WITH白蛇

憂生’s/白蛇 セカンドハウス

チサトの恋 ・・・7

2015年09月27日 | チサトの恋

「3歳児と4、5歳児の違いが、はっきり、わかるのが、「遊び」の時間ですね。3歳児はお友達と一緒に遊ばない事が多いのです。自分の好きなことをしているだけで、たとえば、砂場でトンネルを作る子、お花を見てる子というふうにそれぞれ勝手にあそんで、お友達はそこに誰かいるだけ。ところが、4歳児になると、砂山で誰かがトンネルを作り始めると、手伝いはじめたり、別のグループは、砂山をこわさないようにむこうであそびだしたり・・・。
ようは、社会性と協調性が確立するのです」
なんだか、なにがいいたいのか、わからなくなりながら、話を聞く。
「マウス実験がありますよね。そのマウスの一方は親マウスとそのまま一緒にして、もう一方はうまれてすぐに親から離して育てます。成人したあとにストレスを掛ける実験をします。親と一緒だったマウスはすぐに元気になるのですが、親と離したマウスは酷い場合ショックで死ぬことさえあるのです・・」
つまり・・なにがいいたい?
「ストレス、それが、幼稚園だとおもうわけです」
そ・・それをいっちゃあ・・・。
「もちろん、3歳まで親のところにいたわけですから、親と離れていたわけではありません。けれど、この親と離れるタイミングが、3歳では、むつかしいのではないかと思うのです。3歳児はお友達が居るだけでいいのです。別々のことをしていても、「居る」だけです。それは、4歳くらいまでの子供が親にたいしてもそうだといっても過言ではないのです。いつも、親が「居る」ことを確認して「安心感」をえている。それが、マウスの実験のように大人になってストレスを感じた時、それに耐える力が薄くなる。安心して育ってないのです。
その3歳児がお友達に対し、「擬似安心感」を得ようとしているわけで、
ここからすでに、ストレスと不安を作っているんじゃないかと思うわけです。
4歳児になったら、協調性がでてくる。これは、裏返したら、親を確認しなくてもよい自立心がめばえたからこそです。この時期からならば、縦の関係も作る事ができるわけです。
3歳児を預かる制度を撤収したところで、他の幼稚園が危惧をもたず3歳保育を行うのですから、なんらかの打開策はないかと参観日・親子行事をふやしたり、連絡ノートなど密にしたり・・」
なるほど・・・。
「簡単じゃないことです。参観日などは、子供が一緒に帰ると泣き出したり。せっかく先生になじんできたところに親が頻繁に顔をだせば、子供だって、親のそばにいたいわけですから・・」

つまり、この幼稚園の方針は今のことよりも、子供の将来、先の先を考えた保育方針だということなんだ。
は~~~。
その方針がみえるポスター・・。
ロゴがほしいな・・。
あ・・。
「お分かりいただけたでしょうか?」
頭の中にはひとつの案がうかんでた。

「しばらく、いろいろ、撮らせていただいてよろしいですか?」
尋ねた言葉に園長先生の顔がほころんだ。
「やっぱり、貴女におねがいしてよかった。
とおりいっぺんの写真をとっていくばかりの儲け主義のカメラマンにうんざりしていました。貴女のように方針にみあう写真をとろうとそう申し出てくださった方ははじめてです」
手を差しのべられ、大きな握手になって、それから、園内をいろいろ案内してもらって、行事などメモして、とりあえずその日はデスクに戻った。

そして、
「編集長」
昨日のごりおしがあるから、あたしもちょっと、低姿勢口調。
「あの?幼稚園の園長先生がーやっぱり、貴女にお願いしてよかったーと、いってたんですけど・・」
半分も聞かないうちに編集長はご機嫌な顔になる。
「そりゃ、いいことじゃないか。うん、がんばってくれ」
じゃなくて・・。
「やっぱりって・・なんか、誰かがあたしを薦めてくれたっていうことじゃないのかなって」
「ああ・・。それ、慎吾だ」
奴?

奴がなんで?

「幼稚園のほうが、おまえをなざししてきたんだよ。たずねたら、慎吾から紹介されたっていうから・・慎吾・・に・・あれ?」

黙り込んだあたしに編集長までが、黙り込む。
「なんだよ?」
やっと、出てきた言葉はあたしのだんまりへの質問・・だろうな。
「いえ、なんで、や・・慎吾があたしを薦めたのかとおもって・・」
「う~~ん。まあ、慎吾のほうに頼んだのが本当かもしれないな。
だが、受けられる状況じゃなくて、おまえにふった・・」
「受けられる状況じゃない?」
「ああ、なんでもおふくろさんが入院で、おやじさんもよくない。
面倒見れるものが無くて・・急遽・・実家にかえるとかでな。
とりあえず、2週間の有給休暇。
あとは、様子次第で・・ってことになって・・」
あきれた・・・。アフリカ行きの方便にまちがいない。
「それ、いつなんですか?」
「あん?」
「慎吾がいってきたの・・」
「ああ・・今朝だ。チサトには慎吾の分もやってもらわなきゃいけない事がでてくると思うから、話しておかなきゃと思って・・・」
いたところの出鼻をくじかれて、あとさきになったが、まあ、カバーを頼むというのが、編集中の言い分。

「まあ、いいですけど」
と、いうこの科白が編集長の癇にさわったらしい。
こってり、しぼりあげられて、
やっと、解放された。

しかし、奴め・・。
思ったが最後、実行力が伴うという部分は
ますます尊敬に値するが、
アフリカくんだりまで、でかけて、はたして
納得する写真がとれるんだろうか・・・。

まてよ・・?
幼稚園の写真はもっと前からのはなしだ・・。
と、いうことは、すでにアフリカ行きをきめて、
編集長に話しをつけていた?
チサトのほうが、適任ですとかあ?

つ~ことは、あいつ相当前から
悩んでいた?

と、いうことは、奴のいう価値というのは、
幼稚園の写真をとれるあたしという意味合いだったのか?

すでに「まなざし」を認めてるってことだったってことだったのか?

だから、あたしに相談だった?

と、考えると、

え~~~と、
あたし、何をいったんだっけ・・・。

奴にいったことを思い出してみると、
奴がこっちを認めていたことを踏みにじる言い方をしていたかもしれないとも思える。

だが、いずれにせよ、自分が実感して、自分がどうするかでしか、
答えは形にならない。

今頃は飛行機か?

ドゴール空港から、のりかえて・・・。

アフリカ・・・。

あいつ、ワクチンとか、接種していったのかな?
オーストラリアから帰国して、そのまま、あたしのところにころがりこんだとしか、思えない・・。

前言撤回。

猪突猛進の馬鹿だ。

いや、オーストラリアでワクチンとかうった?

ん?

あたしはなにを奴の心配してるんだ?

ふと感じた疑問の答えを探ることをやめて編集長をみた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿