たまの休みも部屋の掃除と洗濯と模様替えで、おわってしまい、
夏向けにかえた、淡い緑のカーテンが、いかにも、涼しげではある。
奴の靴下をどうするか、捨てるか洗うか、随分迷ったあげく、勇気をふりしぼり、洗っておいたものを、どこに片つけるか、迷っている。
まさか、あたしの箪笥になぞ、しまうわけにはいかない。
結局、なんだかんだいって、奴の面倒をみてるってことになるけど、
奴の科白同様、どうすりゃいいか、考えつかない悩みがついてくるのが、一番、面倒だ。
夕食にパスタをゆであげながら、ふと、気がつく。
だいたい、奴の靴下ひとつを洗うのに、せいぜい、迷うような、あたしが、奴と一緒にくらせるわけがない。
そんな人間によもや、プロポーズだとしたって、答えは歴然としてる。
そうそう。そうなんだから・・・・。
と、一人、うなずいているのに、ふいに、部屋が広く感じられる。
奴がいたら、せまっくるしくて、くさくて、きちゃなくて、うるさくて、あたしのこと、おちょくってばかりで・・・・。
でも、奴がでていってしまうと、パスタをおいたテーブルのむこうに、奴の残像がうかぶ。
存在感が消え去るまで、1週間近くかかってしまうのは、奴の強烈な個性のせいと・・・。
一人暮らしが長すぎた・・かな?
そろそろ、潮時なのかな?
いつまでも、独身ってわけにはいかなくて・・。
見合い・・・でも、しようか?
奴とも、しっかり、線引きしなきゃいけない時期になってるんだ。
奴だって、ぼつぼつ、嫁さん・・みつけなきゃいけない・・って、時期なんだろう。
だから、編集長が、男と女という視覚で物をいいだすんだ。
つまり、妙に親しい間柄をいつまでも続けていちゃいけない、って、ことだよな。
けじめ、つけて・・。
それぞれの人生を歩んでいかなきゃいけないわけで・・。
この先・・奴は・・・・。
どこの誰かもわからない男が影絵で脳裏にうかぶ。
誰かとともに暮らしはじめたあたしを気遣い・・・。
そして、奴は来なくなる・・。
ふと、沸いた想像なのに、なにか、急にひどく、寂しくなってしまったのは、
いつまでも、優しい関係のままの二人じゃいけないんだってことを認めたせいかもしれない。
いやがおうでも、奴は「男」であり
あたしは「女」なんだ。
それを、どこかで、度外視していた。
それは、きっと、決別しかないこの先を少しでも見えないところにおいやって、
姉さん気分をあじわっていたかっったせいだ。
そのすれすれの均衡を壊そうとしてるのが、奴なのかもしれない。
決別という形でなく、度外視を外したうえで、この先も、曖昧で穏やかな優しい関係が続くように・・・。
奴の中で、それが、価値だということなのだろうか?
?
疑問符だけになってしまったあたしは、やっぱり、奴は靴下と同様だと、結論することにした。
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