哲学の科学

science of philosophy

宇宙人はいるか(10)

2017-06-25 | yy57宇宙人はいるか


米国の地球外知性探査プロジェクトではなかなか予算が獲得できず電波望遠鏡を長時間使用できないので、実際の探査は進んでいません。いままでの小規模の探査では、地球外知性が関係している徴候のある信号は検知されていません。今後、相当の予算を使って大規模探査を行ったとしても検知できない場合のほうが多そうだ、という意見はもっともです。できるだけ大きな望遠鏡を専有して、できるだけ長時間にわたる検知を実施すれば発見できる確率は高まります。
しかし望遠鏡使用コスト百万円を費やせば仮に百万分の一の検知確率であるとして、その予算を千倍にして十億円で千分の一の検知確率にまで向上させることに、どれほどの意義があるのか?と予算審議会で聞かれてどう答えますか?
仮にどこかの地球外知性が出す微弱な電波が確実に今も地球に届いている、そして地球上のすべての望遠鏡が百年間、天文学活動を中止して全空をスキャンして地球外知性探査をすれば見つかるはずだ、との仮定を受け入れたとしても、このような議論に決着はつきません。つまり地球外の人類の痕跡を私たちがつかむことは実際上、限りなくむずかしい、と言わざるを得ません。

それではUFOが来るのを待てばよいではないか、という意見があるでしょう。しかしUFOつまり異星人の宇宙船もまた実際上、来ることはないでしょう。その理由を次にのべます。
異星人が宇宙船に乗って地球にやってくる可能性を考えることは、私たち地球人が火星やその他の太陽系天体、あるいは太陽系外の天体を訪問する可能性を考えることと同じです。
地球人は、そもそも、地球以外の天体を訪問できるのか?実績はひとつだけあります。









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宇宙人はいるか(9)

2017-06-17 | yy57宇宙人はいるか


進化現象というものが自然現象として神秘でも何でもない、いつでもどこでも起こり得るものであるとすれば、条件さえそろえば、宇宙の果てでも今現在でもこの地球でかつて起こったように起こり得る、と考えてよいでしょう。
生物が発生するような地球的天体では、進化は必然的に起こる。筆者は七十歳の現在までガンに罹ったことはありませんが、長生きすればそのうち必ずガンに罹る。同じことです。自然界にはいろいろな条件があり得ますから、いろいろな生物体が出現する。地球の歴史のような環境条件の変遷があれば、その歴史は繰り返す。似たような生物が出現するはずです。
空があれば、トンボが飛びトビウオが飛びプテラノドンが飛びツバメが飛び、ライト兄弟一号が飛びスペースシャトルが飛ぶ。翼の形も頭や足の位置もよく似ています。
空を飛ぶ鳥類よりも人類のほうが結局は繁殖力が強い。カラスは都市住民によって、結局は駆逐されていきます。人類は翼を持たないが、世界を共有する能力を持っています(拙稿4章「世界という錯覚を共有する動物」)。宇宙の果てにある地球的天体の上で、世界という錯覚を共有する動物が進化の末に出現する可能性は否定することができないでしょう。
宇宙のかなたで発生した動物の中からも、世界を仲間と共有し言語を共有し(拙稿18章「私はなぜ言葉が分かるのか」)、世代を超えて科学技術を蓄積する(拙稿14章「それでも科学は存在するのか」)ことができる身体機構を備える種族が進化してくる可能性はあります。人類がその一例です。このような進化は、この地球上で数十億年の間に一回だけ起こっています。
一回だけですが、ここでは間違いなく起こりました。他の地球的天体の上ではそれは起こらない、という論理は無理でしょう。

人類の現代の科学技術の水準をその宇宙のかなたの知的動物種が獲得したとすれば、彼らは大量の通信電波をその天体上で発信するので、その存在は遠方からも検知できます。しかし私たちがそれを実際に検知できるかというと、それは次のような理由で困難です。









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宇宙人はいるか(8)

2017-06-10 | yy57宇宙人はいるか


さて、そういうことで想像の産物でしかない地球外左右対称多細胞動物。太陽系以外に属するいくつかの地球的天体の上で発生した生物系の中に、身体が大きく精巧な機構を備えるこのような動物にまで進化したものが出現したと仮定して、さてこのような地球外動物はさらに進化して人類のような存在になってくるのでしょうか?

地球上で現在の生物相を観察すると、ミミズやゴキブリなど大昔からほとんど進化していない生物がけっこう繁栄しています。みなうまく生きているようです。それらの生物観察から推測すると、進化というものは生物の形がどんどん変化していくものなのかどうか?適当なところでうまくいった遺伝子系を固定して、進化をやめて先祖と同じことを繰り返していればよいだろう、という生活の仕方が生物のあり方ではないのでしょうか?
そうは思えるものの、気候変動とか地形変動とか環境大変化があれば、進化現象が顕著になることも理論としては理解できます。恐竜の絶滅やガラパゴスの珍種進化などが実現しうることは、それ以前の生物相しか知らない状況では想像できないでしょう。生物の進化現象は、超長期の経過時間を要しかつ天変地異のような環境大変動を伴うので、人間の感性や常識に全く反する超長期にわたる自然現象です。実験室での研究やコンピュータの理論計算による具体的現象の推測は、ほとんど不可能です。まして安楽椅子に座って考えている筆者などに予測できる現象ではありません。
進化現象というものが存在すると思うことからして直感に反するので、そんなものはあり得ないだろうと思いたくなります。米国に多い反進化論者たちの心底もそこから来るのでしょう。
しかしDNAは意外と不安定である、ということも科学的事実です。DNAの複製機構は驚異的に精密ですが、その故かなり頻繁に故障する。ガンもそれですね。それを修復するメカニズムが生物体には何層にも重なって機能していますが、それでも故障が起こる。その場合、故障した個体を死なせる、あるいは生殖不能に放置する、という集団的保全機構が働きます。
それらの保全機構が完璧に近く働くにもかかわらず、わずかずつDNAの書き間違いは集積する。そうして、ダーウィンによると、種々の環境変化の機会に変異遺伝子が増殖してきます(一八五九年 チャールズ・ダーウィン「生存競争における適者保存あるいは自然淘汰の作用による種の起源について」Charles Darwin, M.A.  On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life,1859)。








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宇宙人はいるか(7)

2017-06-04 | yy57宇宙人はいるか


このダーウィン原理は、地球以外の地球的天体上の生物系でも働くと思われます。あるひとつの地球的天体の上で、たまたま多細胞動物のような生物が発生したと仮定しましょう。それらはダーウィンが述べたように進化する、と考えるほうが自然でしょう。
しかし相当な時間がかかるらしい。地球の例では、海綿のような単純な多細胞動物が進化して左右対称動物になるまでに数億年かかっています。目や口がしっかりできていておいしそうな食べ物に食いつく、という身体の仕組みを作ることはかなりむずかしいようです。
単細胞を食べる多細胞動物から始まって、食物連鎖がだんだんと上に積み上げられてくる。身体が大きいものが小さいものを食べます。大きな動物をしっかり食べられれば、さらに大きな身体を維持できるので、そのような機能を持つ動物は安定的に生存するでしょう。
数千万個の地球的天体のうちのいくつかの表面では、恐ろしいほどの時間がかかるが、いずれ節足動物や脊椎動物のように身体が大きくて巧妙な機能を持ち敏捷に運動できる左右対称動物が進化してくる、と言えそうです。
現在、地球以外の天体では生物が発見されておらず、また、生物進化現象は超長時間の過程なので実験で確かめることもできません。コンピュータシミュレーションを構成するにはまた、生物系は複雑すぎて無理です。現代科学の道具立てでは取り組みができない問題といえます。したがって、拙稿がここに述べる偶然と必然の推測も架空の理論でしかありません。
太陽系内の地球以外の天体に脊椎動物のような高度な動物系が存在していないことは、過去の探査の結果、ほぼ間違いないでしょう。また太陽系以外の天体に仮に脊椎動物のような高等な生物系があるとしても、地球周辺からの天体観測装置では発見は不可能と思われます。
ただ、理論的には、高等な動物が現代人のように宇宙へ飛び出す技術を開発した場合、その技術活動の結果が宇宙のかなたに届く可能性はあります。実際、人類のように技術文明が発達した宇宙人種族が宇宙のかなたで活躍しているかもしれない、という仮説のもとにその宇宙人の活動の結果宇宙空間に漏れ出すはずの通信電波やその他の技術生産物の痕跡を検出しようという観測プロジェクト(地球外知性探査という)が、少数の一部の科学者によって提唱されています。しかしこれらの観測プロジェクトに政府予算がついたことはほとんどありません。つまり多数派の科学者はその観測は無駄、夢想であるとしているわけです。
このような事実からして、SF映画に出てくるような節足動物あるいは脊椎動物のような左右対称形のエイリアンの存在の有無は、残念ながら、今世紀中の科学の発展を予測するとしても、現実には実証不可能というしかありません。







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