Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

韓国の恋人記念日

2007-02-06 08:29:27 | 民俗学
 倉石美都さんの「十四日は君がいるからカップル記念日―韓国カップル記念日事情」(『長野県民俗の会通信』197―長野県民俗の会)は大変興味深い内容だ。韓国では11,14,22,24,50,100という数字に記念日があてられているという。そして、そんな日に、大きなぬいぐるみや花束を抱えた男性が、ソウルの人ごみのなかで見かけられるようだ。記念日の恋人へのプレゼントを手にしているわけだ。1/14ダイアリーデー、2/14バレンタインデー、3/14ホワイトデー、4/14ブラックデー、5/14ローズデー、6/14キスデー、7/14シルバーデー、8/14グリーンデー、9/14ミュージックフォトデー、10/14ワインデー、11/14ムービーデー、12/14ハグ・マネーデーと、14日に対しては、1年中記念日がある。そしてこれ以外にもつき合い始めて22日をトゥトゥーデー、50日を50日記念日、100日を100日記念日などと続く。そしてそういう日を意識していないと破局しかねないらしい。頻繁に贈り物をする以上は、財力なくしては続かない。結局財力なくしては愛情は示せない、ということになるのだろうか。

 なぜこうも記念日が多いのか、というところで、倉石さんは徴兵制度に触れている。二十歳になった男性は2年間の徴兵の義務がある。この徴兵期間に別れるカップルも少なくないようだ。軍隊に行っている間に、他の男性に乗り換えてしまうこともあるようで、いかに恋人がいることが重要かということなのだろう。2年間の間、強い結びつきを継続するためには、それ以前のより一層の愛情が必要となる。そうした環境が記念日の重要さを示すことになる。

 とまあ聞いていると、別れの期間があるからこそ、愛情は深くなるというようにも聞こえる。そしてそれを示すしぐさとして、表現は大きく、そして何度も繰り返されるということになるわけで、日本の若者ような愛情表現の浅さはないということになってしまうが、逆にいえば、そこまでして毎月しなくては愛情が確認できないのか、ということにもなる。徴兵とはいえ、戦場に行くわけではないから、我が国における先の大戦の出兵とはわけが違う。たかが2年の徴兵でそれほどまで深い意図があるのかどうか、韓国のことであるから本音のことはわからない。ただ、徴兵というものがあることにより、己を振り返る機会になっていることは確かだろう。それもまだ若いうちの2年は、短いようで長いのかもしれない。

 今の日本の若い人たちが、どうなのか無知であるが、韓国のこの記念日好きは、きっと日本人にも好まれるかもしれない。たまたま記念日がないだけのことで、例のごとく、商売好きの人たちが画策すれば、きっと韓国特有のものではなく、日本でも受け入れられるような気がするがどうだろう。

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