintet

 今から30年近く前、全国各地でジャズフェスティバルが開かれた。大手企業が冠スポンサーになって、日本の有名グループだけでなく海外からも多くのミュージシャンが集まり、夏の風物詩のひとつとなっていた。最近ではこのようなフェスティバルもすっかり影を潜め、代わりに町興しの一環として、街を挙げてのジャズイベントが開かれるようになった。
 東京では、新宿のトラッドジャズフェスティバルを始めとして、身近な所では阿佐ヶ谷ジャズストリート、練馬、そして我が家のある小金井でも規模は小さいが毎年開催されている。これらの、プロだけでなく地元のアマチュアも交えて楽しいお祭りは、東京だけでなく全国各地で数多く開かれているようだ。それだけ、身近にジャズを聴く機会は増えているのだが・・・。

 昨年、ゴルフ帰りに宇都宮ジャズクルージングに寄ってみた。渡辺貞夫の出身地である宇都宮はジャズファンが多いのか、このイベントは年3回も開かれている。同時に10か所以上でセッションが行われ、地元のミュージシャンが多く、名前も演奏内容も分からないので初めて行くと、まずどこに行くかで迷った。
 プログラムの中に、テナーの岡田嘉満と知った名前が見つかった。村田浩のビバップバンドの一員として、東京だけでなく全国を廻っているが彼の地元は栃木。普段は北関東を中心に活動をしているようで、東京ではなかなか聞く機会が無い。彼のように地方を拠点としているミュージシャンのライブ演奏を聴く機会は、たまたまその地を訪れた時以外ないものだ。

 ローカルミュージシャンの演奏に出会う機会が少ないのは日本だけでなく万国共通。アメリカはともかく、ミュージシャンの絶対数の少ないカナダとなると尚更だ。
 バンクーバーを拠点としていたフレイザーマクファーソンの演奏に惚れ込んだのは、コンコルドのカールジェファーソン。彼が自費出版で出したアルバムをコンコルドのカタログに載せ、新たにアルバムを作るためにバンクーバーにも乗り込んだ。その成果が前作のIndian Summerだ。そして、そのマクファーソンを今度はコンコルドジャズフェスティバルの舞台に引っ張り出した。ロンカーターとジムホールが出演した1984年のフェスティバルであった。

 マクファーソンは単身バンクーバーからコンコルドへ。他のメンバーもギターのエドビケットとベースのスティーブウォレスはトロントから。コンコルドのホスト役でもあるデイブマケンナとジェイクハナはボストンからと、一緒に共演するメンバーは共に東海岸から集まった。

 メンバーはかって一緒に共演した経験があり、演奏スタイルはジェファーソンが最も好むスタイルとなると、大舞台での演奏であってもほとんど打ち合わせやリハをすることなくプレーは始まった。テナーのスタイルはレスター派。日本で言えば、尾田悟といった感じのリラックスした演奏が続く。



 メジャーな世界では無名であったマクファーソンも、地元バンクーバーのスタジオではファーストコールの存在。カナダでも賞を受賞する腕前であったが、レコーディングの機会には決して恵まれていなかった。そんな、ローカルの実力者にもレコーディングやフェスティバルの舞台に上がる機会を与えたのがコンコルドであった。商売っ気抜きで、好きなミュージシャンを追いかけるのがジェファーソンの道楽であったとも言えよう。

 スタイルはフレイザーより多少バップスタイルだが、岡田嘉満のテナーも実によく歌うテナーだ。彼も自費制作のアルバムはあるようだが、今の時代なかなかメジャープレーヤーのアルバムでさえ制作できるレコード会社は無くなった。ローカルで活躍する隠れた名手のアルバムを作ろうというジェファーソンのようなマニアックなスポンサーはいないものかと思う。

1. You'd Be So Nice to Come Home To
2. All Alone
3. On a Slow Boat to China
4. Darn That Dream
5. Happy Man
6. I'll Never Be the Same
7. It Could Happen to You
8. There Is No Greater Love

Fraser Macfherson (ts)
Ed Bicket (g)
Dave Mckenna (p)
Steve Wallace (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Phil Edward
Recorded live at The Concord Pavillion, Concord, California August 1984
Originally released on Concord CJ-269
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スタジオ録音か、それともライブがいいか?オリジナルかカバーか?

2015-03-12 | MY FAVORITE ALBUM
The Japanese Tour / Supper Sax

常識的にはきちんと作られたスタジオ録音のアルバムの方がいいし、カバーがオリジナルを上回ることは滅多にないが、時には・・・。

サックス好き、それもアンサンブル好きにはたまらないグループにスーパーサックスというグループがあった。
有名プレーヤーのアドリブソロをコピーし、アンサンブル化するというのは時々行われるが、全編チャーリーパーカーのアドリブをアンサンブルで演奏するという試みには、最初びっくりした。
最初は西海岸のスタジオミュージシャンのお遊びかと思ったが、その出来栄えを聴いてさらにびっくり。

そして、中身をじっくり聴くと、パーカーのメロディーラインはもちろんアルトがとるが、バリトンがそのアルトにピッタリついて、あのパーカーのフレーズを吹いているのにまたまたびっくり。
アンサンブルで、バリトンは他のセクションと離れて一人我が道を行くことが多く、メロディーラインの引き立て役に回ることが常であるが、ここでは準主役のような扱いだ。
パーカーのフレーズをアルトでやるのも大変なのに、同じフレーズを図体の大きなバリトンでやるのはそれなりのテクニックが無いとできない芸当だと当時も感心した。

みんな揃ってサックスセクションのソリというのは良くあるが、普通それは一部だけ、全編ソリのようなアレンジはそうそうない。合わせるだけでも大変そうだと思ったが、彼等も最初は11カ月も練習したとか。

73年がアルバムデビューであったが、リーダーのメッドフローリーが思いついたのは、1955年ウディーハーマンオーケストラに居た時という。実は、その時のハーマンのオーケストラでは、同じような試みがラルフバーンズのアレンジの中でおこなわれていた。

56年にロスに移ると早速3曲、5サックス用の譜面が完成。さっそくメンバーを集めてリハーサルを行った。メンバーであったジョーマイニーが生きている間に、その内の一曲はテープに残したが、その後マイニーが亡くなってしまったこともあり、構想は立ち消えになっていた。その構想を復活して、このアルバムに繋げたてくれたのは、他の曲のスコアづくりに協力したベースのバディークラークのお蔭であった。

そして、最初のアルバムPlays Birdが実現することに。企画、内容ともにファンだけでなく関係者に感銘を与えたのだろう、その年のグラミー賞Best Instrumental Jazz Performanceをいきなり受賞する。キャピタルとの契約で、Salt Peanuts、with Stringsと続けて3枚のアルバムを出され、一躍世に知られることになる。

当然、レコードだけでなく、ライブでの要望も増えてくる。ロスでは地元のクラブドンテを本拠地にしていたが、日本にも話題になって評判が広まった75年1月に来日している。
2週間に渡る全国ツアーであった。同じ時期に大物マイルスのコンサートもあったが、ファンを魅了した。自分も聴きに行って、ライブの演奏にまたびっくりした記憶がある。

その時の演奏がこのアルバムである。CDになって世に出たのは20年近く経ってからだが、あの感激を再び味わえるだけでも自分にとっては有難いアルバムだ。





さらに、このグループのもう一つの特徴は、最初からトランペットのコンテカンドリやトロンボーンのカールフォンタナなど、ゲストのソリストを入れていたことだ。
こちらは、パーカーのアドリブアンサンブルとは関係なく自由にサックスセクションを引き継いでアドリブを繰り広げた。これがサックスのアンサンブルがノリノリの助走をつけた後のソロなので当然のようにいい感じになる。

この75年の来日に際しても、当初はコンテカンドリを予定していたが、レギュラーでテレビ番組に出演していたカンドリは、2週間も長い休みがとれないということで断念。トランペットのピンチヒッターは見つからず一人来日したのが、トロンボーンのフランクロソリーノであった。このロソリーノが2人分の活躍をする。

ロソリーノは先日紹介した、トロントへの遠征の前年、ソリストとしての活動に力を入れていた好調な時期であった。全曲で、ロソリーノのソロが存分にフィーチャーされているので、ロソリーノファンにもたまらないアルバムだ。前回紹介したギタートリオとの共演より、当然ながらスーパーサックスをバックにすると、ロソリーノの超絶テクニックは一層冴えわたる。

そして、最後にこのライブの素晴らしさが、サックスセクションの面々のソロもたっぷりと聴けることだ。特に、ソルトピーナツでは、アルバムでは聴けないウォーンマーシュのソロが聴けるのも貴重だ。最後のMoose the Moocheでは、サックスのソロのバトルも披露してくれる。
スタジオ録音より制約が少なくなり、演奏の自由度が増し、曲の時間も長くできるので、ライブならではのノリとなって終わる。

スーパーサックスのライブアルバムというのは、自分が知る限り他にはないので貴重だ。サドメル同様、ライブでこそ本当の魅力を味わえるバンドだ。
ライブがスタジオの演奏を上回るのは、このように大きな編成のグループでアンサンブルとソロが聴衆の反応に呼応して、上手くバランスよく収まった時のように思う。
オリジナルのパーカーも、ここまで拘ってカバーしてくれれば満足しているだろう。

そういえば今日、3月12日はパーカーの命日。恒例の日本のパーカーでもある澤田一範のwith Stringsのライブがある。これもなかなか聴けないライブ、まだ聴いた事の無い方は是非一度どうぞ。



1. Scrapple from the Apple            Charlie Parker 10:01
2. All the Things You Are  Oscar Hammerstein II / Jerome Kern 10:51
3. Salt Peanuts                 Dizzy Gillespie 6:41
4. Parker's Mood                Charlie Parker 5:01
5. Just Friends          John Klenner / Sam M. Lewis 3:10
6. Ornithology           Benny Harris / Charlie Parker 7:54
7. Embraceable You        George Gershwin / Ira Gershwin 2:45
8. Moose the Mooche               Charlie Parker 8:49

Frank Rosolino (tb)
<Super Sax>
Med Flory (as)
Joe Lopes (as)
Warne Marsh (ts)
Jay Migliori (ts)
Jack Nimitz (bs)
Lou Levy (p)
Buddy Clark (b)
Jake Hanna (ds)

Tom Gramuglia Executive Producer
Produced by Bob Edmondson
Recorded in Tokyo, January 1975

The Japanese Tour
クリエーター情報なし
Hindsight Records
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良いプレーをするにはホームがいいか、アウェイがいいか・・・

2015-03-07 | CONCORD
Bye Bye Baby / Ed Bickert

スポーツなど勝負の世界では、ホームゲームとアウェイの違いが勝敗を大きく左右することがある。こと音楽の世界となると、ホームグラウンドでいつもの慣れた場所で馴染みのファンに囲まれてアットホームな雰囲気で演奏するのは気楽なものだ。ところが、アウェイになると見知らぬ土地で見知らぬ聴衆を相手に、時には異国の地で果たして自分の演奏が受け入れられるかどうかが、まずは心配になるだろう。

その昔、日本のミュージシャンが海を渡り本場アメリカで演奏した時は、皆、同じような感覚を持ったようだ。今ではミュージシャンは、若い頃から世界で活躍するのが当たり前になった。情報化の時代で小さい時から世界中の情報に何でも接することができ、手軽に海外に行ける時代、海外留学や武者修行するのも当たり前の様だ。時代も大きく変ったものだ。

ジャズの創世記は広いアメリカでは、同じアメリカでも違ったスタイルのジャズが各地で育っていた。単に北部と南部だけでなく、都市毎にスタイルがあった。違うスタイル同士が交わり合った時には、お互い緊張感が生まれる一方で新しいスタイルが生まれていったようだ。今では、いつのまにか同化しているようだが、何となく西海岸と東海岸の演奏にはまだ何か違いを感じる。特にビッグバンドでは。

カナダはアメリカの一部の様に感じるが、カナダ出身のジャズミュージシャンも多い。オスカーピーターソンやメイナードファーガソンは早くからアメリカで活躍していたので良く分からないアが、果たしてカナダスタイルのジャズはあるのか、無いのか興味が湧くが・・・。

もちろん地元カナダで活動を続けるミュージシャンはいる。ペッパーアダムスのラストアルバムで共演したDenny Christiansonもその一人だが、トロントを拠点として活躍していた一人に、ギターのエドビッカートがいる。
ポールデスモンドと一時コンビを組んでアメリカでも活動したようだが、その後は、またカナダに戻って活動をしている。どうも、ツアーの多い演奏活動は性に合わなかったようだ。
そのビカートを再びアメリカのジャズ界に紹介したのは、ギター好きのカールジェファーソンだった。

自ら主催するコンコルドジャズフェスティバルにも招待したが、自分の傘下のミュージシャンを引き連れてカナダを訪れ、ローズマリークルーニーのアルバムに参加させたりビカートをリーダーにしたアルバムも作った

そして、今度はジェファーソンの地元にビッカートを招くことになった。ツアー嫌いのビッカートを待ち受けたのは、コンコルドではお馴染みのプレーヤー、そしてお馴染みのスタジオであり、エンジニアのフィルエドワード達であった。いわば、コンコルドの故郷を訪れての演奏となった。もちろんコンコルドスタイルの演奏は経験済だが、今回も郷に入っては郷に従え、ジェファーソンのプロデュースの元でアルバムが作られた。

メンバーは、流石に一人では心細かったのか地元でいつも一緒に演奏しているベースのSteve Wallaceを帯同した。そして、選んだ曲は、スタンダードだけでなく、パーカーやホレスシルバーの曲も。とりあえず、手の内はすべてご披露ということだったのかも。結果的に、今回は管やボーカル無しのカルテットだったので、アルバム全体のトーンを決めたのは何といってもデイブマッケンナのスインギーはピアノの影響が一番大きかった。特に、Duoで演奏されるBye Bye Babyが、マッケンナのピアノに引っ張られて本領発揮という所だろう。

ビッカートにとっては、共演したメンバーだけでなく関係スタッフ全員に歓待され、アウェイであっても何の緊張も無くコンコルドスタイルで自分の演奏を披露できたセッションだったと思う。
たまには、アウェイで気分を変えてというのも良かったかも。その中でも変わることが無かったデスモンドが気に入ったというビッカートのクールトーンがカナダスタイルなのかも。

1. You're in Love With Someone        J.Burk/James Van Heusen 4:23
2. Bye Bye Baby                 Leo Robin / Jule Styne 3:40
3. Barbados                      Charlie Parker 4:10
4. It's Time                       Horace Silver 4:02
5. Nobody Else But Me       Oscar Hammerstein II / Jerome Kern 4:57
6. Things Are Getting Better            Cannonball Adderley 4:33
7. A Flower Is a Lovesome Thing            Billy Strayhorn 5:31
8. Pensaliva                      Clare Fischer 4:44
9. Keeping Myself for You        Vincent Youmans / Sidney Clare 6:13

Ed Bickert (g)
Dave McKenna (p)
Steve Wallace (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, August 1983
Originally released on Concord CJ-232
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久々に、ストレートなジャズの演奏をトランペットとボーカルで・・・

2015-02-02 | CONCORD
Stand By For The Jack Sheldon Quartet

昔、スイングジャーナルの読者人気投票のランキングを見ると、ギターに植木等、トロンボーンに谷啓といった名前が並んでいた。コメディアンとして有名になったクレージーキャッツの面々であるが、以前はジャズを演奏していたミュージシャン達であった。コミックバンドを経て、それぞれの道へ進んだが、谷啓は、最後までテレビ番組でもトロンボーンのプレーを披露していた。

ジャックシェルドン、元々は‘50年代西海岸で活躍していたトランぺッター。50年代のウェストコーストで作られたアルバムには、コンボでもオーケストラでも彼の名前は数多く見かける

しかし、60年代に入ると、テレビや映画に俳優、コメディアンとして登場し、活躍の場はすっかりテレビ中心に変った。テレビに出ている時もトランペットとボーカルを忘れることは無かったが、ストレートのジャズというよりは、ポピュラーな曲を演奏したり、子供番組の主題歌を歌ったり、その活動はジャズからはどんどん離れていった。



しかし、70年代に入ると、再びトランぺッターとしてスタジオワークを中心に活動を再開する。そして、ストレートなジャズの演奏も。ビルベイリーのビッグバンドに参加しコンコルドのアルバムにもシェルドンの名前が見られるようになった。

そんな彼を、カールジェファーソンが放っておくことは無かった。
Concordレーベルは、ベテランの復帰の機会を提供する、ある種のリハビリの場のような存在であった。無理に今風の演奏を強い得ることなく、本人の意向を一番尊重し、ベストなプレーができる環境を常に用意していたので、ミュージシャンにとっては気負うことなく久々のプレーでも気楽に演奏できたかもしれない。

今回もコンコルドのハウストリオとでもいえる、トンプキンス、ブラウン、ジェイクハナがバックを務める。このトリオをバックに、シェルドンに「お好みのトランペットと歌をご自由にどうぞ」といった感じのセッションである。

ジャケットのテレビ画面を模したデザインも、シェルドンのキャリアを知っている人にとっては、意味が良く分かると思う。テレビではプレーヤーとしてよりも、長年Merv Griffin Showのミュージカルディレクターとして有名になってしまったシェルドンだが、今度のプログラムは「いつもお馴染みのシェルドンではなく、ジャックシェルドンカルテットがスタンバイしています」ということだろう。
そして、このカルテットの演奏は、ジェファーソンの思惑どおり、シェルドンのジャズプレーヤーとしての側面を再び全面的にアピールした内容となった。

トランペットを吹くボーカルといえばチェットベイカーが有名だが、タイプは異なってもこのシェルドンも両刀使いだ。このアルバムでも、トランペットとボーカルの曲を交互に配し、楽器も歌もどちらもメインとアピールしたかったのだろう。

基本的にはモダンスイング系のスインギーなトランペットであるが、曲に合わせてプレースタイルは微妙に変えている。バイバイブラックバードのトランペットというとマイルスを思い出してしまうが、ここでもミュートプレーで軽快に(もちろんマイルスのような鋭さはないが)、そしてシャドウオブユアスマイルでは、低音域でストレートなメロディーの美しさを訴える。バラードもスインギーな曲もご機嫌である。

歌の方も、余興で歌うといった感じではなく、最後の曲、The Very Thought of Youでは7分にも及んでじっくり歌い込んでいる。

この録音がきっかけだと思うが、翌月行われたウディーハーマン仕切りのジャムセッションにも参加している

その後も、プレーや歌を継続して行くが、エンターテイナーとしてステージの楽しさも、演奏や歌に加えて人気を博した要因であろう。いずれにしても、才能豊かな人は、何かを極めるにしても他の分野での才能が助けになって大きく育つのは間違いない。
どんなに上手く演奏しても、ただ黙々と演奏するライブが楽しくないのは、そのようなキャラクターが影響するのかもしれない。

その当時のライブの様子↓


1. I Love you
2. Daydream
3. Cherry
4. Don’t Get Around Much Anymore
5. Bye Bye Blackbird
6. I’m Getting Sentimental Over You
7. Shadow of Your Smile
8. Get Out Of Town / Ours
9. Poor Butterfly
10. The Very Thought Of You

Jack Sheldon (tp)
Ross Tompkins (p)
Ray Brown (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Phil Edwards

Recorded at Ocean Way Recording, Hollywood, California, March 1983

Originally released on Concord CJ-229
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腰の重い人を動かすには、こちらが出向かなければならないことも・・・・

2014-12-23 | CONCORD
Indian Summer / The Fraser Macpherson Quartet

ジャズファンというものは、日頃ジャズを楽しんでいる中で、ファンである故の熱い想いが生じることがある。此のミュージシャンのアルバムは全部揃えてみようとか、あのアルバムを何とか手に入れたいとか。あるいは、アルバムだけでは満足できずに、なんとかライブを聴いてみたいものだとか・・・。

普通のジャズファンだとここまでだが、プロデューサー業をしていると想いはさらに広がる。この2人の共演をさせたいとか、この曲をやってもらいたいとか。そして、まだ知られていないミュージシャンを世に出すのに一役買うのも夢の一つだろう。

コンコルドのオーナーであったカールジェファーソンはベテランジャズプレーヤーの復活を多く手がけたと同時に新人の発掘も行った。レーベルを設立して10年近く、多くの夢を実現してきたが、まだ「この人」をと、密かにアルバム制作に想いを馳せていたミュージシャンは多くいたであろう。

その一人が、このアルバムの主役Fraser Macphersonであった。

カナダ出身のジャズミュージシャンは何人もいる。有名どころではオスカーピーターソンであり、メイナードファーガソンであるが、2人とも若い頃からすでにアメリカで活躍していた。改めてカナダといわれても、ピンとこないものがある。

ところがカナダ国内で活動しているミュージシャンは、なかなか聴く機会もないので名前すら知らない。このマクファーソンは、カナダといっても東海岸バンクーバーを拠点としていたモダンスイング系のサックス奏者。カナダの中でもローカルで活動していた一人だ。クラリネットやフルートも吹くマルチプレーヤーだが、レスター系のサックスのプレースタイルは、まさにジェファーソンの好みにピッタリであった。

早速、マクファーソンは地元のマイナーレーベルで出したことのあるアルバムを、Concordのカタログに載せた。それが、前作”Fraser Macpherson Live at The Planetarium”であった。ドラムレスのギターとベースのトリオ。実にいい雰囲気の演奏だ。当然、新たな録音のラブコールを送り続けていたようだが、なかなか実現には至らなかった。

そのアルバムの録音から5年経って、北村英治のアルバムにひょっこり登場した。ちょうどコンコルドジャズフェスティバルが行われた直後のセッション、プレーザーもフェスティバルに出演するためにシスコへ来ていたのかもしれない。しかし、ここでもフレーザーのアルバムは作られなかった。

それから3年、ジェファーソンもなかなか実現しないセッションに痺れを切らせたのかもしれない。なかなか来れないのであれば、こちらから乗り込むと腹を決めたのか、フレーザーの地元バンクーバーに自ら乗り込むこととなった。ただし、メンバーの人選や曲の選定はフレーザーにお任せという前提で。

メンバーには、プレーザーとは長年コンビを組んでいるギターのオリバーギャノンがまずは参加した。前作のアルバムでも一緒にやっているが、バックにソロにフレーザーのテナーにはピッタリ呼吸が合う。ギター好きのジェファーソンにとっても、この2人が一緒にプレーするには願ったり叶ったりであった。

そして、ドラムは地元のメンバーではなく、ジェファーソンの片腕でもあるジェイクハナが参加する。ハナも是非一緒にプレーしたかったテナー奏者だったということで、遠くシカゴから一夜のセッションのために駆けつけた。もう一人、ベースはフレーザーが東海岸に行く時はいつも一緒にプレーしていたスティーブウォーレスが参加することに。このウォーレスは、Concordで同じくカナダのエドビケットのアルバムを作った時に参加している。

ハナを除けばフレーザーは勝手知ったメンバーということもあったのだろう、録音は9曲中5曲をファーストテイクで、4時間ほどですべての録音を終えた。アルバムはリカードボサノバで軽快に始まるが、まるでレギュラーグループのような一体感と気楽な感じが漂う好演が続く。ジェファーソンが思い描いていたイメージとまさにピッタリであったと思う。

翌年のコンコルドジャズフェスティバルにはこのフレーザーもエドピケット共々参加し、コンコルドにもアルバムをさらに残すことに。

自分の好みのプレーヤーというのは、アルバムが作られていなくても世の中には沢山いるのだ。自分もいつかどこかで出会うことを願って探索を続けることにしよう。

1. Recado Bossa Nova 
2, As Long as I Live 
3. Sophisticated Lady 
4. 'S Wonderful
5. 'Deed I Do 
6. Indian Summer
7. All My Life 
8. Just My Luck 
9. Long Ago (And Far Away) 

Fraser Macpherson (ts)
Oliver Gannon (g)
Steve Wallace (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Roger Monk
Recorded at The Little Mountain Sound Studios, Vancouver, British Columbia, Canada June 1983
Originally released on Concord CJ-224
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ビッグバンドのリーダーだけでなく、ジャムセッションリーダーとして適役と見込まれたのは?

2014-11-17 | CONCORD
Volume 3 Woody Herman Presents A Great American Evening

高齢者というと何歳からか?
以前は60歳、還暦を迎えると年寄りの仲間入りだった。
最近では高齢者というと65歳、60歳はまだまだ元気、定年も延長される世の中では還暦は年寄りの仲間入りにはまだ早すぎる。

65歳になるとやっと高齢者の仲間入り、健康保険証とは別に介護保険の保険証が届く。これが来ると何となく年寄りになった実感が沸く。気のせいか体力的な衰えも感じるが、これから鍛え直すには手遅れだ。

次なる節目は70歳、やはり60代とは違うのだろうが自分がどうなるかは想像できない。しかし、今日会社時代の先輩の集まりがあった。自分以外は全員70代以上だったが、何か異様とも思えるくらい皆揃って元気溌剌だった。このグループが別なのかもしれないが。

そして、次がいよいよ75歳、医療費も別扱いになり後期高齢者となる。ここからが本当の年寄りなのだろう。最近健康寿命という言葉を良く聞く。とりあえずここまで行くのにあと10年、何とかゴルフができる位の健康は維持したいものだ。

ジャズのミュージシャンでも生涯現役でプレーを続ける元気者は多い。ウディーハーマンもその一人だろう。このアルバムが録音されたのが1983年、ハーマンは1913年生まれなので、まさに70歳を迎えようとしていた頃の演奏だ。
単にプレーを続けているというのではなく、リーダーとしてもまだ大活躍をしていた。ハーマンは演奏活動自体が好きだったということもあるが、大きな負債を抱えていてこれを返さなければという事情も、常に演奏活動にオブリゲーションを与えていたようだ。

ハーマンは色々なレーベルに録音を残しているが、晩年の演奏はConcordに残されている。
自らのオーケストラの演奏は、1979年のモンタレー1981年のコンコルドジャズフェスティバルに登場し、そのライブアルバムがある。
その後も日本でのライブがあり、そしてハーマンのラストアルバムは、亡くなる年の1987年の録音となる。まさに生涯現役であったが、ビッグバンド一筋に生きてきたハーマンに相応しく、このラストアルバムもビッグバンド物であった。

コンコルドではこれらのビッグバンドリーダーとは別のハーマンの顔を捉えたアルバムを出している。ハーマンは昔から自分のオーケストラ以外にも色々なアルバムにゲスト出演することが多いが、コンコルドではWoody Herman Presentと銘打ったアルバムを出していた。これが3枚目になる。

これらは、ジャムセッションリーダーとしてのハーマンの才能をアピールしたものだ。
ジャムセッションを上手くやる秘訣はいくつかあるようだが、このハーマンは適役だということでこのシリーズができた。

一作目はコンコルドパビリオンの大きなステージでのライブ2作目はニューヨークのスタジオでの録音であったが、これは4人のテナーを揃えたフォーブラザースの再現でもあった。
そして、今回はサンフランシスコのGreat American Music Hallでのライブ。ここではメンバー達の実にリラックスした親近感を覚えるプレーが聴ける。

いきなり、ハーマンのボーカルとクラリネットが大きくフィーチャーされてスタートする。ハーマンは時々歌を聴かせてくれるが、このアルバムではクラリネット同様登場機会は多い。
ハーマンは盛り上げ役と纏め役としての責務は果たしているようだが、他のメンバーは熱がこもっているものの、お祭り騒ぎになることなく淡々とプレーをしている。コンコルドの常連メンバーにしてみれば、普段の演奏もジャムセッションのような物、ステージに立ったからといって改めて演奏スタイルを変える必要はないのかもしれない。
その中で、北村英治と少し前に口笛でデビューアルバムを出したロンマックロビーはゲスト役でのジャムセッションの舞台、緊張していたかもしれない。北村英治はお得意のアバロンで、マックリビーはウェイブで無事出番を終えた。
纏め役のハーマンの進行も的を得ていたのかもしれないが、クールな優等生が多いコンコルドのメンバーにはあまりノリノリになるリーダー役は不要のようだ。ハーマンの歌と演奏が少し浮いて聴こえてくるが、ステージはハーマン大得意のカルドニアで幕を閉じる。

大きな舞台を上手く纏めるのはやはり場数と年の功。ハーマンの役割が重要だったのだろう。

1. I've Got the World on a String  Harold Arlen / Ted Koehler 6:33
2. I Cover the Waterfront   Johnny Green / Edward Heyman 4:34
3. Leopard-Skin Pill-Box Hat            Bob Dylan 3:48
4. Avalon       Buddy DeSylva / Al Jolson / Vincent Rose 6:04
5. A Beautiful Friendship     Donald Kahn / Stanley Styne 5:17
6. Pennies from Heaven    Johnny Burke / Arthur Johnston 4:23
7. Wave                 Antonio Carlos Jobim 6:18
8. Caldonia                   Fleecie Moore 5:37

Woody Herman (cl,Vol)
Scott Hamilton (ts)
Eiji Kitamura (cl)
George Masso (tb)
Ron McCroby (puccolo)
Jack Sheldon (tp)
Cal Collins (g)
Nat Pierce (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Phil Edwards
Recorded live at the Great American Music Hall, San Francisco April 1983

Originally released on Concord CJ-220


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色々な分野で「相互乗り入れ」があるがジャズの世界でも・・・

2014-10-14 | CONCORD
Seven Stars / Eiji Kitamura

1980年代のジャズは元気だった記憶がある。有名企業がスポンサーになった大きなジャズフェスティバルが各地で開かれ、俄かジャズファンを含め多くの聴衆に賑わった。
海外のレーベルはメジャーだけでなく多くのマニアックなレーベルも生まれた。日本のレコード会社も日本のミュージシャンだけでなく、海外のミュージシャンのアルバム制作を数多く行った。そして日本のミュージシャンと海外ミュージシャンの顔合わせアルバム制作も頻繁に行われた、30年前はそんな時代であった。

コンコルドのカールジェファーソンも日本贔屓でメンバーを引き連れて何度も来日している。反対に日本のミュージシャンをコンコルドジャズフェスティバルに招き、日米相互の交流に一役かっていた。

1980年のコンコルドジャズフェスティバルに日本から招かれたのは北村英治。その時のステージの模様は”Woody Herman Presents”というアルバムに収められている。北村英治はモンタレージャズフェスティバルにはそれ以前から常連で出場していたが、これでアメリカのファンの前に登場する機会がさらに増えた。特に、コンコルドのファンは北村英治のプレーとは相性が良く温かい歓待を受けたという。
コンコルドフェスティバルの終了後、せっかくの共演の機会がフェスティバルだけではもったいないということで、ステージとは別にコンコルドのメンバー達とアルバムを作った。それが前作のアルバム”Swing Eiji”だった

モダンジャズの時代になって、クラリネット自体のプレーヤーが少なくなったが、その少ないプレーヤーも多くはサックスとの持ち替え、クラリネット一本で勝負するプレーヤーはトラッドジャズを除くと極わずかとなっていた。
北村英治はその中の一人。基本はグッドマンスタイルのスイング系であるが、モダン系のプレーヤーとの共演もこなす自分のスタイルを持つ第一人者、晩年はクラッシクの奏法も改めて学び直して、まさにオールラウンドプレヤーとなった。今でも自分のグループでの演奏に加え、よく大きなコンサートにもゲストで出演し元気で活躍しているのは素晴らしいことだ。

翌年1981年も北村英治はコンコルドジャズフェスティバルに招かれる。その渡米に合わせてジェファーソンの協力で同様なセッションがセットされた。プロデュースは北村英治自身、ジェファーソンは総合プロデューサーで一歩引いた形となった。
今回のセッションの目玉はなんといってピアノにデディーウィルソンの参加、そしてヴァイブにカルジェイダーが参加していること。

テディーウィルソンはコンコルドでの録音は無かったと思うので、このセッションの為に特にアサインされたのであろう。北村英治とは以前にも何度も共演があるので、久々の再会となる。それに、コンコルドではラテン系のプレーが多かったカルジェイダーの参加も嬉しい。
ジェイダーは翌年不幸にも他界してしまうので、結果的にこのセッションへの参加もジェイダーの何か思い出を残す形になってしまった。ウイルソンもこの頃はレコーディングの機会も少なく、晩年の数少ない録音であり北村英治とも最後の録音になってしまった。
という意味では、主役はあくまでも北村英治ではあるが、ウイルソンとジェイダーという2人の巨人を見送ったアルバムということにもなる。

グッドマンでお馴染みのアヴァロンに始まり、スタンダードのミスティーと続く、北村のオリジナル「オールドラッズ」を挟んで、スターダストと、皆それぞれが自分のプレーの集合体だが、何故か北村英治のクラリネットとウイルソンのピアノを中心に一体感がある。
B面に移るとトラッドジャズで良く演奏される「日の出を待っている」だが、これも英治節で料理、クラリネットの低音の魅力とベースをクローズアップしたエリントンナンバーに続き、サムワントューウォッチオーバーミーではアネスティンアンダーソンのボーカルが花を添える。

コンコルドには他にも日本のミュージシャンの為にセットされた何枚かのアルバムがあるが、コンコルドと日本での販売権を持っていた東芝EMIとの相互乗り入れのコラボの成果である。このアルバムも日本で先行して発売されたが、一年遅れでコンコルドの通常のカタログにもラインナップされた。

昨今の日本企業と海外との関係となると、アライアンスというより対立色が強い。ビジネス競争の中ではどうしても喰うか食われるかになるし、一見握手をしているように見えても、目先のお金が優先してしまう付き合いになる。お互いで何かを育てようという話にはなりにくいものだ。

今から30年前、このような形で文化交流の垣根はせっかく低くなったのに、その後はあまり進展がないようだ。それを支えるスポンサーが減ったのも原因だが、そもそも当時は音楽自体がライブにしてもレコードにしてもビジネスになっていた。
最近では音楽がビジネスにならないという。実は、こちらの方が問題なのかもしれない。ビジネスにならないからファンが少なくなったのか、ファンが少なくなったのでビジネスにならないのか?いずれにしても、お金が回らないと何も続かないという世の中は如何なものか?

1. Avalon                      Al Johnson 3:56
2. Misty                      Eroll Garner 4:55
3. Old Lads                    Eiji KItamura 5:20
4. Stardust          Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:47
5. The World Is Waiting for the Sunrise        Ernest Seitz 3:32
6. Satin Doll    Duke Ellington / Johnny Mercer / Billy Strayhorn 6:35
7. Someone to Watch Over Me   George Gershwin / Ira Gershwin 5:13
8. I Wanna Go Home                   Al Cohn 3:55

Eiji Kitamura (cl)
Teddy Wilson (p)
Cal Tjader (vib)
Eddie Duran (g)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)
Ernestine Anderson (vol)

Produced by Eiji Kitamura & Yoishiro Kikuchi
Recording Engineer : Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, August 1981

Originally released by Toshiba EMI and released by Concord on Concord CJ-217

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世の中にはローカルの実力者は沢山いても、なかなか聴く機会がないものだが・・・

2014-10-05 | CONCORD
The Ed Bickert 5 at Toronto’s Bourbon Street

前回ローズマリークルーニーのアルバムを紹介した時に、録音場所がカナダのトロントであったのに引っ掛かった。
バックはいつものコンコルドオールスターズ、そしてアルバム自体は彼女がその頃続けていた作曲家シリーズ.
ハリウッド住まいの彼女にとって本来であれば本拠地でじっくり録音してもいいアルバムなのに、何故カナダで録音したのか?
気にはなったが、そのまま特に調べもしなかった。

このアルバムの主役はその時ギターで参加していたEd Bickert、地元トロントのプレーヤーだ。
そういえば、ロージーのアルバムでバックのオールスターズのギターがいつものカルコリンズでは無くこのビッカートであった。改めて、このアルバムのライナーノーツを見直したが、このビッカートが参加した理由、何故トロントなのかも分からなかった。

ロージーのセッションを終えたバックを務めたオールスターズの面々は、このビッカートとセッションを持つことになった。せっかく共演したのに、レコーディンだけではもったいないということに相成ったようだ。
ピアノのマッケンナは他の仕事があって参加できなかったが、他のメンバーは皆揃ってビカートと共に地元のクラブでのライブへ、その模様が収録されたのがこのアルバムだ。

このビッカートというギタリスト、今回のコンコルドに登場する以前の活動を自分は全く知らなかったが、ポールデスモンドのクループに加わったこともあったようで一応メジャーデビューは果たしたギタリストだ。
メジャー経験は少なくても地元トロントではファーストコールのスタジオミュージシャン、地元に訪れる有名ミュージシャンとの共演経験は豊富であった。レコードしか聴く機会がない我々にとっては、地元では有名でもローカルのミュージシャンは縁遠い存在だ。

世の中には無名であってもファンは必ずいるもので、詳しく知りたい方はこちらで。

アルバムの数は少なくても、今ではネットでその実力の程は窺い知ることができる。
ちなみに、YouTubeにはたくさん映像が残されている。



コンコルドはオーナーのカールジェファーソンがギター好きのせいか、ギターに関してはべテラン、新人を問わず多くのミュージシャンが登場するが、このビッカートもその一人に加わった。

実は、この1983年にはカルコリンズは世界中を駆け巡っていたコンコルドでの活動を離れ、地元に戻ってしまっていた。オールスターズに欠かせないギターが不在であったということも、このビッカート起用の理由のひとつだったかもしれない。

このセッションは結果的にピアノレスになったせいか、ハミルトンやバッシェのバックを務めるビッカートのギターの刻むリズム、そしてバッキングが良く分かるが、自分の素人耳にも只者ではないことが良く分かる。
トリオでの演奏も2曲あり、ジャズでは珍しいフェンダーのtelecasterでのプレーをたっぷり楽しめる。

1. Swingin' Along on Broadway             Buck Clayton 5:37
2. I'll Wait and Pray       George Treadwell / Gerald Valentine 7:03
3. Change Partners                  Irving Berlin 5:56
4. Limehouse Blues Philip         Braham / Douglas Furber 6:05
5. Walk It Off              Sidney Miller-Inez James 5:28
6. Goodnight My Love            Mack Gordon-Harry Revel 5:38
7. Sophia Illinois               Jacquet-Harry Edison 6:29
8. The Walker              Coleman Hawkins-Roy Eldridge 6:18

Ed Bickert (g)
Scott Hamilton (ts)
Warren Vache (cor)
Steve Wallace (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Phil Sheridan
Recorded live at Bourbon Street, Toronto, Ontario, Canada January 1983

Originally released on Concord CJ-216
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一見同じように感じても、拘りによる違いの楽しみ方が・・・・

2014-08-09 | CONCORD
Rosemary Clooney Sings The Music of Harold Arlen

暑い日が続くがこの暑さの中ゴルフに行くと、ゴルフをやらない人からは、何故こんな暑い中、それも日中の一番暑い時に一日外にいるようなゴルフをやるのか分からないと言われる。確かに、ゴルフ好きにとっては暑さも、寒さも関係ない。一週間クラブを握らないとウズウズしてくるものなのだ。

先週末は、毎年仲間と恒例になっている長野ツアー。標高1000mを超える高原ゴルフは日差しが強くても木陰に入ると爽やかな風が心地よい。毎度の事ながらこのシーズンの極楽ゴルフを満喫した。

せっかくの避暑地滞在、いつもはゴルフだけで帰ってきてしまうが、今回は友人達と別れて温泉、散策、街歩き、花火とそのまま北信州の夏を満喫してきた。極寒の雪の中温泉に浸かって暖をとる野生の猿で有名な地獄谷の温泉も、夏は猿とっては水浴びと水分補給の場所のようであった。





ゴルフも今回の様に普段とは違うコースに行き、せっかく訪れた遠方の地を楽しんでくるのであれば、それはそれなりの楽しみとなる。ところが、同じホームコースに毎週のように通い詰めるとなると、「よくも飽きずに同じところばかり行って」といわれる。

ゴルフというものは何百回ラウンドしても、全く同じラウンドという事がないからであろう。スコアだけでなく天気やコースのコンディションを含めて。だからあの時のショットというのをいつまでも覚えているのだろう。
そして、プレー内容も上手くなったと思ってもすぐに元に戻ってしまう。一度習得したら全く同じプレーができてしまっては、反対に面白くない遊びになってしまい、ここまで入れ込むこともないであろう。

ジャズも同じような楽しみがある。同じ曲でも人によって全く内容が違うし、同じプレーヤーでも時と場合によって微妙に内容が違う。場合によっては、プレースタイルも全く違うものになる。同じプレーヤーの同じ曲でも時代が変わり、相手が違えばもちろんの事、一日違うだけで違う演奏になってしまう事。それがジャズの楽しみであろう。

コンコルドのアルバムを棚卸して改めて感じるが、全体で同じようなコンセプトでも、プレーヤーによって違うのはもちろん、アルバム毎に何か特徴があるので一枚一枚を楽しめる。もっとも、大外れは無い反面、あっと驚く新鮮さを感じる盤は少なくなるが、それは致し方がない事。
ゴルフ場も誰もが認める名コースというのもあるが、自分の好きなスタイルの、相性の良いコースというのが自然とできてくるものだ。

さて、コンコルドに移籍して何枚ものアルバムを作り、作曲家シリーズを始めたのがローズマリークルーニー。このアルバムで何と9枚目になる。前作のコールポーター作品集に次いで、今回はハロルドアレン集だ。バックは、おなじみのコンコルドオールスターズ。
彼女の歌い方は、原メロディーを大事にする正統派。聴く前から、大体のイメージは沸く。
とすると、どんな曲を選ぶのかが興味の対象になる。

普段あまり作曲家について深く頭の中を整理したことはないが、これを機に多少リセットしてみることに。
ハリーアーレンの曲はスタンダードとして多くのジャズプレーヤーに取り上げられているので、良く耳にする。自分が好きな曲では、It’s only a paper moon, A sleepin’ bee, Ill wind などがすぐに思い浮かぶが、アーレンのOver The Rainbow(虹の彼方に)が,RIAAによって20世紀の1曲に選ばれたようだ。

そして、このアルバムの曲を見渡すと自分にとってはあまりメジャーではない曲が並ぶ。この紹介したアダムスのアルバムのタイトル曲”Out of This World”もアーレンの曲だったのかということを認識した次第だ。

日本で企画されたアルバムというと、良く知られた曲が並ぶことが多い。多くのファンに聴いて貰う(営業的にも成功するため)にはよりポピュラーな曲が良いのは分かるが、アルバムとして聴くにはプロデューサーやミュージシャンが拘りを持った曲選びがされている方が聴き甲斐がある。このアルバムの選曲の理由は良く分からないが、外向きの派手さを求めるよりも、内向きにアメリカンポピュラーソングの神髄に拘りを持ってきたこの頃のクルーニーの想いが曲選びと演奏にもあったのだろう。

いつもと同じゴルフコースに通いながらも、今日の攻略法を思い浮かべてプレーするように。

1. Hooray for Love           Harold Arlen / Leo Robin 3:09
2. Happiness Is a Thing Called Joe   Harold Arlen / E.Y. "Yip" Harburg 4:32
3. One for My Baby (And One More for the Road) Harold Arlen / Johnny Mercer 3:46
4. Get Happy             Harold Arlen / Ted Koehler 3:05
5. Ding-Dong! The Witch Is Dead   Harold Arlen / E.Y. "Yip" Harburg 3:23
6. Out of This World       Harold Arlen / Jimmy McHugh / Johnny Mercer 4:56
7. My Shining Hour        Harold Arlen / Johnny Mercer 3:48
8. Let's Take the Long Way Home  Harold Arlen / Johnny Mercer 3:31
9. Stormy Weather         Harold Arlen / Ted Koehler 5:41

Rosemary Clooney (vocals)
Ed Bickert (g)
Scott Hamilton (ts)
Warren Vache (cor)
Dave McKenna (p)
Steve Wallace (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer Phil Sheridan
Recorded at McClear Place, Toronto, Canada, January 1983

Originally released on Concord CJ-210
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ステージのラストを飾るのに相応しい曲、インナメロートーン・・・・

2014-07-03 | CONCORD
Concord Jazz All Stars At The Northsea Jazz Festival Volume2

コンサートのライブアルバムというのは昔から数多くある。ニューポート、モンタレー、そしてモントルーなど有名なジャズフェスティバルでの過去の名演は、そのまま名盤として今でも楽しむことができる。
しかし、レコードの収録時間の制約もあり、その多くはその演奏の一部が収録されているものだ。中にはソロがカットされたものもあり、レコーダだけではなかなか当日の会場の様子の全貌を窺い知ることはできない。実際にライブやコンサートでその場に居合わせると、最後のフィナーレ、そしてアンコールでの盛り上がりを肌で体感できるのは格別である。これを疑似体験できたらと思うのはファンの願いでもある。
CDの時代になり、スタジオ録音でもお蔵になった未発表曲が収められ、アルタネイトを含むコンプリート盤が出るようになったが、ライブ物が完全に復活するのは別の意味での楽しみがある。先日記事にしたミンガスのタウンホールコンサートも、そんな一枚だろう。普通の盛り上がりとは別のそのコンサートの意味合いの全貌も明らかになってくる。
最近では映像も数多く発掘され、ビジュアルが加わると一段とリアリティーが増す。人間はやはり感動は五感で感じるのが本来なのだろう。

LP時代はより多くの曲を収めるために、2枚組になり、続編となってリリースされることが多かった。このコンコルドオールスターズのノースシージャズフェスティバルのアルバムもVol.2。以前CJ-182でリリースされたVol.1の続編となる。メンバーは当然同じで、当時のコンコルド専属のまさにオールスターメンバーのステージでの共演となる。

一曲目は、ハンクジョーンズのビグネット。自分は、この曲はコールマンホーキンスのThe Man and Mighty Hawkで初めて聴いた。まだジャズを聴き始めて間もない頃で何度も聴いた事もあり思い入れのある曲だ。

この手のステージはJATP時代からの常套手段、全員での競演やバトルがあったり、それぞれのソロをフィーチャーしたショーケースがあったりの構成になるが、皆腕達者揃い。時代はフュージョン全盛期であったが、ステージ上ではモダンスイングの好演をたっぷりと楽しめる。そして、最後の全員参加のジャムセッションへと。

素材は、エリントンの名曲、インナメロートーン。
この曲はジャムセッションの素材に良く使われることが多いように思う。
皆が知っている曲、そして曲想もテンポもバックのリフの入り方もジャムセッションにピッタリなのかもしれない。
聴く方もこの曲を聴くと何故かウキウキ感が高まってくる。
奇しくも先日紹介したミンガスのコンサートでもラストはこの曲であった。これまで紹介したアルバムでも印象に残る演奏が多い。ビッグバンドだけでなく、コンボでも、そしてヴォーカルでも。このコンコルドオールスターズも、他のステージで。エリントンの曲なのに、ベイシーのオーケストラも良く演奏しているのも不思議だ。

この曲も好きな曲のひとつだが、まだまだ聴いていない演奏や忘れてしまったアルバムもたくさんある。少し気にかけてみようと思う。

似たようなアルバムを数多く聴くとなかなか印象に残らないことも多くなったが、このアルバムのように好きな曲で始まり好きな曲で終わると、しっかり記憶に留めることができるものだ。

1. Vignette            Hank Jones 6:50
2. Can't We Be Friends?   Paul James / Kay Swift 7:43
3. Emily        Johnny Mandel / Johnny Mercer 4:57
4. Out of Nowhere    Johnny Green / Edward Heyman 4:21
5. Your Red Wagon   Gene DePaul / Richard M. Jones / Don Raye 4:46
6. Once in a While     Bud Green/Michael Edwards 4:57
7. Sweet Lorraine   Clifford R. Burwell / Mitchell Parish 4:05
8. In a Mellow Tone     Duke Ellington / Milt Gabler 7:48

Al Cohn (ts)
Warren Vache (cor)
Cal Collins (g)
Scott Hamilton (ts)
Dave Mckenna (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineers : John Van Den Houten-De Hister Wisseloord Studios
Recorded live at The Northsea Jazz Festival, The Hague, Holland, July 1981

Originally released on Concord CJ-205
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健康で生涯現役で人生を全うする。これは誰でも夢には見るが現実には・・・

2014-04-29 | CONCORD
Personal Choice / The Marian McPartland Trio

最近、人の寿命も単に平均寿命を語るのではなく、健康寿命がよく語られるようになった。確かに医療技術が進歩し、様々な延命措置が可能になった。しかし寝たきり老人になって寿命が延びても、本人そして周りの家族もそれが果たしてそれが幸せかどうか?

健康で毎日好きな事をやってすごし、ある日突然あの世に旅立つ。よくいわれる「ピンピンころり」であるが、これが理想的な人生の最後の迎え方だろう。これまでは他人事であったが、自分がその年代に近づくとその大切さを身に染みて感じる。
できることならそのような晩年をおくりたいものだ。

お馴染みのベテランジャズプレーヤーの訃報を毎年のように聞く。そのたびに、自分が慣れ親しんだ50年代から70年代にかけて興隆を極めたジャズの一つの時代が終わりを告げているような気がする。
昨年亡くなったミュージシャンも多いがその中に、女性ピアニストの大御所マリアン・マクパートランドの名前があった。享年95歳。ピアニストとしては日本では決して一般受けしなかったかもしれないが、実はビバップ創世記からの長い活動歴がある。歳を重ねて進化し90歳近くになっても益々活躍の場を広げていたプレーヤーだった。

このマクパートランドは”Marian McPartland’s Piano Jazz”というラジオ番組を持っていた。1978年にスタートし30年以上続いた長寿番組。そのパーソナリティーとして活躍して、その名を確固たるものにした。
毎回ピアニストをゲストに招きトークとプレーを、時には2人のピアノデュエットを交えてたっぷり1時間聴かせてくれる番組だった。いわば「徹子の部屋」のピアノ版だが、ゲストはスタイルや新旧を問わずジャズピアノの本質が楽しめるものであった。2人の共演がCDになっているものも多く、番組のアーカイブも残されている。

彼女はイギリスで生まれ、ヨーロッパで演奏活動を開始した、アメリカに渡ってからは結婚相手のジミーマクパートランドの影響もあったのか、ディキシー、スイング系の演奏もしたが、徐々にモダンなスタイルに変わっていった。気難しいベニーグッドマンに気に入られずにノイローゼになったことが転機になったとも。
彼女のピアノ自体がジャズピアノの歴史そのものだが、この番組は彼女の幅広い交友関係やジャズピアノの楽しさを知る上でも貴重なコンテンツだと思う。

ちょうどこのラジオ番組のスタートと軌を一にしてConcordとも契約しアルバムを残したがこのアルバムが5枚目になる。
最初のアルバムが彼女のトリオプレーのプレゼンテーションのようなものであったが、その後はゲストとの共演コンコルドジャズフェスティバルでのライブなどが続いたが、今回は久々のトリオでの演奏になる。

ドラムのジェイクハナはConcordの主であると同時に彼女の旧友でもある。ベースしばらく一緒にプレーしていた同じイギリス出身のブライアントーフがジョージシアリングとのコンビに転じてしまったので、今回からSteve La Spinaに代わる。今でも中堅べーシストとて活躍しているが、この彼女のグループへの参加が本格デビューの当時は新人であった。

このアルバムはタイトル通り彼女が選んだスタンダード曲集だが、彼女が女性オスカーピターソンともいわれたことあったことを意識してかピーターソンのTricotismも加え、最後は自作のMelancholy Moodで終わる。

彼女の別れた夫君ジミーマクパートランドが病に倒れ最後の闘病を続けていた時、このマリアン・マクパートランドは再び籍を戻し最後を看取ったという。人生道筋は色々あるが、現役を終えた最後は愛する人に見守られてあの世に旅立ちたいものだ。一人で生きてこなかった証として。

1. I Hear a Rhapsody       Jack Baker / George Fragos / Dick Gasparre 3:55
2. Meditation (Meditação)    N. Gimbel / A. Carlos Jobim / N. Mendonça 3:54
3. In Your Own Sweet Way     Dave Brubeck 4:08
4. A Sleepin' Bee        Harold Arlen / Truman Capote 5:57
5. I'm Old Fashioned       Jerome Kern / Johnny Mercer 3:21
6. When the Sun Goes Down    Leroy Carr 3:38
7. Tricotism           Oscar Pettiford 4:47
8. Melancholy Mood        Marian McPartland 3:18

Marian McPartland (p)
Steve La Spina (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Ed Trabanco
Recorded at Soundmixers, New York, N.Y. June 1982
Originally released on Concord CJ-202
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偶然生まれた名盤と、必然的に生まれる名盤・・・・・

2013-11-03 | CONCORD
Rosemary Clooney Sings the Music of Cole Porter

11月3日はレコードの日だそうだ。レコードが無くなりCDの普及に務めてきたレコード協会が作ったそうだが、今や時代はネット配信。レコードの日はいつまで続くのやら。
記念日という訳でもないが、今回はアナログディスク。

ジャズの醍醐味はインプロビゼーション。何もアドリブに限っただけでなく、メンバーの組み合わせ、その場の雰囲気までも含めた即興性が魅力だ。多くの名盤といわれるものは、そのSomethingを持ち合わせたものであろう。

ジャズのアルバムを買う時に期待するのはそんなものだ。ジャケットのデザインを含めて「きっとこんな音が聞こえてくるだろう」「この2人の組み合わせは?」「お初だけど一体どんな音が聞こえてくるか?」というワクワク感を感じさせるのがジャズのアルバム探しだ。
最近はライブに行くことが多いが、これも全く同じ。いつも聴きなれたバンドでも今日は何を聴かせてくれるのか、いつもと違うメンバーはどんなプレーをするのか、楽しみはたくさんある。

初期のコンコルドのアルバムはコンセプトが明確。そしてレギュラーメンバーも固定してくると、聞こえてくるサウンドは大方予想がつく。
新しいアルバムではそれに何が加わるのか?が興味の半分。そして半分は期待通りのサウンドが聞こえてくる安心感になる。
その結果は何も目新しさはなくとも、安定感に満ち溢れた名盤というものにつながる。

ロースマリー・クルーニーのコンコルドのアルバムはこれが7枚目。
それぞれ特徴があるが、エリントンビリーホリデイへのトリビュート物があったり、ソングブック物があったり。新旧曲の歌い較べがあったり、全体は同じコンセプトでもアルバムごとに微妙な拘りがあった。

しかし、よくあるスタンダード物の有名作曲家のSong Bookとしては前作のIra Gershwin一枚だけ。いつかは出るのではという期待があったが、ついにこのアルバムで実現した。
という意味では、このアルバムコール・ポーターの名曲集がSong Bookシリーズの本格スタートとなったアルバムともいえる。

バックはお馴染みのメンバーに加えて、フルートのDavid Laddが参加している。クルーニーのアルバムにはその後も参加しているので、相性が良かったのかしれない。
クルーニーの歌いぶりはいつも通り、というより益々貫禄がついてきた。美貌を誇ったクルーニーであったが、体格も貫禄がついて来たのはこの頃かもしれない。大歌手といわれる歌手は。エラにしても、サラもマクレーも皆揃って晩年は「貫禄十分」になる。
クルーニーもこれで大御所の仲間入りという訳でもないとは思うが。

クルーニーの歌い方は、フレーズを崩すでもなく、スキャットを使うでもなく、王道を行く。これをジャズボーカルというのか否かという議論はさておき、スタンダードを歌う見本のようだ。バックもまたアンサンブルワークとオブリガードの妙は、これぞ歌伴のお手本といってもいいだろう。

取り上げた曲を見ると、ポーターの初期の名曲、”Love for Sale”, ”Night And Day”,”Begin the begin”が見当たらない。とはいってもお馴染みの曲が並ぶが、選曲にも何か拘りを感じるアルバムだ。



1. In the Still of the Night 
2. My Heart Belongs to Daddy   
3. I Get a Kick Out of You
4. Get Out of Town
5. I Concentrate on You
6. Just One of Those Things
7. I've Got You Under My Skin
8. It's De-Lovely
9, You're the Top
10. Anything Goes

Rosemary Clooney (vol)
Warren Vache (cor,flh)
Scott Hamilton (ts)
David Ladd (fl)
Nat Piere(p)
Cal Tjader (vib)
Cal Collins (g)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Produced By Carl Jefferson
Engineer : Phil Edwards

Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, January 1982
Originally released on Concord CJ-185 (所有盤は東芝の国内盤)

Rosemary Clooney Sings the Music of Cole Porter
クリエーター情報なし
Concord Records
コメント (2)
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各地で毎週のようにジャズのコンサートが開かれているが・・・

2013-10-01 | CONCORD
Concord Jazz All Stars at the North Sea Jazz Festival, Vol. 1


10月になっていよいよ秋の音楽シーズン。
各地のジャズフェスティバルも夏はリゾート地での開催が多いが、秋になると街のジャズコンサートが毎週のように開かれる。
先日は埼玉で、2日間にわたってアマチュアのビッグバンドが勢ぞろいしたライブがあった。これから学園祭も多くなるので、プロだけでなくアマテュアバンドや学生バンドの演奏もあちらこちらで気軽に聴ける。灯台元暮らし、自分の住んでいる街でも今週末に小さなフェスティバルが開かれるようだ。今まで行ったことはなかったが、ちょっと覗いてみよう。
ライブならではの、ハプニングがあるかも?
一つ一つのコンサートにワンアンドオンリーのドラマは付きものだ。

Concordレーベル誕生の源ともいえる、Concord Jazz Festivalは1969年1月26日に第一回が開かれた。何回かの開催を経て、1972年にはConcordレーベルがスタートする。初期のアルバムは、このジャズフェスティバルのライブが多かった。
この年ノーマングランツのBABLOレーベルもスタートする。まさにこの頃からメインストリームジャズが復興してきたころだ。モードから前衛、そしてフュージョンへと進化していたジャズが、原点回帰をしたことでベテラン勢の多くも再登場してきた。

Concord jazz Festivalも1975年には新しくできたパビリオンに場所を移し年々盛況になっていった。その様子はアルバムでも紹介されている。
10年近く経って80年を過ぎると、Concordレーベルも広く認知されることになり、アメリカ国内だけでなく、日本やヨーロッパにもConcordで活躍するオールスターメンバーがツアーを行った。

1981年の目玉は、おなじみのスコットハミルトンにアルバムでも一緒に競演したバディーテイト、そして新たに参加したアルコーンが加わった3テナーの競演だ。
このセットは、日本にも来日してライブアルバムが残されている。
ツアーはヨーロッパから始まったが、残念ながらバディーテイトはこれには参加せず、代わりにいつものメンバー、ウォーレンバッシェが加わった。

ヨーロッパツアーは、ノースシージャズフェスティバル。このイベントも1975年からスタートしたが、最初からヨーロッパの前衛から本場アメリカのメインストリームまで幅広いプログラムで大成功の内にスタートしたようだ。

演奏は、3テナーではなくバッシェが加わったグループなので、いつものこなれたオールスターズによる演奏。バラードメドレーからアップテンポの展開は手慣れたもの。安心して聴けるといえばそれまでだが、ライブだからというハプニングを期待するのは贅沢な望みか?
よく見る(聴く)とウォーレンバッシェをフューチャーしたBuddy Bolden’s Bluesは、数週間前に亡くなったピ-ウィーウォーレンに捧げた演奏とのこと。確かに、情感のこもった演奏だ。確か続編もあったはず、何か発見があるかも。近々聴き返してみよう。

1. Just You, Just Me
2. America The Beautiful
3. Alone Together
4. Buddy Bolden’s Blues
5. It’s The Talk of The Town
6. Everything I Love
7. 9:20 Special

Al Cohn (ts)
Cal Colins (g)
Scott Hamilton (ts)
Dave McKenna (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Produced By Carl Jefferson
Recorded live at The North Sea Jazz Festival, The Hague, Holland, July 1981

Originally Released on Concord CJ-182


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奇しくも直後に亡くなった「故人」への餞になってしまったが・・・・

2013-03-30 | CONCORD
The Dave Mckenna Trio Plays The Music of Harry Warren

ホテルのラウンジでよくピアノの演奏が行われている。いわゆるカクテルピアノというものだ。ソロの時も多いが、ギターやベースを入れても煩くなくBGMとして心地よい響きを提供してくれる。ポピュラーな曲が多いが、古いスタンダードも多い。

ジャズのピアニストには、このような雰囲気が得意な人がいる。Concordでおなじみのデイブマッケンナもその一人だと思う。得意の左手の魔術はベースなしでも、実にスインギーにテンポを刻む。事実、この頃マッケンナはツアーのない時は、ボストンのCopley Plaza Hotelを根城にして週6日出演していた。経営が代わってプログラムを変えたら客足が途絶えたとか。それだけマッケンナを聴きにきていた地元のファンが多かったということだろう。

そのマッケンナが作曲家Harry Warrenの作品集を取り上げたのがこのアルバム。
作曲家の作品集というのはよくある企画だ。ピアノではピーターソンの作曲家シリーズが有名だが、演奏家にとってはその作曲家への何らかの想いがあるものだ。
このアルバムは、Warrenが亡くなる一ヵ月前に作られたもの。最初から企画があったのか、それともWarrenの近況を聞いて日頃ホテルで演奏している曲からWarrenに想いをこめて作られたのかは定かではないが、結果的に発売されるときには追悼盤ということになった。

このアルバムでは、ベースとドラムを入れた通常のトリオ編成。マッケンナの洒落た雰囲気はいつものとおりだが、ラウンジでの演奏よりはきっと熱の入った演奏だと思う。ベースが入っても、マッケンナの左手は健在、最後のLulu’s Back in Townでのドライブ感は流石である。

普段あまり、作曲家の経歴などを見ることはないが、之を機に少し調べてみると、これらの曲が生まれたころのWarrenの映像もあった。



この前、紹介したBreezeが歌っていたお気に入りJeeper’s CreepersもこのWarrenの作品だった。この頃のスタンダードは思わず口ずさみたくなるような曲が多い。



演奏家の場合、亡くなるとラストレコーディングを最後に後の演奏は聴くことができない。よく若くしてこの世を去ったミュージシャンを思い浮かべ、もし今の時代生きていたらどんな演奏をしただろうか?と思うことは多い。
ところが作曲家の場合は、亡くなった後もスタンダードとなり演奏し続けられる。もちろん、その時代の解釈は加えられても、名曲というのは永遠だ。作曲家冥利に尽きるとはこのことかもしれない。

1. Nagasaki
2. 42nd Street
3. Medley
4. This Heart of Mine
5. Carnival
6. My Heart Tells Me (Should I Believe My Heart?)
7. I Only Have Eyes For You
8. The Gold Digger’s Song (We’re In The Money)
9. Lulu’s Back in Town


Dave Mckenna (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Composed By Harry Warren died September 22,1981

Produced by Carl Jefferson
Recorded by Ron Davis
Recorded at Russian Hill, San Francisco, August 1981

Originally Released on Concord CJ-174
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戦後の本場アメリカへのジャズ修行の第一号はTOSHIKO・・・・・

2012-07-01 | MY FAVORITE ALBUM
Many Sides of Toshiko / Toshiko Akiyoshi

宮嶋みぎわが作曲の勉強のためにアメリカに渡るそうだが、最近の若いプレーヤーはアメリカで学び、そして武者修行を経験してくるのが当たり前になっているようだ。音楽の世界もすっかり国際化され、腕前も本場のミュージシャンに負けない者が多く育っているのは嬉しいものだ。

ジャズのアメリカ留学はナベサダが有名だが、戦後の第一号は何と言っても秋吉敏子だろう。満州から引き上げ、クラシックピアノから見よう見まねでジャズの世界に入り、バークレーに留学のためアメリカに渡ったのは1956年1月だった。53年にJATPで来日したオスカーピーターソンに見出されて、ノーマングランツの元でレコーディングの機会も得てからはトントン拍子の出世だった。

ボストンでジョージウェインと付き合いがあったおかげで、57年のニューポートにも出演し、その年にはニューヨークデビューも果たしていた。地元ボストンやニューヨークのライブハウスだけでなく、シカゴのロンドンハウスなどへも出演していたようだ。
ロンドンハウスといえば、ピーターソンのライブアルバムで有名なところだが、ここはライブハウスとは言っても本来はステーキハウス。ちょっと高級なクラブであったらしい。したがって、演奏する曲もオリジナルやバップの曲というより、スタンダードな曲も求められたそうだ。

敏子といえば、バドパウエルの「そっくりさん」からがスタート。アメリカへ渡って直ぐも男勝りのパウエルスタイルの演奏が売りであった。しかし、仕事の幅が広がると曲だけでなく、演奏スタイルもだんだん洗練されてきた。
57年の秋、丁度ペッパーアダムスがニューヨークに帰還して再び東海岸で活動を始めたのと同じ時期。その頃の演奏が収められているのがこのアルバムだ。

ドラムは、晩年はすっかりコンコルドレーベルで有名になったジェイハナ。ボストン出身で、この頃はレコーディングだけでなく、ライブでも敏子と一緒に演奏することも多かったようだ。ベースも若手のジーンチェリコ。

タイトルのように発展途上の秋吉敏子のピアノプレーがスオリジナル中心にスタンダード、そしてグルービーなバグスグルーブ(最後までおなじみのメロディは出てこないが)までたっぷり楽しめる。トシズファンタジーはオリジナルな組曲だが、当時から作曲だけでなくオーケストラ用のアレンジも始めていたようだ。という意味では、その後の彼女の活躍のベースとなるようなアルバムだ。

1. The Man I Love    George Gershwin / Ira Gershwin  5:29
2. Minor Moods (Midnight Lament)  Ahmad Kharab Salim  4:18
3. After You've Gone  Henry Creamer / Turner Layton  3:27
4. We'll Be Together  Toshiko Akiyoshi  4:31
5. Studio J      Toshiko Akiyoshi  3:17
6. Tosh's Fantasy   Toshiko Akiyoshi  9:05
   Down a Mountain
   Phrygian Waterfall
   Running Stream
7. Bags' Groove    Milt Jackson    6:51
8. Imagination    Toshiko Akiyoshi   3:35

Toshiko Akiyoshi (p)
Eugene Cherico (b)
Jake Hanna (ds)

Recorded on October 4, 1957 in NYC

メニー・サイズ・オブ・トシコ
Toshiko Akiyoshi
ポリドール
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