WITH白蛇

憂生’s/白蛇 セカンドハウス

チサトの恋 ・・・1-1

2015年09月27日 | チサトの恋
編集長の見解と私の意見が食い違い、説得と説明と疑問と反論。その繰り返しで、へとへとになって帰ってきた。実にささいな・・トリミングの差・・これで・・ああ、まあ・・もういいや。とにかく、私が一歩もゆずらず、印刷所にGOしたわけだ・・し・・あれ?私の部屋・・ブラインドが開いてる?と、いうことは・・・・・。また、あいつだ。大急ぎで部屋の鍵・・・。いや、待てよ・・・。ドアノブをまわしてみる。案の定・・・。ド . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・1-2

2015年09月27日 | チサトの恋
「やめろよ・・あとでな・・ん・・」なに?それ?少々じゃおきないのは、わかってるけど、今の科白、女?おもしろいからたしかめてみた。靴下でそっと奴の顔をなでまわす・・。「俺・・・疲れてるんだ・・って」はい?さらに首筋・・あたりに靴下をすべらす・・。「判ったよ・・ほら・・来いよ・・」って、まだ、寝ぼけ半分で手をのばしてくる。あんたの恋人もあんたに負けずおとらずくさいんだね。そうつぶやいて、靴下を鼻のうえ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・2

2015年09月27日 | チサトの恋
「うわ!!」驚きたいのはこっちだ。「うわ・・そんな恰好してても、色気ひとつねえ!!驚嘆すべき事実だ」ご挨拶だねえ・・・。「あんた・・頼むから、シャワーくらいあびてよ」「うん・・今から行く・・」はあ・・・って大きなため息をもらしてやった。とたん、「どうしたん?なんかあった?」お見事。このずうずうしさととふてぶてしさ・・。「別に」「あ、そう?」って、そのまま、シャワーあびにいってしまった。心配する気さ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・3

2015年09月27日 | チサトの恋
「チサト・・」リビングに行ったあいつが呼ぶ。「なによ」「こっち来て、のまないか?」は?あんた、まだ・・・・。キチンのワインラックをながめる。大丈夫、減ってない。と、いうことは、また、取材旅行のお土産のウィスキーかなんか?リビングにいくと、奴はリュックから、ウィスキー瓶をひっぱりだしてきていた。お?バルモア?グラスをとりにいくと、早速、ストレートでいただく。旨い物に弱いのはいいことかもしれない。こい . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・4

2015年09月27日 | チサトの恋
「俺、何、撮ってるんだろうって、思いはじめてな」え・・・・・・。意味合いがつかめず、私は黙るしかなかった。「どういうんだろうな。こう、写真撮ってるてのはさ、一種、絵画みたいなもんなんだよな。その手法によってさ、アブストラクトなものにするとしたってさ、結局は絵画なんだよな」こいつ・・何がいいたいんだろう。黙って聞くしかない。だから、黙る。「取る側のテーマってのが、移しこまれてる写真ってさ、絵画の領域 . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・5

2015年09月27日 | チサトの恋
あたしの科白に奴が返した言葉にあたしは、あきれた。「俺、アフリカにいってこようと思う・・」「なに?難民キャンプにでもいこうって?」図星だったんだろう。口の中でごにょごにょ、なにかいってた。「で、人道的テーマで撮ってみるって?」「う・・うん」切羽詰った天才はわらをも掴む思いなんだろう。それも、こいつにとっては、いい経験になるかもしれない。「で、それで、写真がすべてを語るものを撮れるわけ?」止めてやめ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・6

2015年09月27日 | チサトの恋
朝、目覚めると、即、幼稚園に出向。奴はいつ、出かけるのだろうかとふと思う。有給休暇が2週間ちかくあるだろう。休日をはさむと、20日ちかい休みが取れる。海外への取材旅行はもっぱらあいつが担当してるから、あたしは、めったに海外なぞでかけられない。場合によっちゃあ、あいつは、そのまま、次の拠点にむかうときがあるから、2~3ヶ月かえってこないなんてこともある。しかし、休みもらえるんだろ・・?待てよ。あいつ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・7

2015年09月27日 | チサトの恋
「3歳児と4、5歳児の違いが、はっきり、わかるのが、「遊び」の時間ですね。3歳児はお友達と一緒に遊ばない事が多いのです。自分の好きなことをしているだけで、たとえば、砂場でトンネルを作る子、お花を見てる子というふうにそれぞれ勝手にあそんで、お友達はそこに誰かいるだけ。ところが、4歳児になると、砂山で誰かがトンネルを作り始めると、手伝いはじめたり、別のグループは、砂山をこわさないようにむこうであそびだ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・8

2015年09月27日 | チサトの恋
エアーズロックのおおきなポスターを広げてる。傍によって、編集長のうしろからのポスターを眺めた。「夕日・・のエアーズロック・・にみえるだろう?」うん?「ところが、これは、朝日なんだな。にび色をしてるから、夕日に錯覚する・・」え?あたしはまじまじとそのポスターを覗き込む。「こんなシャッターチャンスはまずない。慎吾のすごいところはここだな。奴の前では、奇跡がおきる」あるいは、カメラマンの資質というものは . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・9

2015年09月27日 | チサトの恋
奥の席に案内されて、ランチコースを注文する。最初にやってきたのが、スープだったが、皿の中に淡いオレンジと薄い紫の2色のスープ。これは、これは。まず、目で楽しませる。なんのスープだろうと好奇心をひく。綺麗に右と左に分かれている。最新の注意で注ぎ込んだものだと想うとそれだけで嬉しくなる。食べる前から、どちらからたべようか、真ん中の場所をすくえば、二種類が口の中でブレンドされるだろう。眺めているだけで楽 . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・10

2015年09月27日 | チサトの恋
3時からの撮影をおえて、デスクにかえってきたら、もう6時近かった。アップルにとりこんだものを編集長に見せる。スモーク室のビーフを取り込んだものが一番良いという。こりゃあ、特集くんでもいいなとか、ぶつぶつ、いっていたから、別の記事がカットされるかもしれない。とにかく、今日はこれでいい。に、して、帰宅。アパートにたどり着くと、なぜか、奴がまた、居るきがしてくる。神出鬼没を絵に描いたような奴だから、昨日 . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・11

2015年09月27日 | チサトの恋
とうぶん、かかるだろうと思っていたポスターはシャッターチャンスに恵まれ肖像権のことさえ、許可がおりれば、あとは、パンフレット写真だけ。これは、年間行事も折りこむつもりだから、あわてなくてもよい。編集長もその写真をみながら、ニヤリと笑った。「さすが、チサトだな」はい?「やっぱ、女性ならではの視線だな」はぁ・・・「慎吾がお前を薦めた訳がここか・・・」ふむ?「慎吾ってのは・・人を見る目も確からしいな」あ . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・12

2015年09月27日 | チサトの恋
この癖はよくわかってる。言いたくないことを言う覚悟をきめる時の癖だ。「お前、自分の事になると、鈍すぎるんだよ。慎吾はお前に惚れてるんだよ」「・・・・・・・・」私の口からまったく、言葉がでてこない。奴が私に惚れてる?まあ、言うに事欠いて、よくも・・・・・ん?編集長、やけに真顔すぎた・・・。「それな、慎吾のプロポーズだったんだよ。お前、見事に肩すかしをくらわせて、鼻もひっかけない、眼中にもない、って、 . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・13

2015年09月27日 | チサトの恋
昼食のあと、照明器具の写真をとりにいった。そして、昼間の相談ごとにはいっさいふれないままの編集長からのGOサインで、家に帰ってきたけれど、編集長が、あえて、もう、なにもいわなかったぶんだけ、あたしには、あの科白が、胸に大きくつっかえてしまっていた。ー慎吾を男として、みていないーずばり、その通りだと思う。慎吾を男として、みていたら、きっと、あの慎吾の科白をもっと、意味深なものにうけとめられていたのか . . . 本文を読む

チサトの恋 ・・・14

2015年09月27日 | チサトの恋
奴が、難民キャンプに旅発ってから、5日がすぎていた。2週間で、思う写真が撮れるものだろうか?って、思う。たった、10日ほどの滞在で、難民キャンプのなにがわかるというのだろう?ただの異邦人でしかない一個のカメラマンが、表面上の出来事をとらえるだけにすぎなくなるだろう。だいたい、目的というか、ポリシーというか、テーマというか。そんな目線をもたないってのは、棚からぼた餅がおちてきたら、そこで、ぼた餅を食 . . . 本文を読む