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憂生’s/白蛇 セカンドハウス

チサトの恋 ・・・14

2015年09月27日 | チサトの恋

奴が、難民キャンプに旅発ってから、5日がすぎていた。

2週間で、思う写真が撮れるものだろうか?

って、思う。

たった、10日ほどの滞在で、難民キャンプのなにがわかるというのだろう?

ただの異邦人でしかない一個のカメラマンが、表面上の出来事をとらえるだけにすぎなくなるだろう。

だいたい、目的というか、ポリシーというか、テーマというか。

そんな目線をもたないってのは、棚からぼた餅がおちてきたら、そこで、ぼた餅を食いたい自分か確かめてみようなんていうのに、等しい。

その根性が気に食わない。

ふと・・・。あたしの思考がとまる。

仮想でしかないことを考えるのは嫌いだけど、あたしだったら、

どういう目線をもつだろうと思ったんだ。

それは、幼稚園の園長の言葉もあったと思う。

仕事を生活にしていこうとする中、なにかしらのポリシーをもっている。

ビストロのシェフだってそうだ。

とにかく、金を儲けりゃ良い、事をこなしていけば良いってだけじゃない。

そう、カメラに映しこむカメラマンの視線というポリシー。

慎吾は、それを見つけられなくなっている。

じゃあ、あたしは?

慎吾と同じ立場になった時、どういうポリシーを映しこむだろう?

そんな、命ぎりぎりの被写体と向かい合うことなど、考えようともしなかったあたしに、

答えは、でてくるわけがない。

やはり、仮想問題。

想定外の状況をどうするかなんて、考えたって答えなんかでるわけがない。

だいたい、とっさの時、いざとなった時、自分がどうするか、どう考えるなんか、誰にも、わかるわけがない。

こうしたい、ああしたいとおもっていたって、いざとなったら、ああもできない、こうもできない自分を知らされるだけになるかもしれないし、

逆に思わぬ自分を知らされるかもしれない。

グラスの底溜まりのバルモアをくいっと、あおると、あたしは、仮定答弁をつつきまわすのは、やめた。

だけど、次の日、仮定答弁でなく、現実問題として考えなきゃいけなくなる事態がはじまるなんて、これっぽっちも、予想だにしていなかった。



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