史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

多摩

2010年07月06日 | 東京都
(聖蹟記念公園)
 京王聖蹟桜ヶ丘は、京王線のターミナル駅で、駅周辺に繁華街が広がる。駅から少し離れるが、開園面積三十万平方メートルを誇る都立桜ヶ丘公園の中に旧多摩聖蹟記念館がある。昭和五年(1930)、明治天皇が生前この地を四回にわたって訪れたことを記念して開かれたものである。施設内には明治天皇の騎馬像や田中光顕が収集した幕末維新期に活躍した人物の掛軸や書状などが展示されている。入場無料。


旧多摩聖蹟記念館

 旧多摩聖蹟記念館の向かい側に五賢堂がある。五賢とは、維新に活躍した岩倉具視、木戸孝允、大久保利通、西郷隆盛、三条実美をいい、建物内には胸像が置かれている。


五賢堂

 五賢堂の前に建てられた田中光顕の歌碑である。

 結髪勤王事中年侍聖君
 老來濟世志不肯伍仙群
 奉祝 青山田中先生耆徳


田中光顕歌碑


明治天皇御製碑

 田中光顕による明治天皇と昭憲皇太后の歌碑である。

明治天皇
 春ふかき山の林にきこゆなり
 けふをまちけむ鶯の聲

昭憲皇太后
 兎とる網にも雪のかかる日に
 ぬれしみけしを思ひこそやれ

 春もまたさむきみやまの鶯は
 みゆきまちてや鳴きはしめけむ


明治天皇御野立碑

 駐車場の脇に明治天皇野立碑が建てられている。明治天皇は、明治十年代に兎狩りや鮎漁を楽しむためにこの地に四回足を運んでおり、このときのことを記念したものである。

(対鷗台公園)


対鷗台公園

 明治天皇御野立碑がある駐車場から坂を下りて、鎌倉街道を越えた辺りに対鷗台公園がある。この公園には、かつて三条実美の別荘である対鷗荘が移設されていた。対鷗荘は、明治六年(1873)に三条実美が隅田川のほとりに建てた別荘で、同年秋の征韓論政争のさなか、人事不省に陥った三条を明治天皇が見舞ったことでも知られる。三条の死後、しばらくは未亡人が住んでいたが、その後貴重な財産を保存する声が高まり、昭和四年(1929)この地に移築された。対鷗荘は観光スポットとして、或いは飲食店として多くの客を集めたが、残念ながら昭和六十三年(1988)に取り壊された。


明治天皇行幸所對鷗荘

 公園内には複数の石碑が建てられている。「御駒櫻碑」と「向ノ岡野立所」という二つの碑は、ともに田中光顕の筆。この辺り一帯は「向ノ岡」と呼ばれていた。また、江戸末期には多数の桜が植えられ、大正から昭和にかけてこの地で草競馬が催されることもあった。両石碑とも、明治天皇がたびたびこの地に行幸したことを記念したものである。


御駒櫻碑


向ノ岡御野立所碑

コメント
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