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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「新盆」

2017-08-17 23:24:31 | 民俗学

 

 

 盆前の会社での会話である。「シンボンに行くと素麺を出してもらって食べてくる」と伊那市内の同僚の口から発せられた。すると北信からやってきている同僚が「シンボンて何?」とまったく意味がわからないよう。シンボンはそのまま「新盆」である。亡くなった人が最初に迎える盆のことを言う。「初盆」とあてる地域も多く、「ハツボン」と読むのが一般的で西日本に多いという。いっぽう「新盆」とあてる地域は東日本型とも言えるが、読み方が異なるから冒頭のように県内でも北信の人たちには「シンボン」が意味不明なのである。とはいえ、あてられた漢字をふつうに読めば「シンボン」なのだろうが。

 ということで、県内の「新盆」の読み方を分布図にしてみた。データは『長野県史民俗編』の東南中北の4巻の「仕事と行事」編を用いた。伊那谷はほぼ「シンボン」であるが、上伊那北部地域では「アラボン」という読み方をする地域もある。そして、それ以外の地域は木曽谷で伊那谷同様に「シンボン」と呼ぶ例があるものの、ほとんど「アラボン」なのである。北信の人たちにとっては新盆=「アラボン」だから、「シンボン」という単語は新語なのである。「アラボン」という呼び方は関東に多いというから、東西の接点である県内をみたとき、伊那谷以外が「アラボン」と呼ぶのも当然なのかもしれない。ちなみに関東では「ニイボン」と呼ぶ例も多いようだから、県内に「ニイボン」が存在しても不思議ではない。

 

参考 ほかの民俗分布図へ


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