思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

「熱気球による太平洋横断」はやはり延期  

2007-01-26 10:30:35 | 他人の旅話
25日の朝日新聞埼玉版朝刊の29面中央の囲みに「熱気球で太平洋横断 今季は断念」という記事が掲載されていたが、それを受けてこの計画のいち関係者の僕としては、ああやはりそうか、という残念無念な思いと、まあこれが妥当な判断なのかな、という安堵感が交錯した。

この記事中にある、辞退した「同乗予定のパートナー」というのはもちろん昨年の投稿でも数回触れた、植村直己冒険賞の第8回受賞者であるチャリンコ野郎の安東浩正さんなのだが、風貌に似合わず実は理系肌の安東さんがその観点からこの計画に難色を示した理由は(本ブログでもブックマークしている)地平線会議のウェブサイト内にある地平線通信の項でわかるので、この新聞記事以上の詳細を知りたい方はこちらを参照してほしい。

僕としては昨年11月からこの計画の進行の一部を手伝っていて、そのなかで安東さんのこの計画への懸念や媒体に発表する(また、本ブログで触れる)のはちょっとためらわれるような内部事情(装備面、資金面などなど)は度々、安東さんから直接聴いている。ちなみに資金面で有名なところでは、雑誌『BE-PAL』などでお馴染みのシェルパ斉藤氏がその一部を援助していたりもする。
僕がこれまでにこの熱気球「スターライト号」に実際に数回触れた実感としても、離陸する前にやるべきことはまだまだあるのではないか? 準備の時間がやや少ないのではないか? という疑念が素人目に見てもあり、当時からどちらかというとやはり期待よりは不安のほうが大きかった。23日の記者会見で発表した、機長である神田道夫さんの来年への延期という判断は妥当だと思う。「スターライト号」を膨らませた様子を実際に見たことがある方ならよくわかるはずだが、さすがに通常の熱気球の約20倍の大きさのあれをいくら熱気球の熟達者の神田さんであってもひとりで扱うのは困難であるよ。

安東さんが今後この計画に再び戻るかどうかはまだわからないが(人命にかかわる繊細な問題なので、昨夜会ったときも今後どうこうという深いことはさすがに聴けなかった)、まあいち手伝い人の僕としては搭乗者の変更や機体の補修・改修の有無にかかわらず、この計画に一度は首を突っ込んだ者として、再び人手が必要なときは今後も引き続きできるだけ協力するつもりではいる。さて、どうなるかね。

あ、そうそう、本題からは話は逸れるが、昨夜に地平線会議の報告会で安東さんに会ったときに、拙著『沖縄人力紀行』(彩図社刊)を直接買っていただけたりした。日本を代表するホンモノの冒険野郎に弱小本である拙著を気にかけてもらえるなんて、正月の年賀状に続いて再び恐縮であった。
ただし、安東さんが後々に刊行するらしい(予定は未定の)数年前の冬季シベリア横断話の本は必ず買ってよね(しかも複数冊!)、という交換条件が付いたけど(まあ安東さんの本であれば何も言われなくてもほぼ間違いなく買うつもりだけど)。とにかく、拙著をお買い上げいただき、感謝感謝。この勢いをもらい、拙著の販促(書店営業や手売り)により力を入れていこう、と再びやる気になった。

ちなみに、拙著は僕が直接手売りする場合は割引価格で対応するので、もし興味のある方は最近僕がよく出没する地平線会議の報告会やミニコミ誌『野宿野郎』の野宿に来ていただけると幸いである。まあそれ以前に、これらの催しや熱気球の作業が面白いから、それが目的でもかまいません。



太平洋横断計画の実行が延期された今となってはもう出してもいいかな、という2006年12月16日の「スターライト号」の浮上テストのときの1枚。
11月に球皮の内側にアルミの蒸着シートを全面に貼って補強したのだが、12月2日と16日の2回のテストを経てシートのあちこちが破れてしまい、目立つところでは上の写真のように数mにわたってビリビリ破れているところもあった(写真中央の銀色がすべてつながっているべきで、黒い部分が見えているのはまずい)。11月にこの作業を担当した僕としては呆然とした。工業用ミシンを使用してシートをきっちり縫い合わせても、自然の力は人間の知恵によるそんな対策をも簡単に凌ぐくらいに強大なのだな、ということが改めてわかる。
一応、テストを終えて球皮をたたむときに破れた部分の補修はしたけど、この状態で離陸して高度1万m近くまで上昇するのはちょっと……、とその後もこの様子が気になっていた。
神田さんが今回の延期を決めた最大の理由はやはり安東さんがこの計画から降りたことなのだろうが、通常よりもとても大きな熱気球にはこのような小さな問題点がいくつもあり、山積するこれらを解消する時間が少なかったこともその原因になっていると思う。

よって、今回の延期決定には僕としては正直ホッとした。来年の再起に向けて準備する時間を作ることができたのだから、これを充分に活かして今からでも良い準備をして来年に臨みたいもんだなあ。


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