哲学の科学

science of philosophy

資本主義の夢(7)

2023-04-29 | yy89資本主義の夢


諸国はそれぞれ明日の希望に賭ける。個人、家族の幸福。国民の幸福のために政府は雇用、起業、教育、福祉、治安を推進しますが、その基礎はもともと個人の希望からくる。
個人の希望は、将来を楽観できる社会の上に作られます。いつかマイホームを購入できる、自動車を所有できる、自分の会社が大きくなっていく、という夢を信じられる。成長期の日本がそうでした。
今の時代、科学技術立国あるいは観光立国を目指そう、ということになっています。それは実現可能にみえるから将来は楽観できると思うことにしよう、ということです。
それは間違いではありませんが、楽観がいきわたって全国に活気が満ちあふれるには、もうすこし大きな目標が必要でしょう。
例えば日本は世界に認められるような幸福な平和国家を目指す。ほかの国の人がうらやむような良い国になろう、とか高邁な理想が必要そうです。
世界に認められるためには、松陰が夢見たように、世界を先導する勢いを持たなくてはならない。その目標に向かってインフラ、技術、教育の再生産システムを構築する。政府も会社も投資家も、その能力を持ち寄って、その方向へ急ぐ。それが今日の資本主義が描き得る明日の夢です。
政府や大会社ばかりでなく個人も起業家も勤勉に努力すれば希望がかなうシステムを作り上げることが資本主義の夢でしょう。








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資本主義の夢(6)

2023-04-22 | yy89資本主義の夢


江戸時代がそうであったと現代人が夢想するような泰平安楽のユートピア、その平和と安逸を資本主義社会に求めることは間違いでしょう。
悲観が蔓延すると資本主義は危うい。だれもが自信をもって明日を夢見ていないと、資本主義の社会はだめになります。
明日になれば収入も財産も増える、しかもそのあと増え続ける、という予想が確かでなければなりません。それでこそ機関車は改良され、鉄道は敷かれ、駅前に店舗が立ち並びます。資材を作る工場は敷地を買い増し、工員を募集するでしょう。
明日の夢があり、投資がなされ、技術が普及し、教育が敷衍し資本主義システムは回転する。逆にその回転が阻害されると夢はしぼむ。社会は停滞します。悲観が蔓延する。人口も増えない。個々の人生はだめになっていきます。
現代世界でいまや信頼できるものは、結局、資本主義しかないようです。社会主義も独裁政権も、そのほかの統治システムも結局は幸せをもたらさない。長くなさそうにみえます。
そして資本主義を支えるものは明日への夢しかない。そうであれば現代人が救われる道は、なけなしのリソースを明日に投入するしかありません。









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資本主義の夢(5)

2023-04-15 | yy89資本主義の夢


政府、マスコミはバブルを警戒し防止策を張り巡らしますが、バブルを防げば防ぐほど、社会は停滞し緩慢な破滅に近づくとすれば、どうすればよいのか?
富裕層や会社に余裕資金があり、国の将来を楽観視する世論傾向があるときバブルは発生します。余裕がなく悲観的世相であるときは発生しない。
故にバブルを予防し規制するには、余裕資金を退蔵させ、将来への悲観を喧伝すればよいでしょう。しかしそれをするほど時間遅れで社会が停滞します。生産性の低下、潜在失業、モラル後退、犯罪増加が起こります。
悲観的世相は、ますます臆病になる国民から規制を要望する傾向が強くなるので、マスコミも規制、抑制を支持する発言を多く取り上げる。正のフィードバックが長期間働いて、なかなか活気が出ない、となります。パンデミックと人流規制のようなものでしょう。資本主義の成長にはよくない悪循環となります。

将来を楽観視できるためには、過去の歴史に見られるように経済状況が年々向上することです。これもまた正のフィードバックになっていて、景気上昇と楽観が好循環となります。
政府は、デフレを嫌う場合、この好循環エンジンを駆動するために大量のお金を社会につぎ込む、金融緩和、財政出動が政府・中央銀行によって行われますが、これだけでバブルが発生することはありません。
個人や会社の中に増えた余裕資金があり、楽観的世界が長期に続くと本気で感じる人が増えると、突然バブルが起きます。
余裕資金の一部が株式や土地の投機に回る前にデフレ圧力が相殺すればバランスが取れますが、なかなか安定したコントロールはむずかしい。 
コントロールがうまくいけばよいとも限りません。予想が付きにくい将来の不安が常時停滞するため悲観が消えません。経済の成長が永続すると信じられる楽観的世界観が、ある程度、あるいは相当程度、資本主義の継続には必要なのではないでしょうか?
逆にいえば、資本主義の継続のためには、バブルとその崩壊を永久に繰り返すしかない、資本主義社会に継続的安定はない、と言わざるを得ません。








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資本主義の夢(4)

2023-04-08 | yy89資本主義の夢


資本主義の勃興期、貿易で蓄積された資本は投機に向かいバブル崩壊を繰り返します。オランダでのチューリップバブル(1637年)、イギリスでの南海会社バブル(1720年)、フランスでのミシシッピ会社バブル(1720年)などなど歴史上有名です。
そのようなとき資本主義社会での中産階級はだれもが資産増大を求め上流に這い上がろうとして殺到し、逆に破産し下層階級転落への恐怖にとらわれて気違いになる、という人心の真理を語るエピソードになっています。科学の天才、サー・アイザック・ニュートンは南海会社の株を買いすぐ売って大儲けしましたが、さらに買い増ししたところ大損したそうです。
好不況、バブルとその崩壊は、自由市場の欠点だということになっていますが、むしろバブルの夢を追って全員が夢中で馳せ参じるところに資本主義の本質があります。
バブル崩壊の経験は、当事者には惨憺たる記憶を残し長く語り継がれますが、世紀を超える資本主義の歴史にとっては成長の糧になっています。南海会社バブルによって産業革命期の株式増資システムやベンチャーキャピタルが発展したし、ITバブルによってその後のDXが本格化したということができます。 
愚かな群集心理として歴史に記述される大小のバブルは、むしろ実は、資本主義の神髄でありそれなくしては衰退しかないのではないでしょうか?







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資本主義の夢(3)

2023-04-01 | yy89資本主義の夢


資本主義は利潤を追って投資を拡大する、といわれています。だがなぜ利潤を追うのか?資本主義以外の経済システムはこれほど性急に利潤を追うことはないようです。資本主義諸国の国民だけが特に貪欲なのでしょうか?
そうでないとすればむしろ資本を拡大するために利潤を追っていることにしているのではないか?地球全体に自己増殖する生物系のようなエコロジーが資本主義の本質ではないでしょうか?
近世、日本が鎖国している間に、大型帆船と天測技術を使って大洋を横断する地球的貿易を発明したスペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランスなど西洋諸国は莫大な利益を蓄積しました。重商主義諸国は海外へ商圏を拡大するために株式会社を作り帝国主義活動を広げていきました。
エコロジーの比喩でいえば、オランダ東インド会社の設立は、DNA制御機構を持つ真核生物の出現に匹敵する地球史上の大事件であった、といえます。
会社というシステムは存続するために拡大しなければならない、といわれます。成長なくして分配なし、といいます。しかしむしろ分配の機能を装備した会社だけが成長の機能を獲得できるのではないか?分配の機能があるからこの会社というシステムが維持されるのではないか、ともいえます。

もし夢を追って戦うために国家がつくられているとすれば、安定を志向する国家は、松陰がいうように、衰退する運命にある。歴史の終わりが来たといわれる現代にまだ存在している国々は、このままの体制を続けようとする限り、早晩消滅する運命にあるということになるのかもしれません。
資本主義は、もともと現状の境界の外に新しい商機が見つかり、その夢に向かって多数の投資が殺到するという現象としてあらわれるものでした。境界が閉じてしまえば停滞、不況、ゼロサムゲーム、さらには戦争に向かうしかない。







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